- 42話 -
終わりか 始まりか
- 前 回
- 次 回
目次
~始まりを知る 2人~
協定世界時 時差……。UTC+10……。
日本国との時差……。JST+1……。
某国 ある一家の自宅。
…………。
壮年の男が 家の外から 電話越しに 呼びかける。
敷地内に停車させている 車は、エンジンは切られていても 万全の状態だ。
いつ出発しても 恥ずかしくないよう 朝日に負けない光沢を放っては、艶のある輝きの中に 青空を映す。
…………。
「 有馬 先生 !!遅れますよ !?まだですか ? 」
「 待ってくれ ステイサム。今行くよ。 」
…………。
光沢のある車を用意した男からの呼びかけに……。その家の主が応えた。
寝室の 大きなベッドの上で……。返事を済ませて通話を切る。
…………。
家の主は……。まだ 下着以外の衣類を身に着けておらず……。
自身の片方の腕の上で 寄り添う人物に朝の挨拶を行った。
…………。
「 すまない理歩……。僕は もう……。旅立たねばならないようだ。
ステイサムが呼んでいる。……時間だ。 」
「 ……そんな。酷いわ 無鹿。……私を置き去りにするの ?
私達を置いて旅立った あの子のように……。 」
「 HAHA……。そんな事は無いよ。僕も要人も……。必ず君の元に戻るさ。
僕らは家族じゃあないか。家族 3人 血の繋がりは無くても心が帰る場所は 1つだ。
そう 君の元だよ。理歩。 」
…………。
ベッドの脇には 幾つかの 写真立てが 並べられており……。
如何にも 特別そうな 1つには、ある青年と……。今現在 ベッドの上にいる 1組の男女も映っていた。
…………。
「 ……そうね。いつも大好きよ無鹿。
でも……。これを見て。昨日の 日本のニューヒキダの様子……。
あの子が産まれた場所。 」
「 酷いな。……まるで過去の大災害同然だ。 」
「 あの子……。大丈夫かしら。 」
…………。
ベッドの上で 女性の方が タブレット越しに 最近のニュースを 引っ張り出す。
ニュースには、この国と異なる 場所……。日本国の 地方都市での様子が掲載されていた。
同件を扱った 記事からは どれを読んでも悲惨な状況が汲み取れる。
…………。
「 きっと、大丈夫さ。日本の どこに行ってるのかは知らないが……。
要人には アレを持たせてある。
僕と君を巡り合わせてくれた 運命の御守りをね。 」
「 ええ……。そうだったわね。幸運の御守りが あの子を護ってくれる。
それに あの子 とても強く育ったもの。
……私達の所に来たばかりの頃は 酷く怯えて、名前も忘れてしまっていたのに。
今は、自分にできる事を探す為に 世界を見て回りたいだなんて言って 飛び出していった。 」
…………。
1組の男女は……。この場にいない 家族について話し始めるが……。
瞳の奥の輝きは、この日の暁のようで 曇りはしない。
…………。
「 要人は きっと 何かを見つけて その為に身をささげるよ。
誰かの為に……。困った人の為に……。自分自身の人生においても要でありますように。
彼が思い出せない名前の代わりに、僕らが新しく送った願いにも……。
進んで行くんじゃないかな。
長い旅を何処までも……。きっと進んで行ける。 」
…………。
窓から入り込む 朝の光に 目を細めて 2人は ゆっくりと抱擁をする。
…………。
「 血の繋がりなんてなくても……。私達の子供ですものね。
……施設に来たばかりの頃は あまりにも いたたまれくて、養子として迎え入れてしまった。
自分自身の公私混同を悩んだ事もあったけど……。 」
「 理歩……。その罪は 僕も一緒に背負っている十字架だ。
だから 2人だけの永遠の秘密だよ。
僕ら 夫婦だって 血の繋がりは無いけど こんなに わかりあえるんだ。
これからもそれは 変わらないよ。
どんな場所にも 君と一緒に歩いていくし……。どんな景色も君と見たい。
そう 例えば……。
始めて ストーリー・ブリッジの ライトアップを見た時のようにね。
あの日の夜もとても 特別だった。 」
「 貴方の そういう所……。大好きよ。
ねえ無鹿……。
私も……。そろそろ貴方の腕の中から 旅立たなくちゃ……。子供たちが待ってる。 」
…………。
男の方は 目じりに出来た 年齢による溝を深くして ほほ笑んだ。
朝方の 少し冷えた 空気は 2人にとって なんの寒さも感じさせない。
肌着も 身に着けず……。ベッドの上で 柔らかそうな シーツだけで 身を包んで……。互いの身体を離さない。
…………。
「 理歩……。嗚呼 !!僕の愛しい理歩 !!
今夜また会おう……。僕は……。今日も仕事に行ってくるよ。
そして、帰りがけには寄付をするんだ。今日の寄付はニューヒキダに……。 」
「 良い心がけね無鹿。私も 少しだけ旅をしてくるわね。
今日も 子供たちの成長を見守らなくちゃ !全力でね……。
また、会いましょう。 」
…………。
何度も行った 抱擁の中でも 特に 時間を掛けて……。2人は身を寄せる。
…………。
「 嗚呼。そうだね 理歩。
今日 1日も……。明日も明後日も……。 」
「 私達 家族と 世界が幸せでありますように……。 」
「 行ってきますと……。 」
「 行ってらっしゃい。 」
…………。
男の方は 直ぐに 顔を洗い……。歯を磨き……。
仕事用の身ぎれいな洋服を着用し……。自宅を後にした。
この日も 朗らかな表情は 変わらない。こなれた 連日のルーティンなのである。
…………。
「 お待たせ ステイサム !僕は 今日も最高潮だ !
スケジュールを教えてくれ。 」
…………。
玄関先で 待っていた人物に声をかけて……。
青空を 艶の中に映し込む 綺麗な車に乗り込んだ。
…………。
「 先生……。お熱いですね。
前みたいに ハネムーン症候群には成らないでくださいね。
今日のスケジュールとしては……。講演会が予定されていますので……。
まずは、本番前 最終の打ち合わせを……。 」
「 大丈夫さ ステイサム !
