- 45話 -
Arbachas
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目次
~開闢~
同じ時代の技術は 同じ時代の技術で対抗できるんだ。ハハ……。
何が……。光の使途……。けど……。この身体は……。もうダメだ。
…………。
……。
………………。
…………。
……。
真っ暗で何も見えず……。
耳からの情報も無い……。
…………。
……。
何もない だけ を……。辛うじて 認識できているようで……。
たまに……。何かを知覚できるようになっていた。
…………。
……。
少しずつ 知覚できる何かは 視覚や聴覚にも 具体性を持たせる。
…………。
……。
朧げな感覚が強いまま……。あらゆる 何かの……。垂れ流された情報を認識していく。
辛うじて……。見て……。聞くだけの……。闇の中で……。
…………。
……。
初老程度 だろうか……。見知らぬ誰かが……。何かしらの 音声付きの映像記録を残しているようだ……。
誰かは……。酷く……。疲弊し……。知っている誰かに似ているような気がした。
…………。
ノイズは多分に混じり……。微妙に服装なども 異なる時もある……。時系列が滅茶苦茶に編集された動画を見ているような……。
それでも……。なんとなくは……。情報の組み立てが成されているような気がする。
…………。
……。
………………。
…………。
……。
私の名は ヘキソット……。
愚かな弟子が……。心無い人間と繋がり……。完全にこれらを掌握する前に……。この記録を残した。
Arcana、Barrage、Chase、System……。
( アルカナ バラージ チェイス システム )
Arbachas に ついての記録を この日……。の中に……。……残す。
( アルバチャス )
…………。
……。
アルバチャスとは……。
…………。
神秘の最奥との境界を 決壊させて……。英知と未来を 追い求める……。そんな意味合いの 組み合わせだ。
遥か未来の言葉での 命名になる。
…………。
ある時代で 広く使われている 言語から 名称を組み合わせに使わせてもらった。
…………。
古語を 何かしらの命名や発表に 使うのは一般的だが……。
我々の時代よりも遥か 未来の……。まだ知らない言語での命名は 生命の樹を使える 私の発明にうってつけだろう。
これが有れば……。きっと問題はない。
英知の書庫へと アクセス出来る極秘回路 生命の樹は……。アルバチャスによって護られる。
…………。
……。
英知の書庫……。これにも未来の言葉を当てるならば……。アカシックレコードと 呼ぶらしい。
アカシックレコードは 因果律に強く干渉する 神秘の粒子と 密接な関りを持つ。
…………。
英知の元素たる……。神秘の粒子は……。未来を変えてしまえるのだ……。
正式には 意図した未来を引き寄せてしまう 自然界でも僅かに紛れる 未知の粒子だ。
自然界においては……。生命の発する微細な意思に呼応し……。少しずつ世界の有り様に影響を及ぼしていく。
…………。
場合によっては気候に干渉する事も……。強力な兵器としても利用できるだろう。
本来ならば……。生命が知ってはいけないものだ。
だが、私はコレを 見つけてしまった。
…………。
ならば……。護らねば。
あらゆる 意思から護り……。元来の世界の有り様を 維持しなくてはならない。
…………。
……。
私が望む責務は……。人の寿命では真っ当できない。
死を退けるにしても……。意図した用途での 達成は 限りなく不可能に近い。
仮に……。出来たとしても 最も強い神秘の 1つ……。命の定着は 長くは持たないだろう。
神秘の粒子にも……。理論構築できない領域が有るのだ。
生命としての命の延長……。人心への干渉……。死した者の蘇生……。他にも幾つか考えられるが……。
これらは、それぞれが 意図して実行するには 不可能と言っても良い 領域の最たる 1つに含まれる。
ならば……。
…………。
命を持たない 有機的な組み合わせを……。時空を超えても決壊の中で活動できるシステムを……。
それこそが……。この 3体……。翼を持った アルバチャス……。
re:cord-next_zero_point- ……。
( リ・コード・ネクスト・ゼロ・ポイント )
…………。
エヌ・ゼルプト とでも 呼ぶとしよう……。
常に次なる原点に最も近しい者達だ。
…………。
re:cord 達にも 神秘の光の力の 一部を 扱えるようにしておく。因果律に干渉し……。自己修復と自己強化を繰り返すのだ。
応用の範疇だが……。これによって……。必要に応じて 敵対する相手の戦力を 無条件で上回れるだろう。
英知の書庫……。アカシックレコードに触れる 生命の樹を護る為に。
世界の全てに繋がる 道を……。パスを護る為に……。
…………。
……。
全てを見届け……。育て導く厳正な 黒翼の re:cord……。
慈愛と慈悲で これを支える柔軟な 白翼の re:cord……。
全てを統べる無限の根幹 緑翼の re:cord……。
…………。
緑の re:cordには、アカシックレコードに最も強く干渉可能な 秘石を仕込み……。4つの欠片を持たせる。
これを用いれば……。緑の re:cordは 一定の役割を持たせた 独立した分身を 18体作り出す事も出来るだろう。
必要に応じて……。数での不足を補える筈だ。
…………。
無限の可能性と その広い応用を 緑の re:cordに……。
3体の re:cordには 託すに値する 生命を 探させるのだ。
