- 44話 -
∞ と 0
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目次
~繋がる神秘のパス~
ニューヒキダの 北西側の地域……。N 地区に 突如 空いた大穴の内外では 激しい戦いが 続いてた。
大穴の 外側……。
地上では、複数体の 大柄な怪人を相手に、APCの特務が保有する 怪人処理専門の 人員が 集団戦闘を駆使して武器を振るう。
…………。
この日は、これまでの怪人との戦いとは 異なり……。特務が行った 初の進攻戦だった。
…………。
大穴の内部では……。数人の青年達が 暗闇の中を走り抜け……。
この地域 一帯に影響を及ぼす 怪人の打倒を目指し 手を伸ばす。
…………。
大穴の近郊に出現した 古い 進入路から、深くまで進んで行き……。日樹田地底湖の最深部を目指したのだ。
…………。
日樹田地底湖の最深部に繋がる 石畳が続く道の 途中でも、白熱した戦いが 音を鳴らす。
ここでは……。
青年 有馬要人(アリマ カナト)が 奮闘していた。
…………。
最深部から 多数の怪人を生み出していると思われる怪人を 目指して、3人の青年達が先行していたが……。
この石畳の道 付近で、謎の強襲者が 暗がりから現れ……。1人の青年を 孤立させてしまったのだ。
…………。
洞内の暗がりの中でも……。一定量の アルカナの光が漂っているらしい。
強襲者が放った 何発目かの エネルギー弾が 地面を抉り飛ばすと……。周囲を明るくする程の 小さな 光溜まりが出来上がる。
…………。
仄暗い明度は……。強襲者が何者なのか……。青年に 予測させた。
…………。
「 お前……。もしかして……。生きていたのか ?
確かに 実体は消えたはずじゃ……。 」
…………。
幽かな光りが灯る 暗闇の中……。これまでに戦った ある存在が 連想される。
…………。
ぼんやりと 明度が上がった 石畳の続く 通路の脇で……。
既視感の有る 形から 高笑いが上がった。
…………。
「 ハハハ……。嬉しいですよね ?有馬さん。
俺ボク私も……。こんな 形で 復活させられるなんて。想定のガイガイです。
Devil_Ain……。
( デビル・アイン )
心機一転……。名前も変えましょうか……。今後とも よしなに お願いしますよ ?
有馬さん も 新型と新しい武器なら……。俺ボク私も そうですよね ?
イーブンって素敵でしょ。……だって平等なんだから。 」
…………。
彼誰五班 旧四班長……。恵花界(エハナ カイ)……。
悪魔のエヌ・ゼルプト……。レト……。
複数の顔を持つ……。奔放で 空虚な 形を持たない 虚構の化身とも言える存在だった。
…………。
闇の中に咲いた花が……。暗く生い茂り……。無限光の前に立ちはだかる。
…………。
有馬要人は……。暗闇からの強襲者に 負けじと奮起した。
神秘的な輝きを放つ 蒼色の アルバチャス code-000-は……。愚者 code-0-にも似た 未知の systemではあるが……。
何よりも……。今日 この日までの 多くの経験が、青年の武器に成っていたのだ。
…………。
青年は 蒼色の剣を振るい……。時には 蹴りを繰り出し……。自身の 四方の暗闇から迫ってくる悪魔に対抗した。
…………。
悪魔は青年の 死角を狙っているのか……。切り付けられても 蹴り飛ばされても……。
いつの間にか 青年の後方や 側面から とびかかり……。斧のような武装で 重い一撃を狙ってくる。
…………。
「 ……妙だな。
手応えは あるけど……。いや 手応えが 在り過ぎるんだ。まさか俺だけを足止めする為の……。 」
「 流石です。正解ですよ ?有馬さん……。
俺ボク私が……。貴方から得た着想は 今も扱えるんです。……暗闇からの アドバンテージとでも言いましょうか。
適当な位置で 隠れた分身を消滅させて……。全く別の 分身を攻め手として送る。
バレるまでは……。
1人で 多方面から攻撃できる瞬間移動に見えるかなって思ったんですけど……。どうでした ? 」
…………。
蒼色のアルバチャスの 周囲には、複数の影が 姿を見せる。
複数の影は そのどれもが、異様な怪人の姿をしていた。
…………。
頭部を除外すれば……。
全身の殆どは、悪魔のエヌ・ゼルプトが レヴル・ロウのシステムを利用して 変異した姿と、大きな差異こそ見られない。
しかし、その頭部は 大きく異なる 有機的な特徴を持つようになっており……。
背面から延びる 樹木の枝のような脚のような 器官の本数も増えている。
…………。
有馬要人は……。警戒を解かずに 蒼色の剣を 握った。
…………。
「 何に自身を持っているのか 知らないけど……。分身での足止めには粗末じゃないのか ?
何を狙ってる ? 」
「 何か狙ってても……。聞かれて答えるなんて そうそうあるもんじゃない。
フフフ……。何も狙ってませんよ 俺ボクはね。
さっき 言ったでしょう ?俺ボク私の復活は 意図されたものじゃないって。
世界は どんどん変わっていくんです。
時代……。場所……。人……。文明……。日常……。あらゆる物が連鎖的に 繋がって相互に影響し 変化を呼び続ける。
仮に どれか 1つが途切れても この道を繋ぐ糸は 完全には消えはしない。
広く見れば……。何かが 欠落した何かを埋めて 世界の凸凹を マイルドに戻す……。
草が枯れても……。別の生命の肥やしになるし……。
人が消えても 文明が丸ごと潰えても……。時間が過ぎれば、いずれ 穴埋めが現れる。
この流れ……。凄く生きてるって感じがします。
今を 堪能してるだけですよ 俺ボク私は !! 」
「 あの 闇の怪人が……。
The dark ace は 再生の無い破滅を……。そんな風に話していた。
( ジ・ダーク・エース )
こんな場所での 俺だけへの足止めだ……。
アイツに復活させられたなら、知らない筈もない。
お前が今 話した世界や時代の循環にしても、それが完全に 無くなるなら……。
生きてるって言えなくないんじゃないのか ?
N 地区に大穴を開けられる奴が……。今の世界に良い事を するなんて 俺は思えない。 」
「 世界に相当する 原初のエヌ・ゼルプトが……。新たな姿に形を変えた。
アレがニューノーマルです。
闇は偉大な力で 今の世界を変えていくでしょうね。誰も知らない世界が 遠くない未来に完成する。
誰も見た事のない 永遠なら……。俺ボク私は逆に……。普通に ?ワクワクしますけどね。
変化の無い世界を飽きるまで 堪能して……。
その果てには……。やめてくれぇ !!!俺を殺してくれぇ !!!って叫びたくないですか ?
今からワクワクして、ドギマギして……。高鳴ってるんです。
新しい世界では気持ちの変化だけが 尊い絶対価値になりますでしょう ?
俺ボク私が……。精神を きたすのは何億年後か……。
目標は年数が 68桁を超える感じですかね。
その時には新しい数字の単位とか作っても良いかもしれません。ハハハ !! 」
…………。
蒼色の剣が 一閃、また一閃と 暗闇を切り裂き……。
その回数と同程度の 悪魔が 両断されて消え去った。
…………。
悪魔は避ける そぶりもなく……。切られた数が 暗闇の中から、青年に歩みより 再度 補充される。
一部の洞の壁面や 上の方から垂れ下がる 鍾乳石が、仄かに照らされる程度の明るさの中……。
青年の周囲には、常に 4体程度の 悪魔が 視認可能な 範囲に姿を見せており、その姿勢は崩れない。
…………。
神秘的な蒼の愚者は……。何度も 闇の中から現れる 悪魔を切り払っていく……。
……悪魔の声は 何処かから響いていいるのか、途絶えずに会話が続いた。
…………。
「 お前は 充分 狂ってるだろ……。
今 地上で 生きてる人たちはどうなる ? 」
「 知りませんよ。
変化は常に突然です。良いも悪いも決めるのは外の誰かでしょ ?