サタデーナイト症候群には気を付けるよ。僕の右腕がね !HAHAHA !!
けど……。なるほど スピーチか……。
今日も MUROKUが Lock On さ !!
さあ 行こう !!稼ぐぞ ステイサム !! 」
…………。
有馬無鹿(アリマ ムロク)……。
青年 有馬要人(アリマ カナト)の父で有り……。有馬理歩(アリマ リホ)とは 夫婦関係に該当する人物だ。
…………。
この日も……。
朗らかそうな男の 目じりのシワに 朝日で影が出来る。
………………。
…………。
……。
~完全には未完成~
特務棟の ある一室……。
アルバチャス等の 調整や開発を行う A.B.C.S開発課では 2人の人物が中心になって、ある作業の最終調整が進む。
…………。
レヴル・ロウ……。
アルバチャスの運用データを 参考に 作られた量産型であり……。
事前に マルクトから抽出した エネルギーを元にして、半永久的に稼働可能な特徴をもつ。
…………。
その為……。エネルギー残量の回復においては、マルクトを 起動時にも直接 使用する code-0-等の 従来型よりも弱く……。
これに伴って 稼働時の単純な性能も アルバチャスよりは 控えめな 推移でまとまっている。
加えて……。
稼働には専用の武装型デバイスの 起動が必須で……。携行武装の偏りから 戦闘処理における 行動の幅も 限定されやすい。
…………。
これに関しては、動作の幅の 限定が 集団戦闘での、行動指針の単純化と 相乗効果を期待できる為……。
完全な 短所とは言い切れないが……。最近は 激しさの増す戦闘処理での 戦力不足が 目立つようになっていた。
…………。
……。
レヴル・ロウの 強化型試作派生としては……。現在は 3通りが 存在しており……。
…………。
丸七型( マルナナガタ )は……。
code-0-の 高いエネルギー充填能力と、code-7-と類似の 追加装甲による耐久性の向上の両立を目指した型式だ。
…………。
一六型( ヒトロクガタ )は……。
天瀬十一(アマセ トオイチ)が、自身の アルバチャス code-16-の代替として使用できるよう、耐久性と通信性能の向上だけを追及。
水のマルクトの使用が前提となっており、量産型としての汎用化には不向きとなっている。
…………。
一六型改( ヒトロクガタ アラタメ )もしくは……。
一六型 丁 plus( ヒトロクガタ テイ・プラス )……。
こちらは 名前の通り 一六型の 1つであるが、code-16-と類似の格闘戦を想定した 補助アームの装備を可能にしている。
しかし、正規の一六型に 導入されなかった要因にも成った 短所は残っており……。
補助アームの影響で エネルギー効率は 良好とは言えず 継続戦闘時間は 短い。
これを 限定的な時期に使用した 仁科十希子(ニシナ トキコ)は……。補助アームの小型化で 負担軽減の対策とした。
…………。
……。
レヴル・ロウの 強化案については……。現段階では 飛躍的な形式は 今も導入されておらず……。
最も実用に 近いのが 丸七型なのである。
…………。
とはいえ……。丸七型による 性能の向上幅では、昨今の戦闘処理では 物足りない部分も少なくない。
…………。
「 仁科 C.E.O代理……。すっかり こっちの仕事に ハマってますね。
W.E.Bでは 技術職だったとしても 出向先のこちらでは C.E.O代理ですし……。
こんな事 言うのも失礼かもしれませんが……。凄く助かってます。本当に ありがとうございます。 」
「 口よりも 手を動かしなさい。天瀬 君。
二三型(フタサンガタ)の 完成が 速まる程……。不測の事態への 大きな 助けになる。
逆にもし……。完成後に 一切 使用される事のない状況になったとしても……。
いつでも使える状態にしておく メリットは計り知れないでしょう ?
私から提案したとはいえ……。あくまでも手伝い。
大きな 1歩を踏み出すのは 問題に直面した人々でなくてはならない。 」
…………。
だからこそ……。
連日の A.B.C.S開発課では 2人の人物が中心になって、ある作業の最終調整が進んでいく。
…………。
「 理解しています。
だから俺は……。W.E.Bにも 仁科さん にも感謝しているんです。
最初は 申し訳ないですが……。W.E.Bからの派遣された 多くの技術者さん 達にも 内心では不信感が強かった。
たぶん それは 俺だけじゃなかったでしょう。本当にすみませんでした。
けど今は違います……。
こうして 2人にしか聞こえない声量で、私語を挟みながら構築も出来る。
手だって ずっと動かしてますよ ?
俺以外の皆も 自然体で仕事が出来ている。
もう少しで……。なんとか 一応の完成はしますからね。……けど、まだ α版だ。
不具合だらけの αから……。多少改善された βを経て……。本当の完成ですもんね。
まずは code-α-(コード・アルファ)……。
大きな 1歩の中の 1/3を……。0.3歩を 俺も急ぎたい。……そう思ってます。
World-Exchange's-Bay……。
(ワールド・エクスチェンジズ・ベイ)
世界を交流させる港が 日樹田にとって 開かれた港である事を嬉しく思います。 」
「 自分の 産まれた場所を 助けられるなら、私も嬉しいわ。
その モジュールに手を付けたら 最後かしら ? 」
「 ……任せてください。
さっき触ってた プロトコルの 最終確認 お願いしても良いですか ? 」
「 それなら、終わらせて あります。
良いと思う。 」
…………。
目指すのは……。3つの良さを 1つの強さに……。
code-0-……。code-7-……。code-16-……。3種類の アルバチャスを参考にした 丸七型を超える レヴル・ロウの実現である。
…………。
二三型( フタサンガタ )……。
それが この時の 天瀬十一と 仁科十希子が 協力して 調整を続ける レヴル・ロウの 型式の名称だった。
型式の名前は……。アルバチャスの codeを 合算した合計なのだが……。
偶然にも タロットカードの 大アルカナの合計数よりも 1つ大きい数字となり……。ある種の願掛けにも成っている。
…………。
大アルカナを 思わせる怪人 エヌ・ゼルプトにも 負けないように……。
怪人の脅威に見舞われる この街が 更に 1歩踏み出せるように……。
…………。
「 これで……。code-α- 一応の完成ですね。
次は コレを元に 不具合を潰して code-β-に……。完全な 二三型までは これからって感じでしょうか。
仁科さん ここらで 少し休憩しましょう。
code-α-は ツールに移送したので、安全管理を済ませてから実動試験での データ収集が必要になります。
今回は、実動の前に致命的な不具合を洗い出してからなので 時間かかりそうですね……。 」
…………。
白衣の青年 天瀬十一も、C.E.O代理 仁科十希子も……。何度も これまでの各種 参考データや 試験結果に目を通し……。
持ちうる 知識と技術で 二三型の 完成を追い求めた。
…………。
沢山の戦いの合間に 少しずつ……。少しずつ……。特務全体で 進めた集大成に向かって。
…………。
「 今はせめて……。C.E.O代理を つけなさい 天瀬 君。
これは…… ?