…………。
……。
神秘の光に相応しい 誰かを 果てしない未来の中から 見つけられるように……。私は祈ろう。
未来を生きる者達よ……。光あれ……。
…………。
……。
私の名前は……。ヘキソット……。
私達 アエルの民が栄える この時代で……。未来を覗き見る……。生命の樹を作り出し……。
これを護る為の 仕掛けを残す者だ。
…………。
今から 過去の記録に追加での記録を残す。
過去の記録には 私の当時の失念で 欠落があるのだ。
…………。
簡潔に言えば……。
re:cordの根幹回路には 強く干渉する 鍵がある。
…………。
後光の鍵……。外見は只の木の枝のような……。掌に乗る大きさのものだが……。未来の言葉では……。
mehalo と 名づけた。保護装置として作ったものだ。
(ミィヘイロー)
鍵は その役割の都合上……。強く re:cordへと 干渉できる。
…………。
だが、鍵は今 私の手元には無い。
つい先ほどの事だ……。私の弟子から 私を逃がそうとした せいで……。娘は 後光の鍵と共に……。
神秘の光の実験炉に 吸い込まれてしまった。
…………。
実験炉とは 虚空へと作り出す大きな開口なのだが……。娘は……。トーラはそこへ 飲み込まれてしまったのだ。
トーラは mehaloが何たるかを知っているからこそ……。私を逃がす為に アレを使おうとしたのだろう。
…………。
私は 娘を探し出したい……。
mehaloが 動作すれば……。願いを糧に因果律に影響を与える 強い干渉能力が増幅されて……。固有の電磁波を発する筈だ。
これを 追う事が出来れば……。トーラの近くまで……。行けるかもしれない。
…………。
……。
……大いなる 力の処置は 現段階で最も優先されるだろう。
今日は この世界の全ての文明を 滅ぼすには良い日だ。
不特定多数の心無い誰かが 因果律への干渉の可能性を 知ってしまった。
…………。
……人間が思いつくような 願望の全てを 叶えるものではないのだが、それを広く周知させるには時間が足りない。
間違った形の意図が 今も広まっている。……広め続けている者がいる。
一度 決壊した思想の伝播は……。簡単に追いかけるのも難しい。
私が 地道に これを行う前に……。今の文明は 壊れていくだろう。
…………。
私の弟子は……。悪魔のような心を隠し持っていた……。
心無い思想を持つだけではない……。危険だ。
…………。
私達の世界と文明は 私のせいで 滅ぶ。全ての re:cordに 私はコレを命じる !
全てを破壊するのだ……。エヌ・ゼルプト達よ……。
欲にまみれた私達の文明の全てを……。零に返すんだ……。
…………。
……。
娘を……。トーラを探してくれ……。誰か……。
…………。
……。
………………。
…………。
……。
何が……。光の使途だ……。けど……。この身体は……。もうダメだ。
それでも……。は……。生き続けるんぞ……。
この……。を 新しい……。にできれば……。……れる。
…………。
……。
………………。
…………。
……。
この景色は……。なんだ…… ?
アレは……。天瀬さん…… ?違う……。似てるけど……。名前は ヘキソット……。別の人なのか…… ?
なんとなくだけど……。十一さん の方が似ているかも…… ?
他にも 似てるのは……。少しだけ……。真尋ちゃん にも…… ?
けど……。何が……。あって……。ここは どこだ ?俺は……。いったい……。
…………。
……。
ノイズが 酷くなり……。認識できる景色も……。音も 変わっていく。
濁流の中の 傍観者は……。複数の何かが通り過ぎていくのを 只 見続け……。聞き続けた。
…………。
知覚する側の 意図も疑問も そのままに……。別の景色と音や声が 流れ込む。
今度は……。先程よりも近しいものなのか……。知覚の明度が かなり明るくなっていく……。
…………。
……。
ある国の……。道沿いの植木が印象的な 往来の 途上で……。
1人の 青年と……。1人の女性が……。不意に何かに手を伸ばし……。ぶつかった。
…………。
「 おっと……。すまない……。
怪我は無いかい ?……いや 日本語じゃ ダメか……。えっと……。sorry .. ah .. 」
…………。
咄嗟に 産まれの国の言葉と思われる 謝罪が飛び出す……。
…………。
「 私の方こそ ごめんなさい……。
前を見ていなかったみたい……。え…… ?もしかして 貴方も日本人 ? 」
「 まさか……。こんな所で 同郷の人に合えるなんて…… !
僕も そうさ。
なんだか どうかしてたみたいだ。
不思議だよね。そこに落ちてる 枝に 心惹かれて……。ハハハ……。 」
…………。
小さな事故が偶然の会話を広げた。
…………。
「 そんな……。実は 私も そうなの……。
家が 果樹農家でね ?
なんだか 只の枝が懐かしく感じちゃって。ホームシックかしら 私も 変みたい。 」
…………。
2人は……。同郷だったからなのか……。初対面とは思えない調子で 会話を弾ませる。
…………。
「 僕ら……。似た者同士なのかもしれないね……。折角だし 少し話そうよ。
今日この日を 記念して 僕から 朝食を御馳走させてほしい。
僕の名前は 有馬無鹿(アリマ ムロク)。 」
「 ええ。喜んで。
私は 梨田理歩(ナシダ リホ)。よろしくね。 」
「 嗚呼。よろしく。
もしかしたら この枝は 君と僕を 引き寄せたのかも しれないな。
確か ここは……。私有地でも 国際公園でもないよね ?