俺ボク私は、楽しい事を続けただけ……。
あの闇の エヌ・ゼルプトだって……。たぶん 別に そんな 大げさな気持ちなんて持ってないですよ。
シンプルに やれる事をやってるだけでしょ。
なら……。俺ボク私は、偶々 生み出されても……。楽しいと思った事をするだけだ。
勇敢な皆さん は……。有馬さん の その姿も剣も……。何かしらの 切り札だと思ってるんでしょう ?
正解かもしれないし 正解じゃないかもしれない。
けど……。どっちにしろ……。確定で 勝てない その他の 2人が、あの偉大な闇と 戦う方が楽しそうだ。
そんな状況が出来たら……。楽しいだろうなって……。
穢れの無いピュアな気持ちで、俺ボク私は 有馬さん の足止めを全力で やってみたんです。 」
「 空護さん も……。十一さん も……。お前が思う程 弱くはない。
彼誰五班の総力で 今回だって 勝って見せる。
俺だって……。ここで お前からの足止めを いつまでも食らうつもりもない !! 」
…………。
蒼の愚者は 更に 強く 剣を降り……。悪魔を切り裂く……。
…………。
悪魔の分身体は これでも途絶えない。
…………。
「 フフフ……。志が高いのは とても良い事だと思います。
これからの自身の行動への 自己肯定は あっても損はしない。
ところで 有馬さん……。控えめに見ても 完全な部外者の貴方が 今も戦っているのは何故かわかりますか ?
丹内空護(タンナイ クウゴ)も……。天瀬十一(アマセ トオイチ)も……。
その他 大勢の実動班の雑魚達も……。
皆 貴方よりも もっともらしい動機は抱えてるのに、貴方には それが無い。
俺ボク私も 今 気がつきました。なんで今まで わからなかったのか……。
あらゆるものを 見通せる エヌ・ゼルプトが これを 理解できないなんて……。かなり衝撃でしたね。
有馬さん 貴方は……。俺ボク私の擬態元なんですよ。
俺ボク私の残虐性のルーツは きっと 貴方なんでしょうね ?恵花界さん。ハハハ !! 」
…………。
暗闇の中から……。幾度も現れた 悪魔が……。高笑いを上げる。
高笑いの末に……。斧のような 武装の 柄の柄頭に当たる位置から 高密度のエネルギー弾を発射した。
青年に向けて 四方から放たれた エネルギー弾は……。黄色の毒々しい 輝きで熱をこもらせ……。蒼色の愚者に迫る。
…………。
『 Hover Chaser !! Function !!
( ホバー・チェイサー !! ファンクション!! ) 』
…………。
有馬要人は こなれた動作で ホバー滑走を行い、四方からの砲撃が 逃げ道を消すよりも先に、その中心から抜け出した。
ホバーで疾駆したままの動きで、砲撃主の中の 2体を 蒼色の剣で 横薙ぎを浴びせ……。
……そこから 更に 残りの 2体の分身体も 迅速に切り払う。
…………。
青年の動きには 迷いは見られない。
…………。
「 俺の本名 ?嘘を言うな。俺は産まれも育ちも この街じゃない。
俺は……。助けたいから戦ってるんだ !!
この街で これからも生きていく人達と その未来を……。今の俺が護る為に !!
俺にしか出来ないなら……。こんな命の 1つや 2つ !!いくらでも かけられる !!
無くしたくないから手を伸ばすんだ !!歩き続けるんだよ レト !! 」
…………。
有馬要人の動きは むしろ 激しく高まり、力強さを見せているようだ。
…………。
青年 有馬要人が握る 蒼色の剣は……。仄かに 刃を煌めかせた。
…………。
『 Change !! re road !! Last Path Neutral !!
( チェンジ !! リ・ロード !! ラスト・パス・ニュートラル !! ) 』
…………。
動作音を発して、蒼色の剣の形状が 一瞬にして 変化する……。
青年に握られていた 剣は 杖のような 長物に変わっていたのだ。
…………。
アルバチャスが扱う 主に 攻撃用の基本武装……。
Barrage Armed……。
( バラージ・アームド )
蒼色の剣に起こった変化は……。
その基本武装の中でも 近距離と中距離での戦いを想定した、杖型の B.A.Wandと近い 長さだった。
…………。
B.A.Wandは、基本武装の中でも 青年にとって 最も 扱いなれた 実装型武装である。
これまでにも、何度も 棒術を繰り出す為の武装として……。空を飛翔する 本来とは異なる用途の荒技として 使いこなしてきたのだ。
…………。
幽かな灯りの中……。悪魔は この変化を見届ける。
…………。
「 へぇ……。新しい剣の次は 杖ですか……。
けど、広さの限られた 洞の中で長物は むしろ不利でしょう ?
フフフ……。虚勢は 長く続かないものです。
俺ボク私は……。仮に……。有利でも不利でも 有馬さん を狙い続けますよ ?
広い洞の中で……。どの復路から忍び寄って 襲い掛かるのか……。完全には把握しきれない。
無論……。本体が どれかなんて……。教える筈もない。
増え続けられる 俺ボク私を無視も出来ない。
おまけに……。仲間のピンチを助けられるかどうかの 時間制限つき……。焦りますよね ? 」
…………。
悪魔が 吐き出す言葉の揺さぶりに 呼応しているように……。
石畳の続く道の奥からは、戦いの音が強くなっていき……。闇の傀儡が 這い出し始めている。
…………。
「 有馬さん も わかってるでしょう ?
傀儡達も 見た感じ……。さっきよりも 多くなってるんだ……。
洞の奥も劣勢で……。洞の外の上の方だって……。マルクトも無い アイツらが勝てるかどうかの 勝算は無い。
皆 等しく 孤軍奮闘してるんですよ。最後の 1人は 誰ですかね ?ハハハハハ !!
今更……。新しい武器なんて……。新しい力なんて……。何の意味も無い。 」
「 レト……。俺も知ってるんだ。
何かが 意味あるものになるかどうかは……。残された誰かが決める。
なら……。俺が 今からでも、今日までの戦いを 無意味にはさせない !!
俺達が 今まで乗り越えた 全てを 無駄になんて させやしない !!何があってもだ !! 」
『 Last Path Neutral !! Function !! Pentacle !!
( ラスト・パス・ニュートラル !! ファンクション !! ペンタクル !! ) 』
…………。
蒼色の愚者は……。新たに形を変えた 神秘的な杖の 柄頭から 青色の光線を放ち……。
複数の 悪魔の分身体と、闇の傀儡達を 消滅させていく。
…………。
まるで……。
小銃を 素早く取りまわして 狙いをつけるように……。
立ち撃ちの姿勢を ホバー滑走で取り、適度に方向を修正しては 撃ち貫いていく。
長さを活かして 振り回せない 状況でも、定点的な 攻撃手段で 対応した。
…………。
……。
神秘的な蒼の光線は 完全な 直線では進まず……。
途中で湾曲した軌跡を描き……。視界には納まっていない 位置の怪人にも命中しているようだった。
この場からも 少し離れた 位置で 闇の傀儡 ダーク・コートが爆散する。
…………。
確かに攻勢を強めた 青年 だったが……。悪魔は 余裕を崩さず 高笑いが 止まらない。
洞内で 複数体の分身体からの発される 狂気的な笑い声が反響し……。
蒼色の愚者の 背後から忍び寄る 1体の悪魔の 存在を掠めさせる。
…………。
複数体の悪魔の分身体が……。先程 以上に 絶えず 青年へと 襲い掛かった。
…………。
青年は……。ひといきに 襲い掛かる悪魔達を 神秘的な杖で 殴り飛ばしていく。
…………。
そんな中……。他の分身体とは異なる動きの 1体の悪魔が……。
斧のような武具の銃口を……。有馬要人に近づけて 熱を放とうと狙いをつけた。
青年は……。この瞬間も 次々と現れる 悪魔の分身体や、闇の傀儡を相手に 光線での攻撃も行い迎撃を行っている。
悪魔が引き金を握るかどうかの 間隙で……。
…………。
青年 有馬要人と……。悪魔 レトの声だけが交差する 洞内に……。別の誰かの声が乱入した。
…………。
生真面目な……。ある 青年の 声だ。
…………。
「 楽しそうな 笑い声ですね レト ?