ちょっとまって……。エイオスの反応が……。N 地区に複数。
ドゥークラに レト……。それから イェルクス いえ 真紅の戦士 ?
でも なんか少し……。
これまでの反応とは 微妙に異なるし 観測用ドローンや 定点カメラの映像も かなり荒い。
ピップコートも かなりの数ね。概算でも測定できないなんて……。 」
「 俺も行ってきます。
到着し次第……。-JFC-から直接情報を 送ります。たぶん その方が 情報の精度は高い。
あの辺は今、警邏中(けいら ちゅう)の 有馬 君と 大代さん もいますが……。
油断できる相手では ありません。
すみませんが、特務からの 情報統制 また、お任せします ! 」
「 大丈夫よ。
ニューヒキダ全域の 避難誘導と 情報管理は 私が引き受けます。
第四班と 丹内総指揮長にも私から 指示を出しておくわね。
今回は 普段よりも エイオスの様子がおかしい……。気を付けて……。何か あるかも……。 」
…………。
ショートヘアの似合う女性 仁科十希子が 耳元に髪の毛を かけなおして表情を 引き締めた。
白衣の青年 天瀬十一も 真剣そうな眼差しで応答し走りだす。
…………。
咄嗟に動き出したせいか……。
白衣の青年の 懐(ふところ)には、今できたばかりの code-α-のデータが 移されたメモリツールが 入っていた。
………………。
…………。
……。
~不滅の不調和~
この日の 警報は……。
この日の 警報の要因達は……。後に ニューヒキダ全体に 最も大きな影響を及ぼす。
…………。
『 緊急速報です。 N-21 地区にエイオスが出現しました。近くに居る方は直ちに避難してください。
緊急速報です。 N-21 地区にエイオスが出現しました。近くに居る方は直ちに避難してください。
現在、APCの実動班が対処に向かっております。大変危険ですので…… 』
…………。
街全体の 外周部に該当する 郊外の中でも……。北西の N 地区は 未だに 戦いの跡が残っている地域だ。
皇帝の エヌ・ゼルプト……。マーへレスの進行から始まり……。
…………。
赤眼の巨怪……。ポメグラネイトとの 幾度かに及ぶ 交戦や、太陽のエヌ・ゼルプト アポロダイスとの死闘。
多くの戦いが 繰り返された 地区の復興は すっかり 足並みが乱れてしまい……。
…………。
整地されただけの 場所も多く……。最初の頃に用意された献花台だけが 定期的に新しく されていた。
瓦礫の 片付けが進んだ程度で 集積されている仮の置き場さえも 未だに残る。
…………。
そんな殺風景な 景色の中に……。複数の驚異の化身が 出現したのだ。
…………。
驚異の数は計り知れないが……。
怪人エイオスに対処を行おうと……。1人の アルバチャスと 1人の レヴル・ロウが 即座に駆け付ける。
ホバー滑走機能で 颯爽と 疾駆し……。怪人達に挑んだ。
…………。
……。
愚者のアルバチャス……。code-0-DAAT……。
彼誰五班 第五班 班長……。青年 有馬要人は……。魔導杖型の武装 B.A.Wandを 握り……。火球と打撃を 主軸にして飛び込んでいく。
…………。
レヴル・ロウ……。丸七型……。
彼誰五班 第二班 班長……。温和な青年 大代大……。片手には 小剣型武装デバイス L,L,Eが 逆手で しっかりと保持され……。
すれ違いざまには、ペイジ型の ピップコートを 切り付け……。爆散させていった。
…………。
……。
愚者のアルバチャスは ホバー滑走で走り抜ける 途中で 実体の伴う 分身を 10体以上 出現させて……。
横一列に 広い間隔で 並走させると、交戦範囲を 増大させる。
…………。
怪人の殆どは ピップコート種であるが……。歩兵の役割を持つ ペイジ型が 最も多く……。
次点で多いのが 飛翔能力を持つ ナイト型のようだった。
キング型や クイーン型も 全くいないではないが……。
その数は少なく……。今回の怪人の中でなら、危険度の高さは 別の存在が目立つ。
…………。
……。
エヌ・ゼルプトである。
ピップコート種を先導する存在として見られる 最も強力な怪人達が 3体も 存在するのだ。
…………。
……。
黒翼の怪人……。審判のエヌ・ゼルプトだと 思われる存在……。ドゥークラ……。
緑翼の石鎧……。世界のエヌ・ゼルプトと 予測される極彩色の輝きを放つ……。イェルクス……。
不敵な 悪魔のエヌ・ゼルプト……。レト……。
…………。
3体は ニューヒキダの中心地から 郊外側の 奥の方に それぞれが位置取りをしているが……。どうも様子が変だった。
まるで……。3つ巴の乱戦を行っているようなのだ。
…………。
更に……。黒翼の怪人 ドゥークラは 全身の亀裂から アルカナの光を 零し続け……。
緑翼の石鎧 イェルクスも、真紅の戦士を連想させる 赤い霧と、マクアウィトルに酷似した木剣を 振るっている。
両者は激しく争っているが……。悪魔 レトもまた 大量のピップコートを けしかけて その両者に仕掛けていた。
…………。
「 試練はハ……。滞らズ……。スベテは規定通りだ。
イェルクス様を……。再三の……。ユガメル者を 再起不能フノウヲ……。我が 暗雲に……。啓示で……。 」
「 ドゥークラ !!イェルクス !!