今日を忘れたくないから……。
この枝は 御守りにしてみようかな。……なんてね ハハハ。 」
…………。
事故の巻き返しを 適度に済ませて……。互いの意識は……。別の方へと向いていく。
…………。
「 ふふふ……。そうだと良いわね。とても良いアイディアだと思う。
ところで こっちには お仕事 ? 」
「 実は 違うんだ。今は仕事を 持っているんだけど……。
最初は アメリカに行こうとしたのに……。その……。乗る便を間違えてね。 」
「 ドジなのね。
でも 後悔は無さそう。素敵な表情をしてる。 」
「 ありがとう。なんとかやってるよ。
君も とても素敵だ。
おっと……。立ち話 したいんじゃないんだった。行こう……。 」
…………。
街路樹が並ぶ いつの日かの道で……。2人は同じ方向へと歩き始める。
…………。
……。
………………。
…………。
……。
あの 2人は……。知ってる……。父さん と……。母さん か……。知ってるけど……。
知ってる 2人よりも……。若いな……。昔の…… ?
でも 御守り が どうして……。さっき見た 鍵と似てる ?
どういう……。事だ…… ?俺は さっきから何を見て……。俺は……。そうか……。
…………。
俺の名前は……。有馬要人(アリマ カナト)……。2人の息子だ。
…………。
あの時……。
The dark ace との戦いで 俺は……。勝てなかったのか……。
( ジ・ダーク・エース )
空護さん……。十一さん……。一志……。大さん……。あの後 どうなったんだ ?
…………。
……。
青年 有馬要人は……。自身の有り様を 思い出すが……。まだ現在の全てを把握しきれないでいた。
あらゆる 認識が入り乱れる 何処かで……。身体も認識できず……。意識だけが……。目覚めているのだ。
周囲の全てが 受動的で……。能動的に影響を及ぼせそうには無かった。
…………。
そんな中で……。更に 何かの気配を 感じ取る。
青年は 早速 これに 意識を向けた。
…………。
この気配は……。何処かで……。知っていたような……。そんな予感を感じさせる。
………………。
…………。
……。
~エヌ・ゼルプトと....~
青年 有馬要人は……。自身の有り様を 思い出し……。
あらゆる 認識が入り乱れる 何処かで……。身体も認識できない中……。目覚めたばかりの意識を 何かの気配へと向けた。
…………。
それは……。もしかすると……。先程の見知らぬ誰かの 記録に混じり込んでいたのか……。
聞き覚えもあり……。喜怒哀楽の全てと 怨嗟が籠ったような……。
強く……。重い……。密度を感じさせる。
…………。
……。
ヘキソットめ……。我が師でありながらも……。流石といったところだが……。
私は…… ?僕は……。俺は生き残った !!
…………。
師が残した物を 退けたんだ……。同じ時代の技術は 同じ時代の技術で対抗できるんだ。ハハ……。
何が……。光の使途……。けど……。この身体は……。もうダメだ。
…………。
それでも 俺ボク私は……。生き続けるぞ……。
この壊れた 素体を 新しい身体にできれば……。生きられる。
壊れた 光の分身の成れの果てに……。因果の光を用いれば 生きられるんだ。
…………。
……死の超越は簡単じゃないだろうが、何を犠牲にしても良い。
…………。
師は……。ヘキソットは最後に気でも引けたのか ?
何が 光の使途……。動きに制限が かけられていたんだ。本来の性能の 1割も活かされていないじゃないか。
こいつらは 兵器として もっと 優秀だ。
…………。
俺は……。ボクは……。生きてどうする ?……私は やってやるさ。
…………。
まずは……。どうでも 良い……。何が 犠牲になってでも生きる。
そうか……。こいつら 光の使途は 自分達では 師が定めた規定を 退けられない……。
良いさ なら……。俺ボク私は 少しずつ それを歪めてやる。
…………。
因果の光を使えば それも出来る……。不可能は可能にする為に あるんだ。
…………。
最も効率的な効果を期待するなら……。強い意思を持つ生き物を利用すればいい……。
…………。
そいつらを 犠牲にして 師が残した物を歪め続ける。
師が残した 護る為の 光の使途として……。紛れ込み……。永遠に世界に在り続ける……。俺ボク私は……。師をも超えるぞ。
果てには何の意味も無い世界を生み出してやろう。俺ボク私の身体をダメにした復讐だ。ハハハ……。
…………。
一切の循環も無い……。宇宙の再生すらも不可能な 意味不明な混沌を……。いつか必ず……。
全ては 無に……。
…………。
見えたぞ……。俺ボク私の悲願は あの世界だ。遥か悠久の未来で……。
…………。
師が気に入っていた あの言語が広まった あの時代だ。その時代の何処かで……。全ては闇に飲まれる。
トーラも……。その時代の何処かに 吐き出されているかもしれない。
…………。
どうでもいい 世界に 永劫の混沌を……。生きて……。俺ボク私が生きられれば……。
…………。
俺ボク私も その世界の言葉を履修してやる……。フフフ……。
…………。
My best chaos……。I like be……。My best chaos……。I like be……。
…………。
My best chaos……。I like be……。My best chaos……。I like be……。
…………。
I like be……。
…………。
どうにでもなってやる !!どうにでもなってやるぞ……。ハハハハハハ !!!!!