有馬さん の背後は……。自分が取らせません。 」
…………。
今回の戦いで 始めて導入された 新たな型式の レヴル・ロウが 1人 駆け付けたのである。
駆け付けた レヴル・ロウは、ホバー滑走で疾駆し……。
片方の肩部に常設されている 盾で悪魔を 押し出して、片方の大型の拳で 殴打を叩き込む。
…………。
「 彼誰五班だって 強くなってるんです。地上は まもなく 戦闘処理が 完了するでしょう。
自分は 中の応援を 目的に先行して ここに来ました。
助けに来ましたよ。有馬さん。 」
「 一志 !?そうか……。上は もう……。
けど ありがとう。助かった。
よし !俺達で レトの分身に 対抗するか。
空護さん と 十一さん が奥まで先行してる。ここから 2人で追いつこう。 」
「 いいえ。あの悪魔とは 自分達が決着をつけます。
直ぐに 大代 二班長 と合一編成も なだれ込みますから。
何度だって背中を預けてください 有馬さん。 」
…………。
駆け付けた 援軍は……。有馬要人を 再度……。ここから奥へと贈り出す。
…………。
「 一志……。気をつけろよ ?
たぶん、前の レトと完全に同じって訳じゃない。
少ないけど……。俺の戦闘データも 共有しておく。参考にしてくれ。 」
「 ありがとうございます。
有馬さん も 気を付けて。 」
…………。
神秘的な蒼の愚者 code-000-は……。仲間に背中を任せて……。石畳の続く道の先へと進んだ。
道中では、神秘的な杖で 傀儡への殴打や 光線での迎撃を 注ぎ込む……。
自身の進路の確保と 殿(しんがり)を行う仲間への 負担軽減の両方を狙った動きである。
…………。
有馬要人は、完全に この場を離れる前に ホバー滑走で 洞内の最奥に進路を取りながら、身体の向きだけを 180度回転させた。
洞内の最奥に 背中を向けたまま 滑走し……。蒼色の光線を複数本放つ。
複数本の蒼色の光線は、洞内の復路の方まで 湾曲して伸びていき……。悪魔の分身体を 消滅させる……。
…………。
最後の 猛襲を 置き土産にして……。蒼色の愚者が……。石畳の続く道を進んで行った。
…………。
愚者の青年 有馬要人が、完全に この場を離れ……。
どれ程かの時間が過ぎると……。1体の 悪魔が 殿に残った青年の 近くまで 姿を表す。
…………。
「 おいおい。
マルクトも無い レヴル・ロウ程度で エヌ・ゼルプトの相手が出来るわけないだろ ?
俺ボクとしては 別に気にしないけど……。
1 対 1 でも無理なのに こっちは捨てられる分身が わんさかある。一志も馬鹿だねぇ。 」
「 自分は 孤独では ありませんよ。
伝次が……。一緒に戦ってくれますから。 」
…………。
実は……。先程の発言は 全てが本当では無かった。
…………。
地上での戦いは……。
優勢だが……。大代大(オオシロ マサル)を始めとした 他の人員が 洞内に進攻するのは 実際には もう少し 先で……。
荒井一志(アライ カズシ)は 他の数名と先行して、状況の確認を行うのが前提の哨戒活動を 行っていただけだった。
最奥の 直前で……。戦闘の気配を感じ取り……。仲間のレヴル・ロウを 地上に戻し……。
……先んじて 監視役として 駆け付けたのである。
…………。
実際には……。応援が来るにしても……。それまでの間……。エヌ・ゼルプトとの交戦は想定されていないのだ。
…………。
レヴル・ロウ……。二三型……。
荒井一志は……。親友が残した 小銃型武装デバイス R,R,Gの銃口を 構えて 辺りの警戒を強める。
………………。
…………。
……。
~3つの 0と 11の光~
日樹田地底湖が広がる洞の最深部……。
2人の青年が 闇の怪人達と苛烈な戦いを続けるが、ついに 地上に向かう 傀儡を取り逃してしまう。
…………。
大きな戦いの音が鳴ると、地上へと繋がる 道を隔てる 光の障壁が 消え去った。
…………。
漆黒の鎧の戦士……。アンチエースムーン 丹内空護が……。
雄々しい獅子の意匠を持った戦士……。ジャスティフォース 天瀬十一が……。
…………。
それぞれに、ある 怪人からの集中攻撃を受けて 大きく隙を作ってしまう。
思いもよらない 強敵に阻まれて、地上に向かう 闇の傀儡に意識を向けられなくなっていたのだ。
…………。
「 空護……。まだ へばってないよね ?
もう ダーク・コートも どれだけ倒したか……。数えてないんだけどさ……。 」
「 それで良いだろ。
倒した数なんて数えても 今は どうにもならん。
システム内の集計を見れば 特務でわかるんだ。 」
「 そうだね……。最優先事項は……。闇の化身……。
ジ・ダーク・エースの 打倒だ。
けど……。厄介だね あの 2体。 」
…………。
丹内空護と 天瀬十一は、時には短い間だけ 相互に背中を預けるが……。
この時の 2人と直接戦う 相手も 同数の 2体……。そして 直ぐに 闇の化身によって 闇の傀儡が生み出され……。
戦いの勢いを 完全に 掴めない状態が 強くなってしまう。
…………。
闇の化身の言葉を借りるのならば……。
2人の青年を圧倒する 厄介な 2体は、似通った外見を持ちながら 個々に名称が異なるようだ。
…………。
Dark Ace Log Sun……。
( ダーク・エース・ログ・サン )
…………。
Dark Ace Log Judgement……。
( ダーク・エース・ログ・ジャッジメント )
…………。
厄介な 2体は闇の使途……。
The dark ace……。闇の化身が 新たな姿の 世界を意味するのと同じように……。
( ジ・ダーク・エース )
新たな形の エヌ・ゼルプトに相当し……。闇の太陽と 闇の番人を意味するのだとか……。
…………。
「 闇の使途……。だったか ?
つまり アイツら 2体は、それぞれが 新しく作られた エヌ・ゼルプトみたいなものって事か。
中距離 近距離に対応した 赤が太陽で……。 」
「 その認識で たぶん合ってるよ。
青が審判だ……。こっちは 遠距離が得意みたいだね。なかなか……。近づけない。 」
…………。
仄暗い赤の光を帯びる 闇の太陽も……。
幽かな青の光をまとう 闇の番人も……。片手には 闇の化身が扱う武具と類似の 鉈を握っている。
…………。
鉈は 闇の化身と同様に先端が異様で……。これまでのエイオスが扱う 武具と類似の特徴が目立つ。
具体的には……。基節骨や 末節骨にも 似た形状の異様な形状の外殻が集積し……。
先端や 間隙が 銃口の役割を果たしているようなのだ。
…………。
闇の太陽は……。順手で握った鉈から繰り出される 重さの有る斬撃と……。
爆発力の強い 熱波を反対側の掌から放ち……。丹内空護を幾度も吹き飛ばす。
…………。
闇の番人は……。鉈の先端から放たれる 暗色で霞状の不定形な弾丸を用いて、天瀬十一を絶えず四方八方から 追い詰めていく。
…………。
「 十一……。俺に良い案が 有るんだが……。 」
「 俺もだよ空護。……たぶん同じようなプランだ。
けど……。相手が それをさせない。実行する前に 直ぐに分断させられるな。 」
「 逆に それが 不利に成るのを 相手も知っているのかもな。
さっきので、ダーク・コートも数体 逃してしまった……。
上も気になる。俺も そろそろ急ぎたいが……。このまま 各個撃破は難しいか ? 」
…………。
2人の青年は……。背中を預けあって 死角を潰す動きも行うが……。
時間が過ぎるほど 2体の闇の使途は 強力になっているようで、防戦が慢性化し始めてしまう。
…………。
「 AA-18の クアドリガでの砲撃を、空護が ここでは使えないのも 辛い要因かもね。
それに アイツらも たぶん……。空間を移動できる。
無条件かどうかが わからない以上……。俺達が 自棄を起こしたら本当に終わりだよ。
けど……。地道に見極めるしか無いのか……。 」
…………。
既に……。地上へと向かう 闇の傀儡にも 妨害すら出来ず……。闇の化身を倒せるかどうかも 遠ざかっていた。
…………。
日樹田地底湖が存在する洞の最深部での戦いの最優先事項が……。難色を示し始める中……。
ある 1人の青年が……。この戦いに加わる。
…………。
神秘的な蒼の愚者……。code-000-……。有馬要人だ。
…………。
『 Last Path Neutral !! Function !! re purge !!