グゥッ……。ォアァ……。オレは 必ず お前らを…… !!皆のカタキを…… !! 」
「 フフフ……。アハハハハ !!
これこそが……。俺ボク私が 天使として導く 最高の試練だ。 」
…………。
3つ巴の戦いは 混戦し……。周囲を巻き込んで 奮戦地を拡大するのも時間の問題のように見えた。
…………。
……。
2人の青年は 相互にボイスチャットを繋いで……。現在の状況についての意見を交換する。
大量のピップコート群の中を疾走し……。平静を保って 各々の武装を 振るうが……。
3つ巴の根幹が 荒ぶる場所までには まだ遠く、だいぶ距離が離れていた。
…………。
「 この数も 状況も まともじゃないな……。有馬 君 どう思う ?
今さっき 僕に届いた 班員からの 情報だと 交戦区域は N 地区だけのようだ。
時間の問題かもしれないが……。少なくとも 今は まだ、隣接する地区への影響は無い。 」
「 まともじゃないってのは 同感です。
前にも 似たような 仲間割れのような事は起こってました。
その時は 結局 途中で仲間割れは中断されて……。エヌ・ゼルプトだけは撤退しましたが……。
そもそもどうして 争っているのかが 俺達には知りえないのも……。判断に困りますね。
ですが……。これまでを判断材料にするなら、レトは 何か狙ってるのかも……。 」
「 前のミーティングでの話もある。
もしも 本来の姿を持っていたなら……。今以上に事態の悪化も考えられるね。
エヌ・ゼルプトか……。3体の どれか 1体でも倒せたら かなり違うんだろうけど……。
全部を相手にするのは 欲張り過ぎだね。 」
「 また……。分身体の ダミーかもしれませんけど……。
偽物かどうか……。俺達 2人で 仕掛けて確かめるのも 有り だと思います。
ここから 事態の悪化が有るとしたら……。それを握ってるのは やはり レトですよ。
ドゥークラと イェルクスは 現状 互いにしか 注意が向いてなさそうです。
変に刺激するよりは……。
いつも何かをしでかす 方を狙った方が良いと思います。 」
…………。
愚者のアルバチャスが ホバー滑走で 通り過ぎた後の後方では……。
10数体以上の ペイジ型ピップコートが爆散する。
…………。
青年は……。大代大との ボイスチャットで 意見交換を 挟みながら……。進行方向の怪人にも 意識を疎かにせず……。
魔導杖型の武装 B.A.Wandでの 攻撃は緩めない。
…………。
この時の N 地区全域の状況の全容は まだ見えてこないが……。
エヌ・ゼルプトを軽視せずに 戦闘処理を進めた。
…………。
……。
愚者のアルバチャスが B.A.Wandの長い柄の 端の方を 片手で握り……。
大ぶりな 横薙ぎを 一閃 また一閃と 繰り出して、最後には 杖の先端を 前方や上空向けて 数発の火球を 発射する。
有馬要人の卓越した 棒術と 杖の先端からの爆撃は、地上ではペイジ型を……。空中ではナイト型の怪人達を次々と消滅させた。
…………。
そして……。
青年 有馬要人は 一足早く 悪魔のエヌ・ゼルプトに 接近する。
悪魔 レトも 青年に気がついたのか……。不敵に笑い……。
背面から生えた 節足動物の脚のような部分の先端から 火球を無数に放った。
…………。
……。
悪魔が放つ火球は 数こそ多いが……。大きさは 不揃いで……。散弾銃でも扱っているかのように バラまかれる。
愚者のアルバチャスは 雨粒の大きさが異なる 火の雨の中を、くぐり抜けて 悪魔の元に向かった。
ホバー滑走で 身をかわし……。B.A.Wandによる打撃と 火球で 相殺させて……。
強く攻め込むための 一瞬の隙を作り出す。
…………。
『 Device Error Factor !! Cross Function !! THE MOON !!
( デバイス エラー ファクター !! クロス・ファンクション !! ムーン !! ) 』
『 Barrage Armed !! Dual Function !! Sword Pentacle !!
( バラージ・アームド !! デュアル・ファンクション !! ソード・ペンタクル !! ) 』
…………。
腰部側面のセンサーを 流れるような手さばきで動作させて……。引き延ばされた時間流の中からの 鋭い強襲に出た。
至近距離での戦いに秀でた武装から 護符の恩恵を乗せた斬撃を 降り抜く。
…………。
「 御機嫌よう 有馬さん。……ハハハ。
そんなに 何度も 俺ボク私が同じ手を貰うわけ無いでしょ ?忘れたんですか ?
俺ボク私は 完全なる擬態を 得意とする悪魔……。
マルクトの力も 使って、不完全な擬態も 前にしたでしょう ?
あの時と同じですよ。有馬さん のアルバチャスの能力を模倣しました。 」
「 ……1回 だけじゃないのか。何でもアリかよ。 」
「 何でもアリ……。では無いんですけどね。
1回しか出来ないなんて 言った覚えは無いですよ ?