…………。
I like be……。
My best chaos……。I like be……。My best chaos……。I like be……。
…………。
My best chaos……。I like be……。My best chaos……。I like be……。
…………。
My best chaos……。
…………。
……。
青年の意識に 何者かの 歪んだ思念が 響く……。
例え……。思念の残滓だとしても その禍々しさは 群を抜いており……。独自の歌も 醜悪な汚さを いっそ清々しく反響させる。
…………。
悪魔の独白と歌が……。青年を蝕もうとした時……。
荒々しい 声が 近づいた。
…………。
「 その雑音に耳を傾けるな……。アレは精神を壊す。
お前は 確か……。愚者の戦士か……。今の今まで よく生き延びたな。
オレは平静を欠いていた。
肝心なところで 助けられず すまなかったな。 」
…………。
青年は……。その存在の記憶の片鱗に触れたからなのか……。多くの戦いの情景を瞬時に察知する。
荒々しい声の主が……。旅の途中で……。多数のエイオスと……。エヌ・ゼルプトと戦い抜いた事……。
戦いは……。意図したものでは無く……。多くの仲間を 友を 愛する人々を失った事……。
…………。
どの情景も耐えがたく……。荒々しい声の主が……。今の形に行きついた 背景に説得力を持たせた。
…………。
後に……。意識を曖昧にされて……。真紅の戦士と呼ばれる 姿へと変じられるが……。
22災害の 狭間で……。人間だった頃の 意識を取り戻し……。全ての エイオスを……。エヌ・ゼルプトを 打ち倒していく。
…………。
限られた時間で……。再び意識を変じられるまで……。人間としての戦いを行っていたのだ。
…………。
四目の皇帝とも切り結び……。数多のエヌ・ゼルプトを 消滅させて……。
…………。
最後の方では……。最愛の人物に擬態していた事も有る 悪魔のエヌ・ゼルプトを見つけ……。切りかかったのである。
…………。
悪魔には 致命傷を与えた筈だったが……。
そこまで来た所で……。人間としての意識は……。再び 変じられそうになり……。最後の決定打を逃してしまう。
…………。
アルベギ族の戦神として 称えられるようになった戦士の意識は霞んでいき……。
その間際……。完全に飲まれる直前に……。最後の悪あがきを 4つのマルクトに隠した。
…………。
愚者のエヌ・ゼルプト……。捕らわれず進む者。エテルチョ……。
正義のエヌ・ゼルプト……。極光の闘士。ブラフチェティ……。
悪魔のエヌ・ゼルプト……。不死なる猛毒。レト……。
月のエヌ・ゼルプト……。落涙の魔王。ザマルク……。
太陽のエヌ・ゼルプト……。焦熱の頂点。オーダイス……。
…………。
荒々しい声の戦士が 生身の身体の時に直接戦い……。よく知る相手の中でも……。
悪魔を覗く 4体に酷似した強さの形を……。神秘の光で形作り……。仕舞い込んだのだ。
…………。
しかし……。殆どが急ごしらえの 荒技である。
もし これを見つけても……。即座に扱えそうなのは……。愚者か太陽の 2種のみで……。
この 2種も 戦いに用立てるには 粗削りで改善点も 少なくない。
…………。
以降……。カシュマトアトルの意識は埋もれ……。その後に 目を覚ましたのも……。思念の中の極一部に留まってしまった。
…………。
青年は、荒々しい声の主に 意識を向ける。
…………。
「 貴方が悪いわけでもない。今……。伝わりました。
光の試練の あらましも……。
アルベギ族の呪い(まじない)を通じて 連想された、タロットの 大アルカナに 真紅の戦士がいない理由も……。
俺の名前は……。有馬要人……。
知っているかもしれませんが たぶん 意識の無い貴方と何度も戦った。 」
…………。
先程まで 取り止めが無かった 青年の意識は……。少しずつ輪郭を帯びる。
…………。
「 オレは カシュマトアトル。
かつての名は……。カシュマト……。
偉大な アルベギ族の族長 マシュマトの息子として……。光の魔物と戦った男だ。
オレは武闘の果てに……。光の魔物についての 全てを知る事を望み……。
緑の翼を持つ魔物と 身を 1つにした。
あわよくば……。光の魔物を オレ自身が 完膚なきまでに 叩きのめせないものかと 思っていたが……。
人の身体を完全に無くしてしまえば……。これも難しい。
情けない話だ。それを知ったのは……。奴と完全に同化した後だった。
お前はどうしたい ?愚者の戦士よ。 」
「 もしも……。まだ あの闇の化身が 今も猛威を振るっているなら……。
俺が……。あの場所に戻れるなら……。戦いたいです。
仲間を信じない訳では無いですが……。闇の化身は……。
時間の経過で どこまでも 強くなれる厄介な 能力を持っている。アルカナの光が 可能な全てを破壊の為だけに 還元しているんだ。
こんな状態でも……。俺も せめて何か……。 」
…………。
深く暗い闇の中で……。上も下も右も左も 感じられない中……。
青年は……。自身の意識を明確にさせていく。
…………。
「 愚者の戦士よ。まず……。ここが何処なのか 理解しているのか ?
簡単ではないぞ ?
ヘキソットが 4つのマルクトに 隠した力を使えば また戦えるだろうが……。
全てが終わる頃には 前と同じでは いられないだろう。
先程までの お前が……。隠された光を 3つ繋ぎ……。無限の光を 生みだせたのは鍵が あったからこそ。
増幅し……。調律を施す……。道繋ぎの鍵があったとしても……。
4つの マルクトに隠された 力の本質は……。人間の身体には 強すぎるのだ。
因果の光の影響は 生命の有り方にも 大きく影響を及ぼす……。オレが 身をもって 知っている事実だ。
オレ以上に 囚われてしまうだろうな。
愚者の戦士よ。お前の心の内は……。オレにもわかるぞ……。
お前にとっては……。ここにいるよりも……。辛い未来を選ぼうとしているのではないか ?