( ラスト・パス・ニュートラル !! ファンクション !! リ・パージ !! ) 』
…………。
code-000-は……。ホバー滑走で 地底湖が広がる 空間に颯爽と姿を現し……。蒼色の杖の 先頭部から無数の光弾を放つ。
無数の光弾は 杖の先頭部で煌めく、黄金色の 11の球体部分から 何度も撃ち出された。
蒼色の神秘の光は 闇の傀儡を 一掃し……。闇の太陽と 番人さえも 大きく怯ませる。
…………。
「 空護さん !!十一さん !!
お待たせしました !! 」
…………。
愚者の青年が放った 数多の光弾は……。闇の化身にも伸びていくが……。途中で ガス状の暗い光に阻まれてしまう。
…………。
それでも……。
青年の鮮烈な登場は……。先んじて この場で戦っていた 2人の 気持ちを上向かせたらしい。
…………。
「 有馬 !!……よし 無事だったか。 」
「 有馬 君……。戦況は 今送ったデータの通り……。こちらが やや劣勢だ。
けど 俺の気持ちとしては……。ここからは違う。 」
…………。
3人の青年は 即座に背中を預け……。戦いの先へと視線を送る。
…………。
「 俺も そのつもりです。
さっきの相手は、ここにいる闇の使途と似た変化をしたレトでした。
前よりも強くなってましたが、今は いろいろあって 一志 達が また背中を護ってくれている。
俺達 皆で……。今を ひっくり返しましょう。 」
『 Last Path Neutral !! Function !! re charge !!
( ラスト・パス・ニュートラル !! ファンクション !! リ・チャージ !! ) 』
…………。
蒼色の杖から 柔らかなエネルギーの 放流が放たれ……。丹内空護と 天瀬十一へと波動が伝播する。
…………。
「 身体が軽くなった……。有馬 君……。これは ? 」
「 俺も 正直 わからない だらけ ですけど……。あの剣が 変化したんです。
どうやら B.A.Wandと似た感覚で 使えるようだったので……。
code-000-は……。エネルギーの充填速度が かなり速い……。俺の分を 2人にも移送しました。 」
…………。
AA-18も -JFC-も 体表には code-000-と限りなく近い 光を漂わせており……。
その変化は 確かな力の高まりの兆しでもあったらしい。
…………。
「 B.A.Wandに似てるなら お前の得意分野か……。
お陰で 一時的に障壁の強度も出力も上がったみたいだ。これなら 空間移動でも簡単に逃げられないかもな。
俺達 3人で奴らを ここで終わらせるぞ。
十一……。太陽は任せるぞ。俺は青い審判の方を貰う。
有馬……。お前は あの化け物を頼む。 」
「 3人で 背中を合わせての よーいドンか……。確かに さっきのプランを試すなら今だ。
任せてくれ 空護。
対戦カードの シャッフル……。単純すぎて プランってのも 大げさか。 」
「 勝機に繋がるなら……。それで充分ですよ きっと。
俺も そのプラン了解です。 」
…………。
ジャスティフォース……。天瀬十一は 白群色の雷鳴を発する大剣を構え……。
アンチエースムーン……。丹内空護は 漆黒の鎧で 静かに燃焼する月の力を 銃へと送り込む。
…………。
青年 有馬要人は……。自身の背後に 2人の心強さを実感しているのか……。蒼色の杖の先頭を 闇の化身へと向けた。
…………。
3人の青年達を 同数の怪人が取り囲む。
…………。
「 世界に 再生亡き 破壊を……。輪廻の及ばない 破滅を……。
世界 唯一の 絶対なる闇である 我を……。貴様らが超えられるか……。今一度 試すがいい。
闇の使途も……。傀儡も……。我がいる限り増え続ける。我が闇は止められぬのだ……。
不完全なマルクトでは……。我を阻めはしない。 」
…………。
日樹田地底湖の水面の上方では……。
忌まわしさを振りまく 闇の化身が 大きな翼を広げ……。
禍々しい 11個の赤の瞳を……。暗く煌めかせた。
………………。
…………。
……。
~Allbachas~
石畳が続く道では……。
新たな姿を得た 悪魔と……。1人の レヴル・ロウが交戦している。
…………。
先程までは……。蒼色の愚者 code-000-が この場で 悪魔と相対していたが……。
今 この瞬間、この場で 戦っている レヴル・ロウが 愚者の青年を贈り出し……。ここに残ったのだ。
…………。
闇の化身によって 新たな姿を得て復活した 悪魔と……。
多くの仲間達との 力の結集の末に マルクトも持たずに この場に歩みを進めた 青年が……。密かに戦い続ける。
…………。
この場に留まった青年……。荒井一志は……。つい先程 有馬要人に嘘をついた。
完全な でまかせではないのだが……。事実の一部を 誇張した 物言いで 愚者の青年を 更に先へと 贈り出したのだ。
…………。
……。
地上での戦いは……。優勢だが……。大代大を始めとした 他の人員が 洞内に進攻するのは 実際には もう少し 先で……。
荒井一志は 他の数名と 先行して、状況の確認を 行うのが前提の哨戒活動を 行っていただけだった。
最奥の 直前で……。戦闘の気配を感じ取り……。仲間のレヴル・ロウを 地上に戻し……。
……先んじて 監視役として 駆け付けたのである。
…………。
実際には……。応援が来るにしても……。それまでの間……。エヌ・ゼルプトとの交戦は想定されていないのだ。
…………。
だというのに……。生真面目な青年は 珍しく過大な物言いで 少しだけ真実とは異なる 内容を口にしたのである。
…………。
……。
生真面目な青年 荒井一志の記憶の中には……。まだ先程の やり取りが残っている。
神秘的な蒼の愚者の青年と言葉を交わし……。先に進ませる為の方便で 背中を押す。
…………。
「 一志 !?ありがとう。助かった。
俺達で レトの分身に 対抗するか。
空護さん と 十一さん が奥まで先行してる。ここから 2人で追いつこう。 」
「 いいえ。あの悪魔とは 自分達が決着をつけます。
直ぐに 大代 二班長 と合一編成も なだれ込みますから。
何度だって背中を預けてください 有馬さん。 」
…………。
自身の性格では 普段は あり得ない 言動をしてでも……。今の状況を作り出したのだ。
…………。
……。
悪魔のエヌ・ゼルプトとは……。友人だった。
レトが 恵花界として存在し……。悪魔の側面を覗かせる前は……。今はいない 別の友人と共に……。同期の間柄だったのである。
…………。
恵花界と……。伊世伝次(イセ デンジ)と……。3人とで 実動班での生活を 走り抜けた時期があったのだ。
…………。
……。
荒井一志が この場に先行し……。そこで 復活を果たした かつての友人と再会したのも……。
当然 意図したものではない。
…………。
こんな日に……。こんな場所で……。相対するなんて想定できる筈もないが……。
…………。
悪魔から 一方的に 攻撃され……。
必死に 小銃の握把(あくは)を握り……。起死回生の拳が 簡単に避けられても……。何故か……。嫌な気分はしなかった。
…………。
何秒か先には……。身体も動かせず……。血だまりに沈むかもしれない こんな状況で……。
生真面目な青年 荒井一志の口角は……。知らずのうちに上がっていたのだ。
…………。
愚者の青年 有馬要人が、完全に この場を離れ……。
どれ程かの時間が過ぎると……。1体の 悪魔が 殿(しんがり)に残った青年の 近くまで 姿を表す。
…………。
「 おいおい。
マルクトも無い レヴル・ロウ程度で エヌ・ゼルプトの相手が出来るわけないだろ ?