俺ボク私だって 皆さんのように 日夜 強くなってるんです。マルクトとの洞調律だって 良好になっていく。 」
…………。
引き延ばされた時間の中でも、悪魔は 即座に 変容した小剣型武装デバイスを 構えた……。
青年が 振るった 刀剣型武装 B.A.Swordを 受け止めて、それを出来た種明かしを してみせる。
周囲の 土埃の動きが 緩慢になる景色で……。火花を散らした。
…………。
……。
愚者と 悪魔が 苛烈に 切り結ぶ。
…………。
引き延ばされた時間の中での 切り合いが 鋭利な軌跡で 幾度もぶつかった。
…………。
……。
順手で 小剣を握る 悪魔は、背面から伸びる 脚も 攻勢の 1つに混ぜ込んで……。
刺突を 軸にした格闘戦を 繰り広げている。
僅かな合間には 大小の火球が 打ち出され……。至近距離からの 手数が 愚者に迫った。
…………。
「 まあ でも……。時間流への干渉は 負担大きめですね。
分身の方が 俺ボクも楽かも……。
ぶっつけ本番は エヌ・ゼルプトでも 厳しめな……。あ……。やば……。 」
「 ……隙ありだ !レト ! 」
…………。
悪魔からの手数を すり抜けて……。
青年 有馬要人が 刀剣型武装 B.A.Swordを 振るう。
…………。
悪魔 レトの 片腕と 背面から延びる 脚の 2本が 切り飛ばされた。
…………。
愚者のアルバチャスが 鋭い 袈裟切りと 切り上げを立て続けに 打ち込んだのだ。
…………。
小剣型武装を握る 悪魔の片腕が、地面の上に落下し……。レトは その瞬間から 通常の時間軸へと 引き戻されていく。
青年は DEF 月の恩恵の残りの少しを 踏み止まり……。更なる追撃を 狙う。
…………。
「 切り落とされた後も 腕が消えないなら……。
今の お前は 本体だろう ? 」
『 Barrage Armed !! Dual Function !! Cup Pentacle !!
( バラージ・アームド !! デュアル・ファンクション !! カップ・ペンタクル !! ) 』
『 Device Error Factor !! Cross Function !! THE STAR !!
( デバイス エラー ファクター !! クロス・ファンクション !! スター !! ) 』
…………。
愚者のアルバチャスが DEF 月の恩恵を DEF 星に切り替えて……。部分的な挙動の複製を動作させた。
零距離からの 極まった銃射撃の 猛襲が レトに浴びせられる。
…………。
……。
悪魔 レトが 吹き飛ばされて……。後方の瓦礫に埋もれる頃……。
その瓦礫より 更に奥の方でも 轟音が鳴った。
…………。
黒翼の怪人 ドゥークラは……。
あらゆるものを 無に帰す 暗雲の形状を、巻層雲(けんそううん) 同然に変化させて 撃ち出し……。
敵対相手の 身体に大穴を開け……。
…………。
緑翼の石鎧 イェルクスと 思われる 荒々しい声の方は……。
片手に握った マクアウィトルに似た木剣の石刃で、相手の 胴体に 深い傷を負わせる。
…………。
黒翼と 緑翼の 両者による 相打ち……。
…………。
外側からは そうとしか見えない 混沌とした状態が 起きていたのだ。
…………。
「 我……。ハ。……。啓示を……。
イェルクス様の……。歪み……。ガガ……。カ……。アトル……。汝……。ナンジ……。な……。……ットの命に……。 」
「 オレは……。必ず……。無念を……。光の……。を……。排除……。
…………ナラダ。……オレは。
鍵ヲ持つ……。マルクトとト……。至る。 」
…………。
ドゥークラの全身に広がる 亀裂は 大きく開き……。複数のケ所から 欠片が零れだしている。
イェルクスの方も また……。大きく開けられた 穴は 致命的なのか……。全身から アルカナの光が 溢れだしていた。
緑翼の石鎧の 大穴からは 身体の中心部分の内部に 納まっていたと思われる 神秘的で大きな石が 輝く。
…………。
強大な 2つの エヌ・ゼルプトが 互いに戦った末に 沈黙したのだ……。
悪魔のエヌ・ゼルプト レトも 愚者の青年に よって 追い詰められ……。
…………。
この景色に取り残されているのは……。統率者を失った 無数のピップコート だけのようだった。
…………。
……。
無数の ピップコートは 彼誰五班の残存戦力で 対処に当たって、悪魔にも根治的な 一撃を加えるだけなのだと……。
青年 有馬要人が 連想する。
…………。
「 ……なんだ ?これが 終わりなのか ? 」
…………。
ピップコートの中を潜り抜けて……。大代大が遅れて合流し……。
丹内空護と 荒井一志も N 地区近隣の 避難誘導を終えて 現着した。
…………。
「 有馬 君……。無事かい ?レトは 何処に……。この静けさは……。 」
「 有馬……。大代……。待たせたな。
十一も 後少しで 到着するそうだが……。状況はどうなってる ? 」
「 自分も 只今 現着しました。
第四班は 第二班の班員と合流させて 仁科 C.E.O代理の指揮下に 預けてます。
万が一 N 地区以外に 新手が出現しても A 地区からなら 円滑に動けるでしょう。しかし これは……。 」
…………。
棒立ちの ピップコート達は……。どれもが 一斉に転倒し始めたのだ。
中空を駆ける ナイト型は 地上に落下し……。ピップコートの種別による例外は見られない。
…………。
……。
愚者のアルバチャス code-0-DAATの青年……。有馬要人……。
月のアルバチャス AA-18の青年……。丹内空護……。
小剣型武装を握る 丸七型の レヴル・ロウ……。大代大……。
小銃型武装を携える 丸七型の レヴル・ロウ……。荒井一志……。
…………。
4人の青年は……。静かすぎる 場の 空気に それぞれが 違和感を感じていたようだった。
…………。
……。
突如……。辺りから 音が消え失せて……。引力が発生する。