決して 後押しは出来ない。 」
「 俺も 今なら わかる……。たぶん、貴方の精神に触れたからだ。
ここは……。あの闇の化身の 核の中で……。
英雄のマルクトも 何処かに取り込まれている。
そして……。俺が持っていた 全てと一緒に 3つのマルクトの中に隠された 光も 飲み込まれているのか……。
貴方は……。隠された光があったから……。
4体のエヌ・ゼルプトの 強さをイメージして、その中に仕舞い込めたんだ。 」
…………。
青年は……。一呼吸を置いて……。先程 感じ取った 何者かの記録をも思い出した。
恐らく……。最も古くの昔に……。
…………。
「 アルベギ族の戦神……。カシュマトアトル……。俺の答えは決まっている。
簡単では無いし……。後押しはしてもらえなくても……。
出来る限り 俺は歩いて行きたい。それに……。 」
…………。
最も古くの昔に……。
もしかすると……。現在 観測可能な宇宙が 起こるよりも遥か昔の開闢で……。無念の最後を迎え……。
絶望に染まってしまった 誰かが残した 全てが……。世界を壊し続けるなら……。
…………。
心底 望んでいなかった 結末に向かい続けているのなら……。
…………。
「 それに……。このままじゃ悲しすぎる。
今の世界よりもずっと前に存在した誰かが……。
不幸をきっかけに 世界に呪いの願いを残してしまったなんて。
あの人が……。ヘキソットが……。残してしまった 負の願いは 誰かが止めないと……。
それを出来るのは たぶん……。 」
…………。
闇の中で……。青年は 少しずつ 形を変えて……。4つの輝きを 集積させていく。
3つの 0……。無限光よりも 強く……。因果に影響を及ぼす光が煌めきを強めた。
………………。
…………。
……。
~流転~
日樹田地底湖が 存在する 広く奥行きのある洞の最深部で、2人の青年が奮起する。
…………。
相手は……。1体の闇の化身のみ……。
…………。
戦いの激しさからなのか……。洞内の天は一部で崩れ……。遥か遠くの地上の方からは 光が差し込んでいた。
地底湖の真ん中の辺りに 光の柱が差し込み……。
洞内でも 無類の強さを発揮する 闇の化身を 神々しく照らす。
…………。
2人の青年……。丹内空護(タンナイ クウゴ)と……。天瀬十一(アマセ トオイチ)は……。
少しばかり前に起きた 負の出来事から……。どうにか精神を奮い立たせて……。武器を握っているようだ。
…………。
漆黒の鎧の アンチエースムーン……。丹内空護も……。
正義と剛克の ジャスティフォース……。天瀬十一も……。
…………。
臨戦態勢は崩していないが……。呼吸は乱れているようで……。時間の経過に合わせて 動きが鈍くなっている。
…………。
事の発端は……。ある青年に起こった出来事だった。
…………。
青年達の総力を持って……。闇の化身を仕留められるかどうかの……。そんな一瞬。
本体を離れた 悪魔の分身体が……。姿を表し……。一瞬の流れを狂わせてしまったのだ。
…………。
悪魔は……。その直後に……。分身体を自壊させてしまうが……。
この一瞬だけで……。青年と闇の化身との戦いの 結果は大きく変わってしまう。
…………。
青年は……。蒼色の愚者は……。闇の化身が作り出した 引力を持つ闇の虚空に飲み込まれ……。
恐らく……。その力の全てを……。闇の化身の一部として取り込まれてしまったのある。
…………。
青年と 悪魔が 完全に消え去るまでの時間は 数秒 足らず程度で……。
黒馬型戦車で飛翔していた 丹内空護からしても……。どうにかできるような 間合いでも時間でも無かった。
…………。
闇の化身は……。青年 諸共……。地のマルクトを……。神秘的な剣を 取り込んだらしく……。
これまでの戦いでの 消耗した分を 帳消しにしたかのようだった。
…………。
以後……。
…………。
丹内空護と……。天瀬十一は……。起死回生の結末を目指して……。勝算の見込めない今を戦い続けたのだ。
…………。
だが……。仲間を取り込んだ相手に どう立ち向かうか……。助け出す可能性はあるのか……。
一切の 方向性は 完全には定まらず……。防戦気味に 後手の戦いに 流れを変えられてしまう。
…………。
2人の青年が……。渾身の反撃を試みた事もあったが……。
これまで以上に 強力になっている 闇の化身によって……。渾身の反撃以上の 猛襲を叩き込まれ……。
…………。
アンチエースムーンも……。ジャスティフォースも……。
…………。
たった 1体の怪人を相手に……。中空で落下する事もかなわずに……。殴打と斬撃での全方位攻撃を 何度も浴びせられたのだ。
…………。
数分近くは 中空での攻撃に晒され続けたのだろうか……。
2人の青年が……。地上に叩きつけられた末に……。どうにか立ち上がった。
…………。
闇の化身は……。まだまだ勢いを衰えさせず……。それどころか……。やはり……。
時間の経過を重ねる程に 一撃の重さも速さも 向上しているように感じさせる。
…………。
日樹田地底湖の洞内に差し込む 唯一の光の柱が……。闇の化身を 神々しく照らしていた。
…………。
「 我は……。
The dark ace……。
( ジ・ダーク・エース )
世界 唯一の 絶対なる闇……。
大いなる闇は……。底亡き 深淵へと 全てを誘い 全てから意味を奪うだろう。無駄な足掻きをする……。
全てに……。光も 再生も 及ばない 完全なる 不完全を……。
我のみが……。絶対の……。世界を……。
これより先……。闇亡き世界など ありはしない……。破壊が……。輪廻の及ばない 破滅が 永劫 あるのみ……。
止められぬのだ……。
貴様らの マルクトの力も……。我にささげよ。 」
…………。
闇の化身は 地底湖の上方で 羽ばたいては中空で停滞し……。身振り手振りも無く……。無挙動で声を発する。
…………。
「 十一も俺も お前には まだ負けん…… !