俺ボクとしては 別に気にしないけど……。
1 対 1 でも無理なのに こっちは捨てられる分身が わんさかある。一志も馬鹿だねぇ。 」
「 自分は 孤独では ありませんよ。
伝次が……。一緒に戦ってくれますから。 」
…………。
生真面目な青年の口の中は既に鉄の味が 充満している。
洞に侵入する前の……。ダーク・コートとの戦いも 緩やかでは無かった。
普段のままの 丸七型であれば……。活動可能時間を 既に過ぎているだろう。
今日この日の 戦いに備えて……。天瀬十一に無理を頼み……。
…………。
試作型の範疇から出ていない新型 code-β-の適用と、武装デバイスの内蔵要領の拡張を施してもらって正解だった。
…………。
「 知ってますか レト……。
自分が知っている 恵花界は、少し冷めてる性格も ありましたが……。
植物も含めて 命を大切にする 奴でしたよ。
だから……。仲間の為に 命をかける事だって 必要なら いとわない。
誰かを思って……。
暴走する事だって……。後から見たら そう思える事も……。自分が知らない所でも きっと あったんでしょう。
全部が 冷静そうに見えて……。裏側には 危なっかしく痛みを隠すような……。そんな奴でした。
だから……。伝次も最後の最後まで悩んだんです。
そんな優しい人間に擬態して 嘘の人生を歩んでいたのなら……。自分は 戦わなくてはならないんです。
今は いない友の為にも……。多くの仲間の為にも。自分の為にも……。
これは……。今日まで生き残れた自分が やるべき 大仕事だ。 」
…………。
荒井一志は……。塔のように大型の拳鉄を 突き出した。
…………。
悪魔は……。軽々と後方へと飛び退いて……。背面から生えている 樹木の先から……。幾つかの光の粒子を発射させる。
樹木から発された 光の粒子は……。妖しく煌めいて……。生きている羽虫のような 不規則な軌道で飛び回った。
…………。
不規則な軌道で飛び回る 光の羽虫が……。至る箇所から 二三型に被弾し爆発する。
…………。
「 ……んん ?
何を言ってるんだ ?今の俺ボクは……。
エヌ・ゼルプトよりも レヴル・ウィステリアよりも 遥かに上級で……。一志が勝てるわけ無いだろ ?
あのまま……。有馬さん と形だけの共闘でなら まだ勝ちは あったかもしれないけどね。
その蝶達も……。今は 不完全版だけど 一志には牽制射撃 以上だろ ?
無理しないで ?わかるよ……。
もう 長くは保てないじゃないの ?
その主張も 遺言か何かなの ?一志。 」
「 人間は……。沢山の感情を 内に隠してるんです。
だから 今は……。それを言葉にしました。決意と 感謝の気持ちで…… !!
伝次や仲間達の 仇討ちを…… !!自分が果たせる 今に !!心から感謝しています !!
お前は……。誰でもない !!
名前すらも無い 只の悪魔だ !!
二三型の 最大の切り札は……。エヌ・ゼルプトにも致命打を狙える !!マルクトが無かったとしても…… !! 」
『 Ally,s Function !!
( アーリィズ ファンクション !! ) 』
『 Babel Chariot Stupid !! Pentacle !!
( バベル チャリオット ストゥピッド !! ペンタクル !! ) 』
…………。
二三型の片腕……。塔のような腕部に 愚者のような 膨大な熱量が注ぎ込まれていく……。
荒井一志は……。戦馬車の如く力強い 滑走に重さを乗せて 拳をぶつけた。
…………。
この時の レヴル・ロウの疾走は頑強で……。正面から飛来する 光の羽虫を 前面から受けても 滑走進路をブレさせない。
…………。
……。
悪魔 レトは……。
極まった拳の殴打にさらされる。
…………。
熱量を帯びる 二三型の拳は……。悪魔に命中した……。
大量のエネルギー波が 拳の圧力を 更に奥の方へ開放するかのように 解き放たれ……。突き出した拳の前方へと照射される。
…………。
レトは この殴打と エネルギー波の多段攻撃の全てを その身に受けた。
…………。
「 ……なるほどね。当たれば デカいのか。……これなら確かに。
ハハハ……。やるじゃん。 」
…………。
悪魔の高笑いが小さく響き……。その声が小さくなるのと同じ速度で身体中から粒子が舞い散り……。
存在を薄くさせていく。
…………。
爆発では無く……。霧散していく様は……。ある事実を意味した。
…………。
まだ 仄暗い洞内の少し奥の方……。明るさの中に納まらない範囲から その事実の意味が ゆっくりと姿を見せる。
…………。
「 まあ……。分身体なんだけどね 今 爆発した それ。
折角だし 教えてあげるよ 一志。
さっきの 有馬さん……。本当に ヤバいんだ。あの姿も武器も エヌ・ゼルプトの俺ボクも完全に知らない何かだ。
だからさ……。なんでかは わからないけど……。
最後の去り際に出してた 大量の 湾曲する光線 ?
アレのせいで 俺ボクは……。新しい分身体が 出せなくなってる。
つまり……。この場で 今 一志の目の前にいる 俺ボクが 本物の本体なんだよ。
今の 一志が 一生懸命戦っていたのは、俺ボクが さっき作り置きしておいた 数少ない分身体の 1体に過ぎないのさ。
ハハハ……。
種明かしと 先の希望と 目下の絶望を 闇鍋にして……。ここで フィニッシュだね。
一志も……。さよなら。 」
…………。
常人ならざる手段で 渾身の一撃を空振りにさせられたのだ。
生真面目な青年 荒井一志の 側面から 悪魔が歩みより……。異形の斧銃の銃口を向ける。
斧銃の銃口が……。高い密度のエネルギー弾を 吐き出した。
…………。
『 Hover Chaser !! Function !!
( ホバー・チェイサー !! ファンクション!! ) 』
『 Law's Function !! Pentacle !!
( ロウズ ファンクション !! ペンタクル !! ) 』
…………。
瞬間……。
即座に疾駆した 別の 二三型のレヴル・ロウが……。荒井一志を 庇い……。
高密度エネルギー弾の軌道を 小剣型武装 L,L,Eで反らさせた。
…………。
新たに乱入した 二三型が……。悪魔の前に立ちふさがる。
…………。
「 間に合った。
荒井 君……。身体も気持ちも 生きてるよね ?
上は 今度こそ 本当に 制圧した。
今は 仁科 C.E.O代理が、合一編成の一部とで 進入路 付近を封鎖しているよ。
他の何人かは ここまでの本道を 警戒中……。
君が洞内の哨戒時に 他の人員に持たせた経路の情報を辿って 僕も来れた。 」
…………。
駆け付けたのは……。
彼誰五班 第二班班長……。大代大……。
先程まで 地上で 100体にも及ぶ ダーク・コートと 交戦していた青年だ。
この時 駆け付けたのは 1人だけで……。他の人員の気配は無い。
…………。
悪魔は……。片手に握る 斧銃の 刃に指を這わせて……。ゆっくりと 語りかける。
…………。
「 大代大……。誰かと思えば……。ニンゲンの時の 僕の 先輩じゃないですか。
けど、無謀ですよ ハハハ……。
それに無粋だ……。折角 同期 水入らずで楽しんでたのに。 」
「 つれないな。
僕だって 君と実動班で 過ごした仲だろ ?
こっちとしても……。木田さん や 皆の事も有る。
今後は……。あの時 以上の人的被害は 勘弁してほしいんだ。金輪際ね。
荒井 君……。2人で 戦おう。
二三型なら……。僕らなら きっと出来る。 」
…………。
温和な青年 大代大が 悪魔を警戒したまま……。側面方向に並び立つ 生真面目な青年へと 意思を示す。
生真面目な青年 荒井一志が これに応えた。
…………。
「 大代 二班長……。救援 感謝します。
危うく……。自分も 命を捨てる所でした。自分も まだ戦います。 」
…………。
1体の悪魔は……。目の前で向かい合う 2人の レヴル・ロウを 静かに眺め……。
斧銃に這わせる指先を止める。
…………。
「 卑怯ですねぇ 2人がかりで いたいけな俺ボクに 武器を向けるなんて……。 」
…………。
2人の 二三型と……。1体の悪魔が どちらともなく武器をぶつけあい……。洞内へと戦音が反響していく。
…………。
二三型の 1人……。大代大は 小剣型武装 L,L,Eに 薄く エネルギー波を纏わせて 刺突を中心にした 格闘戦を試みる。
悪魔 レトは……。自身に向けられた攻撃を見極めているのか……。
適度に後方へ 側面方向へ飛び退いては、斧銃での 射撃と打撃と斬撃を 鮮やかに切り替えた。
…………。
荒井一志は 小銃型武装 R,R,Gでの中距離 近距離からの射撃と、二三型固有の 格闘戦専用 腕部での打撃を狙う……。
…………。
「 単体での性能差なら、そっちに軍配が上がるんだろ ?