引力の方角には……。先程まで 互いに争っていた 2者……。ドゥークラと イェルクスの残骸が 在り……。
両方が 個別に 強い引力を出していたのだ。
…………。
不思議な事に……。そのどちらもが 殆ど残骸のままで……。亀裂や欠損だらけで廃れた姿のままだった。
引力は強く……。
相互に吸い寄せ合い、周囲のピップコートを アルカナの光に変換しては 両者の体表上に 集めている。
力なく倒れている 残骸は どちらも意図をもって 引力を 巻き起こしているようには見えない。
…………。
……。
この時の 4人の青年達は 踏み止まり……。傍観するしか出来なかった。
…………。
いつの間にか……。
2つの残骸は 固着し……。ピップコートから集めた 光の残骸をその 中に還元しているのか……。
アルカナの光の大渦が 何本も立ち昇り……。どれもが 2つの残骸の焦点に 吸い寄せられていく。
…………。
「 オオオォ……。 」
…………。
残骸の焦点には……。禍々しい気配を溢れさせる 何者かが 蠢いて 雄たけびを上げ始めた。
ここに来て やっと……。4人の青年達は 音が戻った事に 気がつかされる。
引力の 勢いが少しずつ 穏やかになり始めたのだ。
…………。
4人の青年達は それでも 強力な引力に 強く踏み止まり……。それぞれに身構えた。
…………。
引力の焦点の 何かだけが、低くうなる 雄たけびを上げる中で……。
意外な 存在の声が聞こえる。
…………。
瓦礫に背を預けて 語り始めたのは 悪魔 レトだったのだ。
レトは……。普段と変わらない軽い口調を崩さずに 少しだけ 真面目そうな物言いで語り始めた。
…………。
「 なんでこうなったかは 俺ボク私は 知らないし……。さっきまでは エヌ・ゼルプトとして 仲裁してたんだよ。
イェルクス様の身体を 奪おうとした戦神が……。
審判に 敵意を向けて……。過去の試練の 延長戦を しようとしてたからね。そりゃとめるでしょ。
本来なら ありえない 異常事態さ。
光の試練に大小の イレギュラーはあっても 今回みたいな超特大の 事故はありえない。
本来ならね……。
カシュマトアトルは……。かつて……。生身で 試練を打破した 驚異的な人物だ。
彼は 試練の後に……。自ら イェルクス様の身体と 同化した。
マルクトの力によってね。
光の試練を 自身の精神力で 支配下に置こうとしたんだ。結果 無理だったけど、未練は今も尽きない。
先輩……。審判の ドゥークラの方も 試練の進行に固執して……。
どっちも仲良く単独崩壊を 起こしてしまった。
単独崩壊の末に 混ざり合うなんてね……。フフフ……。ぶっ飛んでるだろ ? 」
…………。
悪魔の 物言いは 落ち着いており……。微細な動揺も 見られない。
…………。
「 俺ボク私でも……。ドン引きもののイレギュラーが今……。さっきも話したけどね。
……僕は 今も 恵花界の人格を残しています。 皆さん と 一緒に過ごした日々を……。自分自身の記憶として……。
異常事態 続きの この街を 僕なりに 救いたいだけだったんだ。
有馬さん……。一志……。丹内さん……。大代さん……。信じてくれますよね ?
…………。
なんて 今更 だまされないか……。フフフ……。最高ですね 皆さん。
今から良いもの 見せてあげますよ。
世界を飲み込むほどに膨れた愛憎と執念。
絶対的な結果への執着で タガが外れた再起不能の権化……。
そして……。試練を超えた者に託される 太古の技術の粋……。
見たいでしょう ?
これらが 合わさった究極の 調和と臨界点。俺ボク私も……。胸が高鳴ってきました。 」
…………。
悪魔は 変わらず 背中を瓦礫に預けて 辛うじて 話しているようにも見えるが……。
その 不遜で 不敵な 様は 変わらず……。その実……。今の状況を楽しんている ようにも見えた。
…………。
「 一度……。おさらいでもしてあげましょうか……。
エヌ・ゼルプトには……。行き過ぎた行動を 阻む 現象が備えられています。
だからこそ 殆どのエヌ・ゼルプトは役割から 逃れられなかった。
当然……。ドゥークラにも イェルクスにも共通している。
単独崩壊……。
光の試練を 安全に 進行させる為の 光の使途……。エヌ・ゼルプトの暴走を強制的に停止させる 自己破壊現象。
エヌ・ゼルプトとしての 能力の強弱が ブレ始める段階を経て……。
最終的には あらゆる 物を アルカナの光に変換しては、吸い寄せる 性質に変わり……。
最後には周囲を巻き込んで自壊する。 」
…………。
引力は 今も 一定の強さを保ち……。絶えず 周囲のピップコート達を 光に変換し……。吸い寄せていく。
力なく 辺りに倒れている どれもが……。
そよ風に拭かれた 枯葉のように 軽く引き寄せられて 宙を舞った。
…………。
……。
4人の青年達は 踏み止まる最中、自身の身体に それらが何度か ぶつかったが……。
この時の ピップコート達は 重量が殆ど無い事が わかった。
過去に……。何度も戦ってきたが……。交戦時には 打撃には圧力は感じたし……。
こちらからの攻撃でも 当時の記憶では しっかりと手応えはあったのだ。
…………。
改めて 自分達が戦っていた相手の 得体の知れなさを それぞれが実感する。
…………。
……。
悪魔は 瓦礫にもたれかかりながらも、ゆっくりと立ち上がり……。
現在に至る 引力の焦点の 正体を締めくくっていく。
…………。
「 けど……。
俺ボク私は……。これに手を加えさせてもらいました。
イェルクス様の動力源……。
世界のマルクトの力と 英雄のマルクトの力を ふんだんに使って アレンジしたんです。
先輩 ドゥークラが ポメグラネトを作った時の やり方を 参考に……。
ニンゲンから レッドコートを作って 練習した成果ですよ ?
今 起こってる 2つの 単独崩壊は 完全に自壊せずに 混ざり合っているでしょう ?