人間が お前のような奴に屈するわけが無いだろう……。
どんな困難も……。乗り越えていくんだよ 人間はな。 」
…………。
丹内空護と……。天瀬十一は……。
外見上から伺える 良くはないコンディションとは真逆の……。力強い言葉で反論した。
…………。
「 そうさ……。空護と俺が ここで戦えるのも……。
今まで戦ってこられたのも……。有馬 君が 証明していた事が全てだ。
進み続ければ……。必ず道は消えない……。
闇の化身が……。後光に晒されて いい気になるなよ ?
今までの俺達は……。準備運動さ ! 」
…………。
2人の青年の 言葉を 理解しているのかは定かではないが……。闇の化身が 変わらない調子で応答する。
これに加えて……。先程までの激戦とは 異なる 動きで中空に片手を向けて 暗い光を集め始めた。
…………。
「 我は……。偉大なる唯一 絶対の闇……。
世界を 底亡き 深淵へと返し……。混沌を産み出す者……。
貴様らでは……。我には及ばぬ……。純然たる力を得た我が……。新たな使途を作ろう……。世界に偉大な深淵を呼ぶ為に……。
虚空の中で鬱積した 闇を……。新たな 記録の化身として。
闇の太陽も……。闇の番人も……。闇の花さえも……。上回る強大な 化身を……。
輪廻の及ばない 破滅を作り出す 闇の精鋭を……。
真なる闇から 這い出る 新たな使途を……。ここに……。呼び出そう。 」
…………。
暗い光の集積は……。2人の青年の 少しばかり先の方に撃ち出され……。
少しずつ 人型の何かに 姿を変える。
…………。
人型の何かに姿を変えた 暗い光は……。2人の青年にとっても 既視感が有るようで……。全く見た事のない形で 固定化された。
…………。
「 なんだアレは…… !?
有馬の……。アルバチャスにも……。似ているが……。 」
「 あの色は 真紅の戦士……。まさか……。有馬 君を取り込んで……。作り出したのか……。
新しい Logを…… !! 」
…………。
現出したのは……。
愚者のアルバチャスにも似た外見と……。真紅の戦士をも連想させる 未知の存在だ。
…………。
言うなれば……。真紅の愚者……。
…………。
闇の使途とは異なり 頭部からは異形を感じさせないが……。血濡れのような真紅の色は底知れない何かを 漂わせる。
………………。
…………。
……。
~Neutral からの New True~
日樹田地底湖での戦いで……。闇の化身が 新たな何かを作り出す。
暗い光の集積が……。2人の青年……。丹内空護と 天瀬十一の 眼前に撃ち出されたのだ。
…………。
この時の光は 人型の……。既視感が在るようで 全く見た事のない何かに形を成した。
…………。
「 なんだアレは…… !?
有馬の……。アルバチャスにも……。似ているが……。 」
「 あの色は 真紅の戦士……。まさか……。有馬 君を取り込んで……。作り出したのか……。
新しい Logを…… !! 」
…………。
現出したのは……。
愚者のアルバチャスにも似た外見と……。真紅の戦士をも連想させる 未知の存在だ。
…………。
言うなれば……。真紅の愚者……。
…………。
丹内空護と 天瀬十一は 警戒を強めた。
…………。
……。
真紅の愚者は……。数秒の沈黙を経て 片手に光を集めると……。これにおいても 既視感と未知が 混同する何かを作り出す。
片手に 集められた光で 作り出されたのは……。同様に真紅の大杖……。
…………。
『 re:code of the re:road !! New True Path !!
( リ・コード・オブ・ザ・リ・ロード !! ニュー・トゥルー・パス !! ) 』
…………。
類似の動作音が示す通りの……。青年が使用していた 蒼色の杖に酷似していた。
…………。
真紅の大杖は……。蒼色の杖よりも 長尺で……。そこから発せられる エネルギーの余波も 次元の異なる 異質さを感じさせる。
謎の存在は……。真紅の大杖を握り……。一言 口にすると……。即座に動き出した。
…………。
「 空護さん……。十一さん……。後は 任せてください。 」
…………。
青年 有馬要人の声は……。身にまとう空気が 微妙に異なる。
…………。
真紅の愚者が……。杖を握って ゆっくり振り返ると……。愚者は 既に 闇の化身の 近くまで移動しており打撃を叩き込んでいた。
異質な杖を 使った 強烈な 一振りの殴打だ。
…………。
闇の化身は 防御も間に合わず 一撃を受けるが……。地底湖の方へと 殴り落とされまいと……。体勢を立て直し……。
剣鉈での反撃に移っている。
…………。
「 貴様……。我の傀儡ではないな ?
よもや……。闇の精鋭の素体を……。取り込んだか……。 」
「 お前は オレを……。俺をも飲み込んだ。お互い様だ。
今度こそ終わらせてやるぞ !