悪魔は……。僕らの 数が増えたくらいで、狼狽えるのかい ? 」
「 ハハハ……。数が増えた内には 入らないでしょ。先輩。
俺ボク私の 実力は……。マルクト無しの 玩具に負ける訳が無いんだ。
死にかけの ブタサンが 2匹……。でしたっけ ?
ブーブー。ブーブー !!アハハハハ !! 」
「 満身創痍なのは……。自分だけじゃない……。お前も 同じだ !!レト !! 」
…………。
荒井一志が 渾身の蹴りで……。幾ばくかの時間を作り出す。
蹴りの後に、迅速なホバー滑走で距離を取り……。後方へと下がりながら……。レヴル・ロウとしての切り札を動作させた。
…………。
大代大も 頃合いを合わせて……。切り札を動作させると……。
小剣型武装 L,L,Eのナックルガードで、悪魔の斧銃 もろとも 打撃を注ぎ込む。
…………。
『 Law's Function !! Pentacle !!
( ロウズ ファンクション !! ペンタクル !! ) 』
『 Rebel Function !! Pentacle !!
( レヴル ファンクション !! ペンタクル !! ) 』
…………。
至近距離で 格闘戦を行う 大代大と……。近中距離を切り替えて戦う 荒井一志との 連携だった。
打撃の猛襲で 大きく後退した 悪魔に、荒井一志が持つ 小銃型武装 R,R,Gからの炸裂弾が 発射される。
…………。
悪魔は……。2人の連携にも 慌てる様子も無く 相対した。
…………。
「 ハハハ !!それを差し引いても 負けるわけがないんだよ。こっちは !! 」
…………。
斧銃の銃口から放たれた 数発のエネルギー弾が、 R,R,Gからの炸裂弾を 軽々と打ち消した。
単純な性能では……。完全に 悪魔の方が上手なのは比べるまでも無い。
…………。
「 それでも自分達は……。勝つ……。
二班長 !!今です !! 」
『 Rebel Function !! Pentacle !!
( レヴル ファンクション !! ペンタクル !! ) 』
…………。
二三型のレヴル・ロウが……。小銃型武装によって再三での連続で 炸裂弾を撃ちこむ。
…………。
荒井一志から放たれた 炸裂弾と……。大代大も頃合いを合わせて……。二三型での切り札を動作させた。
…………。
「 よし…… !!実動班の……。底力だ !! 」
『 Ally,s Function !!
( アーリィズ ファンクション !! ) 』
『 Babel Chariot Stupid !! Pentacle !!
( バベル チャリオット ストゥピッド !! ペンタクル !! ) 』
…………。
悪魔の斧銃が 必ず これの相殺に動かざるを得ない……。そんな状況下で……。
この場で、もう 1人の二三型が……。固有の攻撃用 systemを動作させたのだ。
…………。
……。
二三型の片腕が……。神秘的な輝きを発する……。
…………。
丸七型にも採用された 独自の エネルギー増幅機能からの 恩恵を最大限に増幅させ……。
頑強で堅牢な 塔のような腕部に これが流れ込み……。
戦馬車の如く力強い 踏破で拳を 悪魔に向かわせた。
…………。
大代大が繰り出す 一撃である。
…………。
悪魔は……。荒井一志からの 炸裂弾に対処し……。背面から延びる 樹木型の脚を用いて 大代大に対処した。
6本中……。4本の先端を集約して 塔型の拳の正面に ぶつけ……。
残りの 2本を地面に突き刺し 身体の重心を 盤石に支える。
…………。
「 一志が 炸裂弾を……。目くらましに !?
……や、やられる。
……なんてね。
本命は 大代先輩の 腕部武装……。そんなの わかりきってますよね。
だって瞬間的……。局所的に確実性の高い 殺傷能力は 実体の有る武装の方が上なんだから。
なら……。こっちも ハナから それを見越した動きをしますよ。アハハハハ !!
まず 大代先輩には 吹っ飛んで貰って……。フフフ……。 」
…………。
大代大の二三型の 塔型腕部の拳の前方には……。先程の 荒井一志の時ど同様に 極まったエネルギー波が解き放たれる。
悪魔は……。これを打ち消し……。更には 悠々と上回ろうとしているのか……。
背面から延びる樹木型の脚の 4本の先から 強力無比な熱波を 照射する。
…………。
挟撃を狙う 2人の青年に……。悪魔が強大な力で 反撃を行ったのだ。
…………。
しかし……。小さく笑い……。自身が所持する ある武器を……。片方の二三型が もう 1人の青年に向けて放り投げた。
…………。
「 やはりな……。荒井 君……。頼んだぞ !! 」
「 何…… !?こっちも 陽動を…… ? 」
「 よそ見をするなよ ?レト……。僕の方はまだまだ 余力がある !
3人の アルバチャスが 戦いの中で磨き上げた膨大なパワーは……。仲間 全ての力……。
Ally,s Function は……。まだまだ お前に目を離させないぞ !!こっちを見てろ !!
( アーリィズ ファンクション ) 」
…………。
悪魔が……。動揺と焦りの色を映す。
…………。
大代大が……。悪魔を前にして奮起して……。拳を更に前の方へと押し込んだ。
…………。
『 Hover Chaser !! Function !!
( ホバー・チェイサー !! ファンクション!! ) 』
…………。
ホバー滑走で疾駆する 別の 二三型が……。投げ渡された 小剣型武装 L,L,Eを 掴みとり……。
悪魔に接近する合間で……。自身の身体を護る意味合いも兼ねた レヴル・ロウの型式を ダウングレードさせる。
…………。
……。
荒井一志は……。度重なる 実動試験で知っていたのだ。
…………。
丸七型も……。二三型にしても……。理論上ではあるが……。
通常の レヴル・ロウには無い各種機能に割り当てられた分の アルカナを、元来の武装デバイスのみに 注ぎ込められれば……。
極々 瞬間的には……。破格の 攻撃力を実現できるかもしれない事を。
…………。
……。
もちろん……。これは……。使用者の安全も考慮されない上に……。
丸七型や 二三型として外装部に展開した方が 総合的な 性能の向上も見込めて安定性が高い為……。採用はされていない。
…………。
だが……。起死回生が求められる この瞬間では……。荒井一志が 深く考えるまでも無いのだ。
…………。
二三型を 稼働させられる程の 無理を重ねた調整の systemで……。2つの武装デバイスに 膨大なアルカナが充填される。
…………。
Ally,s Function を動作させるのと 同等か……。それ以上に……。攻撃へと特化した アルカナが内包されていた。
( アーリィズ ファンクション )
…………。
荒井一志が……。通常型の レヴル・ロウの姿で 疾駆し……。小剣型武装 L,L,Eを 振るう。
…………。
『 Law's Function !! Pentacle !!
( ロウズ ファンクション !! ペンタクル !! ) 』
「 ………………レト !!!! 」
…………。
ホバー滑走から、裏拳で殴り上げる挙動にも似た……。順手で握られた 小剣での切り上げが 悪魔を深く切り付ける。
悪魔の斧銃での対処を 潜り抜けた……。胸部から肩に抜けるような 迅速な一閃だ。
…………。
大代大からの 渾身の一打への対処で……。悪魔が これを 防ぐには大きく遅れたらしい。
…………。
荒井一志は……。更に次の行動に出る。
…………。
小剣とは反対側の手に握られた 小銃型武装 R,R,Gの銃口を……。悪魔の胸部にあてがい……。
これまでに 力を高めた……。密度の濃い エネルギー弾を 炸裂弾として至近距離から放った。
…………。
『 Rebel Function !! Pentacle !!