カシュマトアトル……。ドゥークラ……。世界のマルクト イェルクス……。
折角なので……。前に拾った 今時代の英雄の残滓……。神地聖正の思念の断片も混ぜました……。
しぶとく 火のマルクトの中に 精神体のコピーを残していましたからね。
あんな私欲の塊……。捨てるのも勿体無い。
強大な力の 三位一体ならぬ 四位一体が 何を生みだすのか。
今 ここが……。前人未到の フロンティアです。
新しい世界の……。新たな エヌ・ゼルプトが……。誕生するかも……。ハハハ……。
アハハハハハハハ…………。 」
…………。
悪魔が 満足げに 高笑いを上げた……。
調度 その頃には 引力が 納まり……。光が集まっていた焦点の位置には 何かが 存在している。
…………。
何かの姿は……。集めた光の量とは 対照的な 忌まわしさが目立っていた。
…………。
忌まわしい 何かが……。黒と赤の 暗い光を 噴出させて 雄たけびを上げる。
…………。
「 オオオオオオオオオオオオオオオオ…… !!!!! 」
…………。
噴出した 暗い光は……。ガス状の塊になって 放たれた。
暗い光の塊が 悪魔を飲み込み……。霧散させてしまう。
…………。
地上に倒れているピップコート達や その近場の瓦礫にさえも 命中し……。飴細工のように 湾曲して形を変えていった。
幾つかの 飴細工のような 暗い光の塊は 吸着し合い……。大きく形を変えていく。
…………。
忌まわしい何かは……。雄たけびとも 異なる声を発した。
…………。
「 我は……。
世界 唯一の 絶対なる闇……。
大いなる闇は 深淵から 全てを飲み込み 全てから意味を奪おう。
世界の全てに……。光も 再生も 及ばない 完全なる 不完全を……。
我は 唯一 絶対なる闇……。
The dark ace……。
( ジ・ダーク・エース )
世界に 再生亡き 破壊を……。輪廻の及ばない 破滅を……。 」
…………。
忌まわしい 何かは……。暗い光を 全身に漂わせて 禍々しい翼を広げた。
これを合図にしているのか……。はたまた偶然なのか……。
ピップコート達を飲み込んだ 飴細工のような ガス状の 光は 歪な形状で定着して、新たな怪人を 4体 作り出す。
…………。
ガス状の光から 産まれた 怪人は どれも類似の姿をしていたが……。
大柄で……。特に歪な片腕が 不気味さを際立てた。
………………。
…………。
……。
~新たな神秘~
この日……。N 地区に現れた 2体の大きな脅威は……。
互いに争い……。互いを仕留め……。
その末に 起こった崩壊から、突発的な経緯を辿って 全く異質な何かへと変わり果てた。
…………。
変わり果てた 何かは 忌まわしい 外見を持ち……。
外見にも沿った 性質を持つからなのか……。仄暗い赤色と黒色の光を 自在に操り……。悪魔さえも 霧散させてしまう。
…………。
忌まわしい外見の何かは……。自らの存在を 名乗り上げる。
その声さえも 重く……。暗く……。あらゆる全てを 包み溶かしてしまうかのような……。底 知れなさを 聞くものに感じさせる。
…………。
「 我は……。
世界 唯一の 絶対なる闇……。
大いなる闇は 深淵から 全てを飲み込み 全てから意味を奪おう。
世界の全てに……。光も 再生も 及ばない 完全なる 不完全を……。
我は 唯一 絶対なる闇……。
The dark ace……。
( ジ・ダーク・エース )
世界に 再生亡き 破壊を……。輪廻の及ばない 破滅を……。 」
…………。
忌まわしい 何かは……。暗い光を 全身に漂わせて 禍々しい翼を広げた。
これを合図にしているのか……。はたまた偶然なのか……。
ピップコート達を飲み込んだ ガス状の 光は 歪な形状で定着して、新たな怪人を 4体 作り出す。
…………。
ガス状の光から 産まれた 怪人は どれも類似の姿をしていたが……。
大柄で……。特に歪な片腕が 不気味さを際立てた。
…………。
……。
愚者のアルバチャス code-0-DAATの青年……。有馬要人……。
月のアルバチャス AA-18の青年……。丹内空護……。
小剣型武装を握る 丸七型の レヴル・ロウ……。大代大……。
小銃型武装を携える 丸七型の レヴル・ロウ……。荒井一志……。
…………。
4人の青年は……。先程の静かすぎる 場の 違和感の 成れの果てに直面したのだった。
…………。
忌まわしい 何か……。ジ・ダーク・エースは……。翼を広げて 飛び上がり……。
今しがた ガス状の光から 産まれたばかりの 4体の怪物に号令をかける。
…………。
「 行け……。我が 闇の傀儡……。
Dark court どもよ……。
( ダーク・コート )
世界に 再生亡き 破壊を……。輪廻の及ばない 破滅を……。世界に完全なる不完全を…… !! 」
…………。
4人の青年達には 時間を掛けて思考を巡らせる 暇など無かった。
…………。
……。
ダーク・コートと 呼称される 傀儡たちは 片方側から生える 3本の腕と……。
その反対側から伸びる 歪みのある 大きな円柱状の片腕を、予備動作も無く振るい……。青年達に襲い掛かる。
…………。
愚者のアルバチャス 有馬要人は……。
B.A.Cupに護符の 恩恵と DEF 星の恩恵を掛け合わせて 4体の新手の怪人に 掃射を打ち込む。
ダーク・コートは どれもが 意に介さない様子で……。円柱状の片腕で 掃射の全てを受け止めた。
…………。
丹内空護と 荒井一志は……。
ダーク・コート達が 掃射を受け止めて 歩みを止めた隙を 見逃さず……。
息の合った 接近戦で 決定打を叩き込もうと ホバー滑走で疾駆する。
…………。
至近距離からの打撃と銃射撃を 集中させて……。4体の中でも 1体を 打倒しようと狙うが……。
…………。
円柱状の片腕から繰り出される 重い一撃が 広い範囲に 瓦礫を飛ばす。
地面を簡単に抉り……。状況の変化を 簡単には許さない。
…………。
円柱状の片腕には 亀裂が走っており……。その溝の中では 赤々とした毒々しい色の 光が 赤熱している。
更に先端部分は 空洞になっているようで……。
とどのつまり……。この円柱状の片腕は……。砲身と似た類の形状をしているようなのだ。
鈍器のような片腕の先端から 巨大な 火炎弾が 発射される。
…………。
4体の怪人からの 砲撃と打撃の 応酬を 4人の青年達は 個々に 対処するが……。
大代大は……。僅かに かすめただけで、丸七型の片腕に備えられた 盾を蒸発させられてしまう。
…………。
異様な 新手……。闇の傀儡たちは 耐久性能も 攻撃能力も 高いらしく……。
歴戦の 4人を苦戦させた。
…………。
……。
4人の青年達と……。4体の傀儡との戦いは 一進一退の拮抗した 膠着状態(こうちゃくじょうたい)へと移行し……。
長期戦が 続くかと思われたが……。
そうではなかった。
…………。
闇の傀儡が 数発目の 炎熱砲弾を放った直後……。これを合図にしていたのか……。4人の青年達が 一斉に動き出す。
…………。
『 Rebel Function !! Pentacle !!