The dark ace…… !!
( ジ・ダーク・エース ) 」
…………。
真紅の愚者は……。翼を持たなくとも……。飛翔能力を持つ 闇の化身と 宙空で渡り合う。
自在に 足場の無い 宙空をホバー滑走の如く疾駆し……。
立体的な軌道で 縦横無尽に 駆けると……。真紅の大杖を取りまわして 鮮やかで……。荒々しい棒術を叩き込んでいく。
…………。
愚者の声は確かに 青年のものだが……。丹内空護と 天瀬十一は……。視界の中での戦いに要領を得ない。
…………。
「 この声は……。やはり 有馬なのか ?だが……。それ以外の……。 」
「 もしかすると……。この気配は……。有馬 君の方から 感じ取れるコレは……。
戦神カシュマトアトルか ? 」
…………。
確実なのは……。
情報武装で 検知可能な反応では……。青年と思しき存在と 全く重なり合う形式で……。ある存在を確認できている事。
…………。
その存在こそが……。真紅の戦士としての……。怪人としてのカシュマトアトルだ。
…………。
想像の外を軽々と超える現実の連続でも……。これが……。悪いものではないのだと……。そんな風に証明しているのか……。
闇の化身と 肉薄した戦いを繰り返す 真紅の愚者が……。2人の青年に呼びかける。
…………。
「 空護さん……。十一さん……。カシュマトアトルは……。真紅の戦士は……。俺を助けてくれました。
俺達が こうして戦ってこれたのも……。その お陰だったんです。
エヌ・ゼルプトは……。エヌ・ゼルプトと同質の力でしか倒せない。
前宇宙で始めてアルカナを確立した ヘキソットが組み込んだ絶対の節理だ。けど……。同時に……。
永遠に コレを歪めた存在と共に……。エヌ・ゼルプトは 本来の形とは異なるものになってしまった。
光の試練は……。誰にも望まれなていない負の連鎖が生んでいたんです。
こいつもそうだ……。闇の化身も……。負の連鎖の果ての……。
だから……。
後は 同じ力を使える俺が……。コイツと戦います。
2人は 地上の人達を……。洞内への進入路付近に集まっている 実動班の皆さん と……。
もう少し離れた位置に避難をしてください。
空護さん なら……。あそこの光が差し込む 穴から脱出できる。お願いします。 」
…………。
青年の声からの決死の呼びかけだ。
真紅の愚者は、冷静に戦いを組み立て……。焦りも見せずに 事のあらましと これからを託しているようだった。
…………。
「 そんな……。有馬 君……。君は独りで……。
いや……。わかった。近くには 誰も近づけさせない。空護……。地上には一足先に行っててくれ……。
俺は洞内の 進入路を戻って 誰も取り残されていないか 確認する。
複雑な地形でも……。-JFC-の方が 電磁波を使った索敵能力で迅速に対応できる筈だ。 」
「 わかった。上の方は俺が 伝達しておく。
有馬 !!十一 !!後でまた 合うぞ !!必ずだ !! 」
…………。
2人の青年は……。根拠は必要とせず……。コレを飲み込む。
…………。
承諾の旨を口にしたが……。最後には……。強く……。先がある前提の 意味合いで 意思だけを示した。
…………。
ジャスティフォースは……。地底湖の洞内を逆走する為に 石畳の道へと向かい……。
アンチエースムーンは……。黒馬型戦車で飛翔し……。洞内の天に空いた穴から 一足飛びでの脱出を試みる。
…………。
未知との戦いを繰り返してきた 3人の結束は……。それぞれの行動を 尚更に円滑な物にしているようだ。
青年達は……。動きには 迷いがない。
…………。
これを良しとしないのは……。闇の化身だった。
…………。
「 悠長なものだな人間よ……。
我が それを させると思うか ?……闇は絶対だ。 」
…………。
闇の化身は……。11にも及ぶ 禍々しい赤の眼光を光らせて……。
暗い光の 光弾を 無数に 翼から発する。無差別で……。絶対命中の……。闇の弾丸だ。
…………。
だが……。闇の弾丸の全ては……。真紅の愚者が握る 杖が煌めくと 動きを静止させてしまう。
静止した闇の弾丸は……。逆再生のような動きで……。闇の化身へと返され……。全てが命中した。
…………。
青年の声が……。闇の化身に 徹底抗戦の意思と共に 真紅の大杖を 叩きつける。
…………。
「 その絶対と 同じ力を持つ俺が……。お前の存在を嘘に変える。
負けないんだよ !!絶対に !! 」
…………。
闇の化身は……。剣鉈で……。真紅の大杖を受け止めて……。反論した。
…………。
丹内空護と 天瀬十一は この隙に……。先程 口にした行動へと 隔たりも無く進んで行く……。
…………。
真紅の愚者と……。闇の化身は……。互いの武器を接触させたまま 拮抗して押し合い……。戦いの先を譲らない。
…………。
「 我を……。偉大なる絶対 唯一の闇を……。嘘に…… ?
……あり得ぬ。
膨大なアルカナの光を飲み込む我が……。無限の光だけの貴様に負けるなど……。あり得ぬ !! 」
「 俺は……。オレは……。無限の光なんかじゃないさ。
今の俺は トリプルゼロの更に先を……。英雄のマルクトに隠された力も 使える…… !!
ヘキソットが残した……。本来託したかった力の全てを…… !!