( レヴル ファンクション !! ペンタクル !! ) 』
…………。
この時の射撃を合図に……。
只の レヴル・ロウ 荒井一志と……。二三型の レヴル・ロウ 大代大が 速やかに後方へと 退避する。
…………。
悪魔は……。爆風に飲まれ……。
熱の中で 身体を崩れさせていった。
…………。
「 ……こんな。……馬鹿な !?
……フフフ。アハハハハ…… !!!!
やるじゃないか……。2人とも……。………………グゥゥァ ! 」
…………。
石畳が続く 洞内の空間で……。レトの高笑いが こだまする。
…………。
今日この日の 戦いに備えて来て……。
試作型の範疇から出ていない新型 code-β-の適用と、武装デバイスの内蔵要領の拡張を施してもらって……。
本当に 正解だった。
…………。
2人の青年の 知らない場所でも 至る所で紛れていた 悪魔の分身体が 完全に消滅していく。
………………。
…………。
……。
~深淵の中で~
ある場所では 3人の青年達が……。隔絶された光の障壁の中で 戦い続ける。
日樹田地底湖が広がる洞の最深部での出来事だ。
…………。
1体の闇の化身と……。2体の闇の使途が 荒ぶった。
…………。
大きな戦いの音は成り続け……。激しさを主張する。
光の障壁は この中で戦う 1人の青年によるものだが……。つい先ほどのように 激戦の音が幾度 鳴っても 障壁は薄れない。
…………。
障壁をもってして この空間で 戦いの場を限定している 青年……。丹内空護は自身が扱う 護る為の力を研ぎ澄ます。
…………。
『 Extend !! Pilum Hasta !!
( エクステンド !! ピルム・ハスタ !! ) 』
…………。
漆黒の鎧の戦士……。アンチエースムーンが……。
漆黒の銃の 銃口から 光の槍とも思しき 鋭い 弾丸を放つ。
…………。
Not exist gun は……。青色の使途に向けて 貫通力の高い弾丸を吐き出した。
( ノット・イグジストガン )
…………。
……。
少し離れた位置では 別の青年が……。赤色の使途に大剣を振るう。
…………。
雄々しい獅子の意匠を持った戦士……。ジャスティフォース……。天瀬十一が……。
大剣から白群色の雷鳴を 発して……。大ぶりな力強い 一振りを繰り出されたのだ。
…………。
『 Extend !! Force of Bastard !!
( エクステンド !! フォース オブ バスタード !! ) 』
…………。
身の丈 程の大剣での 唐竹割が、赤い使途に 振り下ろされる。
Evil Buster は……。重々しい剣圧と 白群色の雷を 赤い使途……。もとい 闇の太陽に浴びせた。
( エビル・バスター )
…………。
……。
2人の青年が 相対する 相手を入れ替えて……。優位に立ちまわってる傍ら……。
この機を 作り出した きっかけの 青年が……。
ニューヒキダでも、変則的な要因に繋がる 1人が……。闇の化身と 肉薄した戦いを 続ける。
…………。
青年と 激しく ぶつかり合う 存在もまた……。変則的な 1つの結果だったが……。どちらも似たようで 真逆の印象を はらんでいた。
…………。
大きな翼を広げる 闇の化身……。
The dark ace は……。片手に逆手で構えた 剣鉈と、翼から 放つ暗色の光の弾丸をもってして その青年に 攻撃を仕掛けている。
( ジ・ダーク・エース )
…………。
蒼色の 愚者は……。
code-000- が 意味する 無限光の 如く……。神秘的な杖から無数の光線を放った。
( アインソフオール )
この威力も勢いも……。闇の化身が繰り出す 無数の暗い光の弾丸にも 負けず劣らない。
…………。
接近戦では 神秘的な杖での打撃か……。
その杖から変化する 蒼色の剣での 刺突や 横薙ぎを 適時に使い分けて……。攻めの手を見極めては 切り替えている。
青年 有馬要人は……。一歩も 引くそぶりはない。
…………。
3人の青年達の戦いは……。広く奥行のある 洞の中でも……。アルカナの光が ぼんやりと幽かな光で 照らした。
…………。
蒼色の愚者の 近隣にも 多数の光の粒子が舞い上がっているのか……。先の流れを 心待ちにしているようだ。
…………。
……。
青年 有馬要人は……。既に この姿での戦い方に 馴染み始めていたのか……。巧みに使いこなし……。有利な状況を築き上げていく。
…………。
ジャスティフォースには及ばなくとも 雷の力が 備わっているのか……。
飛び道具には 不十分な 範囲の コレを 身体能力の向上と、相手の動きを読むための レーダー探知機として周囲にも薄く展開し……。
…………。
アンチエースムーンには届かなくとも 障壁の操作を 行える為……。
握り拳 程の大きさの 障壁で作られた 塊を 複数 生成しては……。
闇の化身の飛翔範囲の 妨害と、自身が それに近づく為の足場として 利用する。
…………。
杖に立ち乗りして飛翔しただけでは 闇の化身のように、小回りの利いた自由度の高い 空中戦は出来ないが……。
蒼色の愚者の 姿だからこそ出来る 方法で……。立体的な立ち回りの 戦いを実現させた。
…………。
……。
3人の 青年達は 奮起して……。決定打を作り出そうと……。流れを掴みとろうと……。それぞれの戦いで手を伸ばす。
…………。
……。
そんな中……。
赤色の使途……。闇の太陽が 広い範囲に爆炎を作り出し……。
青色の使途……。闇の番人が 暗く深い ガス状の 光を漂わせる。
…………。
洞内は 強く揺れ……。爆炎で 落下し始める鍾乳石の幾つかは ガス状の光に溶けていく。
…………。
……。
………………。
…………。
……。
頭部に 獅子の意匠を持つ……。ジャスティフォースは……。爆炎の中で おびただしい 熱の極致にさらされる。
…………。
見渡す限りの広い範囲で 爆炎が留まり……。炎の牢獄 のような状況下だ。
…………。
一瞬でも systemを 強制解除させてしまえば……。人体にとっては致命的な 50%以上の火傷は 免れられないだろう。
闇の太陽が……。剣鉈の先端から 火球を放ち……。周囲の空気が揺れた。
…………。
「 なんて 温度だ……。
洞内の酸素を 休息に燃焼させるにしろ……。崩落の原因になるにしろ……。長期化はさせられない。 」
『 Libra Thunder !! Function !!
( リブラ サンダー !! ファンクション !! ) 』
…………。
天瀬十一が……。ジャスティフォースの姿でも 熱を感じる世界で……。雷鳴を轟かせて 大剣を握る。
…………。
「 太陽の役割は そうじゃない……。少なくとも……。忌み嫌われる時があっても……。
豊かな恵みの 一端を……。
希望の きっかけくらいには 成ってくれないと ダメなんだ。 」
『 Hover Chaser Function !!
( ホバー・チェイサー ファンクション !! ) 』
…………。
今さっき……。天瀬十一が放った 一筋の 強力な雷は……。日樹田地底湖の水上に命中し……。水蒸気が辺りに立ち込めた。
…………。
水蒸気と 爆炎が 入り乱れる景色の中……。ジャスティフォースが ホバー滑走で疾駆する。
赤色の使途から放たれる 炎熱の塊を……。ホバー機能で 回避し……。
…………。
切り札へと手を伸ばす。
…………。
『 Extend !! Thunder Roar !!
( エクステンド !! サンダー ロア !! ) 』
…………。
獄炎の爆風を巻き起こす 闇の太陽を……。雷鳴の咆哮が 包み込み……。その動きを鈍らせた。
天瀬十一が……。更なる 一手として 大剣に白群色の 雷を帯びさせる。
…………。
『 Extend !! Force of Bastard !!
( エクステンド !! フォース オブ バスタード !! ) 』
「 父さんと 神地さん は……。
2人の やり方こそ異なってたけど、そうだった。破壊だけの炎は 只の災害だ。 」
…………。
闇の太陽が 爆散し……。周囲の熱は 少しずつ勢いを弱めていく……。
正義と剛克の戦士が 今を 紡ぐ きっかけの 1つを静かに口に呟いた。
…………。
…………。
……。
………………。
…………。
……。
漆黒の鎧の戦士……。アンチエースムーンが……。辺りに立ち込める ガス状の 暗色に目をやる。
ガス状の光は 全てを蝕み溶かす 暗雲のように 地形を抉っていく。
…………。
幾層にも重なる それは、徐々に影響範囲を増やし……。世界を飲み込むかのうようだ。
…………。
これ以上の影響力を残せば……。あらゆるものが 削り取られてしまうだろう。
闇の番人が……。剣鉈の先端からも ガス状に膨れ上がる光弾を放ち……。闇色の渦が 広がっていく。
…………。
「 アレは もう、エヌ・ゼルプトですら 無いのかもしれないな……。
さしずめ 只の破壊の権化か……。
この街は この世界は やらせん !! 」
『 Extend !! Uni Pilum Verriculum !!
( エクステンド !! ユニ・ピルム・ヴェリクルム !! ) 』
…………。
丹内空護は……。アンチエースムーンから 幽かに発される白色の光が照らす、静かで暗い渦の中……。銃の引き金を握った。
…………。
「 一切の光も 見通せない世界ならば……。なんの法も 番人も 導き手すらも不要なのかもしれんが……。
なんの葛藤も無いのなら……。
生きているとは言えんだろうな。 」
『 Extend !! La Garita Quadriga !!
( エクステンド !! ラ・ガリータ・クアドリカ !! ) 』
…………。
つい先ほどの 射撃で……。一部の区域を爆風で連鎖的に吹き飛ばすと……。その経路を辿って 黒馬型戦車が 飛翔する。
…………。
闇色で妖しさを放つガス状の光が 渦巻く地表を飛び越えて……。
青色の使途が放つ ガス状の塊を……。立体的な軌道で避けて……。アンチエースムーンが 進んで行った。
…………。
目標の真上……。頭上で 銃の形状を元に戻し……。反撃の一手を動作させる。
…………。
『 Extend !! Pilum Hasta !!
( エクステンド !! ピルム・ハスタ !! ) 』
…………。
地表を埋めつくし始める闇色のガスが一面に広がる景色と……。それを作り出す根源を見下ろして……。
丹内空護が……。自由落下する 短い時間での 狙撃を命中させる。
…………。
貫通力が高められた 短槍のような鋭い一発は……。
青色の使途の脳天と胴体を 正中線と限りなく並行して、真っ直ぐに貫いた。
…………。
「 ドゥークラの亡霊は……。俺が消す。
番人か……。名前だけだが 大きく出たもんだ。 」
…………。
闇の番人が 爆散し……。周囲の暗雲にも似たガス状の光は 霧散していく……。
漆黒の闇でも輝く月が 過去を 背負い 決意の 1つを静かに抱く。
…………。
……。
………………。
…………。
……。
日樹田地底湖の周辺で……。2体の闇の怪人が消え去った。
闇の化身は……。一切の動揺も見せず……。青年との戦いの勢いを崩さない。
翼からは……。光弾を放ち……。片手の剣鉈では……。容易く 蒼色の愚者を吹き飛ばす。
…………。
洞内の壁面に向けて 有馬要人が 吹き飛ばされるが……。空を飛翔する 黒馬型戦車が しっかりと 受け止めた。
地上からは 雷鳴が轟き……。天秤の支柱の如く 一直線に伸びる 鋭い反撃が、闇の化身へと命中する。
…………。
……。
アンチエースムーン 丹内空護が……。
ジャスティフォース 天瀬十一が……。
有馬要人の 戦いに駆け付けた……。まるで先程の 青年が 2人に救援したのと 同じように 肩を並べたのだ。
…………。
「 有馬 !待たせたな !
俺が近くまで 連れていく……。終わらせるぞ。 」
「 有馬 君 !俺と空護が 出来る限りの援護をする。
きっと 大丈夫だ !未知の systemでも 臆せず扱い こなせる君なら ! 」
…………。
洞内では 相変わらず あらゆる光の粒子が 舞い散っていた。
…………。
「 空護さん……。十一さん……。ありがとうございます。
実は 俺も後少しで……。倒せそうな気がしてるんです。任せてください !!
このまま 今を ひっくり返してきます !! 」
…………。
黒馬型戦車が 蒼色の愚者を乗せて、闇の化身へと飛翔していく。
…………。
地上から鳴り響く 雷鳴が リヒテンベルク図形を作っては、闇の化身の反撃を 妨害する。
…………。
神秘的な愚者は……。蒼色の杖の 柄頭からの直進力と 攻撃力の高い 光線を放った。
立ち撃ちの姿勢を……。黒馬型戦車に立ち乗りして作り出して、接近するまでの牽制を鋭く狙う。
…………。
青年の近場にも 微細なアルカナの光の粒が漂った。
…………。
雷鳴での援護が届かない距離まで 闇の化身が後退するが……。翼の片方を 愚者からの狙撃が捉える。
僅かに よろめいた 闇の化身が 高度を落として、地底湖の水面に 距離を近くさせると……。
…………。
有馬要人が……。蒼色の剣を振り下ろそうとして……。黒馬型戦車から 飛び出した。
…………。
妖しく……。一塊の アルカナの光が……。地底湖 上方を漂う。
…………。
闇の化身が 迎撃の 姿勢を取っているのか……。
胸部の中心に……。暗い光を集め……。あらゆるものを飲み込む引力の闇を 作り出そうとしていた。
それでも……。僅かに……。有馬要人が握る剣が 振り下ろされる方が 速い……。
誰の目からも そう見えていたのだ。
…………。
その声が聞こえ……。事が及ぶまでは……。
…………。
嫌な高笑いが聞こえた。
…………。
「 ハハハ……。こんな局面に立ちあえるなんて……。素敵ですね ?
けど もう 一歩 素敵になってくださいよ。
ねえ 有馬さん ? 」
…………。
蒼色の愚者の背後に 突如 現れたのは……。
光の粒子に紛れて 光る羽虫から形を変えた、悪魔 レトだったのだ。
…………。
悪魔が……。背後から青年を羽交い絞めにして……。
闇の化身が 作り出した 引力を生み出す闇の塊が、青年を飲み込んでしまう。
…………。
有馬要人の姿は……。跡形もない……。
…………。
悪魔の方は……。それだけを 終えると 只の分身体らしく……。身体を霧散させる。
…………。
「 最高の 瞬間でしたね。ハハハ……。
俺ボク私も痛感してます。
けど……。この先は見れそうにないですね。本体が 調度 今 負けちゃうなんて……。
擬態元が 弱すぎたのかな……。フフフ……。我ながら 情けない……。
さようなら皆さん。ハハハハハ…… !!!!!
また 合えると良いですね 俺ボク私と…… !! 」
…………。
青年と 悪魔が 完全に消え去るまでの時間は 数秒足らずで……。
黒馬型戦車で飛翔していた 丹内空護からしても……。どうにかできるような 間合いでも時間でも無かった。
…………。
闇の化身は……。青年 諸共……。地のマルクトを……。神秘的な剣を 取り込んだらしく……。
これまでの戦いでの 消耗した分を 帳消しにしたかのようだ。
…………。
「 我は……。
The dark ace……。
( ジ・ダーク・エース )
世界 唯一の 絶対なる闇……。
大いなる闇は……。底亡き 深淵へと 全てを誘い 全てから意味を奪うだろう。
全てに……。光も 再生も 及ばない 完全なる 不完全を……。
我のみが……。絶対の……。世界を……。
闇の太陽も……。闇の番人も……。闇の花さえも……。時が過ぎれば より強く 作り直せるだろう。
世界に 再生など ありはしない。破壊が……。輪廻の及ばない 破滅が あるのみ……。
真なる闇は止められぬのだ……。貴様らの持つ マルクトの力も 今より我が 飲み込もう。 」
…………。
闇の化身が 放つ プレッシャーは……。益々 強く……。その言葉の 説得力をも 裏打ちさせる。
丹内空護と 天瀬十一は……。意を決して 反撃を始めた。
………………。
…………。
……。
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