-000-以上を……。お前に注ぎ込めるんだ !!
( アインソフオール )
手段を選ばない……。俺は お前を……。ヘキソットの負の願いの 果てに形になった お前を……。必ず嘘に変える。 」
「 -000-の……。無限の光の……。その先だと…… ?
そんな概念は あり得ぬ。そんな可能性に……。形も名前すらも在りはしない。
虚構に虚無の闇が打ち負かされるものか……。 」
…………。
闇の化身が……。力技で 無理矢理 押し込んで……。つば競り合いの 体勢から 青年を崩させる。
全身に 暗い光を集めて……。高まった力のまま……。闇の化身が勢いよく飛翔し……。剣鉈を振り上げた。
…………。
真紅の愚者は……。宙空で留まり……。大杖を握り直す……。
…………。
「 トリプルゼロの先は……。クアドラプルゼロ……。あらゆる悲しみを消す希望の名前は……。
-0000- だ…… !!
( エイプリルフール )
馬鹿な愚者が……。闇を払うんだよ !!
いつか 必ず来る明るい未来で 冗談に変わるんだ !!今日までの絶望が !! 」
…………。
闇の化身と 真紅の愚者が……。激しくぶつかる。
…………。
……。
苛烈を極める戦いの中で……。青年だけに直接の声が聞こえた。
荒々しく……。青年と共に今 重なっている存在は……。
戦局が……。場合によっては青年の この先が変わりかねない 内容について言及する。
…………。
「 愚者の戦士よ……。オレの力も……。鍵の力も……。遠からず 限界を迎える。
人間としての お前を 完全には保護できなくなってしまうだろう。
ここから先は……。長引かせるな……。エヌ・ゼルプト化の片鱗は後戻りを困難にする。
完全に変じてしまえば……。お前も奴らの仕掛けからは逃れられない。
あの闇を倒せても……。お前自身が 単独崩壊と背中合わせの エヌ・ゼルプトになってしまっては……。 」
「 アルベギ族の戦神……。カシュマトアトル……。
貴方の助力に……。心の底から 感謝します。再三の 警告にも……。
けど……。俺は この先にも進む。
今の世界を しっかりと 護りたいんだ。沢山の人が 逞しく営んでいる世界を……。
大切な人が生きている 今も……。明日も……。無くしたくはない。
re:code-0000-の全力は……。今出さなきゃ意味がない。 」
『 Change !! re:code !! mode 0N !!
( チェンジ !! リ・コード !! モード・オン !! ) 』
…………。
真紅の愚者は 大杖を 光の粒子に変えて……。自身の身体に取り込むと……。更に別の姿へと自身を変化させる。
…………。
「 今時代の愚者の戦士よ……。忘れるな……。
お前が……。オレの心の内の後悔を知っているように……。オレも それを見ている。
最後まで……。それを捨てるな。
……さらばだ。 」
…………。
青年にとって……。未知の連続の中で 何度も戦い……。最後には共にあった 戦士の声が 離別の言葉を残す。
同時に……。戦神の気配は消え失せて……。
真紅の大杖さえも……。両親から貰った かつての御守りも 完全に消え去った。
…………。
既に真紅の愚者では 無くなった 青年の姿に……。
闇の化身が 反応を示す。
…………。
「 闇を払う 馬鹿な愚者だと…… ?
くだらぬ……。人間としての身体を捨てた貴様も……。人間の範疇から抜け出せない先程の 2人も……。
絶対なる 唯一の闇の我に 敵う筈もないのだ。
我は……。底亡き深淵……。何をもってしても……。完成された完全なる 闇は……。打ち払えぬ。
今の貴様の行いは……。自ら未来を捨てたのだ。
貴様も……。不完全なエヌ・ゼルプトと同じくして……。いずれ単独崩壊を起こすだろう。
我の……。偉大なる闇の勝利だ。 」
…………。
闇の化身が 地底湖から 溢れる 神秘の光を全身へと吸い上げて……。
むき出しの圧力を……。凶悪で 底なしの 覇気へと変えた。
忌まわしさは 更に強くなり……。N 地区に開けた大穴を作りだした時 以上の破壊力を 連想させる。
…………。
それでも……。
…………。
真紅の愚者では無くなった 青年の 意思も 揺るがない。
…………。
「 俺はさっき……。全てを冗談にすると言ったんだ。
因果律への干渉は……。今の俺にも出来る……。全てを ひっくり返してでも……。お前を消す。
皆が繋いだ今を……。必ず過去にする。
いつの日か必ず来る 未来での 笑い話し にして見せる !! 」
…………。
青年の 新たな姿は……。全身の至る所で 神秘の光が 吹き出し……。
不定形の……。1つの形状には納まりきらない 力の放流が……。辛うじて 人の形をしているような印象させ漂わせる。
特に……。掌や……。肩からは 絶えず放流が溢れ……。不定形の光の噴出が 大きく弧を描いた。
…………。
re:code-0000- mode 0N……。
( リ・コード エイプリルフール モード・オン )
…………。
青年が得意とする 護符の恩恵とも比べ物にならない 破格の光の放流が……。
あらゆる 可能性を引き寄せる 因果の光が 暴れ狂う。
…………。
地底湖の上方……。宙空で……。因果の愚者が 闇の化身に 強く……。拳をぶつける。
…………。
闇の化身が握る 剣鉈は砕け……。
雌雄を決する 激しい殴り合いが……。始まった。
………………。
…………。
……。
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