( レヴル ファンクション !! ペンタクル !! ) 』
「 丹内 総指揮長 !!お願いします !! 」
「 任せろ……!!荒井…… !! 」
『 Extend !! Testudo Panselinos !!
( エクステンド !! テストゥドゥ・パンセリノス !! ) 』
…………。
荒井一志が 小銃型武装からの 炸裂弾を放って……。これが着弾するよりも前に……。丹内空護が 光の障壁を発生させた。
光の障壁は……。以前のように 球状に収縮し……。
闇の傀儡達が放った 炎熱砲弾と 闇の傀儡達 を閉じ込めたまま 光の障壁の範囲を狭めていく。
1人の 丸七型が 放った 炸裂弾を巻き込んだ 障壁内では……。数秒程 断続的な爆発音が鳴った。
…………。
光の障壁が 解除された後も……。4体の闇の傀儡は 健在だったが……。
確かな効き目が あったようで……。少しだけ動きは鈍い。
…………。
『 Defender's Ability And Tactics !!
( ディフェンダーズ アビリティ アンド タクティクス !! ) 』
『 Extend !! Aureole F0Ol !!
( エクステンド !! オーレオール・フール !! ) 』
…………。
この機を逃すまいと……。更に 2人の青年が猛追を仕掛ける。
…………。
「 大代さん……。一瞬だけですよ ?
B.A.Wandでの エネルギー移送も合わせた レヴルの強制強化……。無理しないでくださいね。 」
『 Barrage Armed !! Dual Function !! Wand Pentacle !!
( バラージ・アームド !! デュアル・ファンクション !! ワンド・ペンタクル !! ) 』
…………。
愚者のアルバチャスが 極まった光を充填させて……。
有馬要人の頭部には 循環し 密度を高めた証に 光の円環が出現し、放流を立ち昇らせる。
…………。
青年は その循環を続ける余剰 エネルギーの極一部を……。隣り合う 丸七型へと 送り込んだ。
…………。
「 大丈夫さ。
丹内さん や、有馬 君からの話 通りなら……。その一瞬だけで良いんだろ ?
背中を 預けられる 仲間もいる……。
片腕の盾が無くなったのも……。軽くするのに うってつけだしね。 」
『 Law's Function !! Pentacle !!
( ロウズ ファンクション !! ペンタクル !! ) 』
…………。
大代大は……。小剣型武装 L,L,Eを構えて……。
有馬要人は……。B.A.Wandを握り……。
…………。
「 同感です。……行きましょう !! 」
『『 Hover Chaser !! Function !!
( ホバー・チェイサー !! ファンクション!! ) 』』
…………。
同時にホバー滑走を作動させて……。引き延ばされた時間へと 飛び込んだ。
…………。
愚者のアルバチャスが 持つ DAAT 太陽の 恩恵……。
純然たる 出力と密度の強化が……。DEF 月の効果と同等以上の 領域へと昇華させる。
…………。
引き延ばされた時間軸での 猛追を……。
丹内空護と 荒井一志が 作り出した隙と 攻めの 後押しを……。4体の 闇の傀儡に 叩き込んだ。
…………。
2人の青年が 引き延ばされた時間に 飛び込んでから……。通常の時間にして 4秒が過ぎた。
…………。
通常の時間軸へと 大代大が 帰還し……。膝をついたのと同時に……。丸七型を強制解除させる。
その少し後方で 有馬要人も 通常の時間軸に帰還した瞬間。
…………。
「 …………かなりだね コレ。
有馬 君 も……。丹内さん も……。こんなに疲れる戦い方……。よくやってるよ。 」
「 俺も そう思います。たぶん……。慣れですね。 」
…………。
4体の闇の傀儡達は……。殆ど同時に爆散した。
…………。
「 作戦は成功だな。
荒井……。俺と お前とで 大代のフォローをするぞ。丸七型の最充填は アルバチャスよりも 時間が必要だ。
場合によっては撤退の補助を できるようにしておけ。 」
「 承知しました。
必要なら 自分が撤退経路までの 護送を請け負います。 」
…………。
4人の青年達は ひとまずの安堵を 声に滲ませるが……。
今も 上空から こちらを見下ろす 闇の大アルカナに 注意を向けた。
…………。
闇の大アルカナ……。ジ・ダーク・エースは……。ゆっくりと 地上に降り立ち……。大きな翼を 折りたたむ。
…………。
「 我が 闇の傀儡を 下すか……。
汚らわしい 光を扱う者共よ……。貴様らの実力……。その程度では なかろう……。
世界に 再生亡き 破壊を……。輪廻の及ばない 破滅を……。世界に完全なる不完全を…… !!
貴様らの力量……。我にも 浴びせてみるがいい。 」
…………。
闇の化身が 緩慢な速度で 4人の青年達に 近づき始める。
…………。
「 空護さん……。光の試練て 今 どうなってるんでしょうね。
アレ 倒したら 完了なんでしょうか。 」
「 ふん。こんな時も 間の抜けた 軽口を出せるとは……。相変わらずの 肝の座り様だな。
有馬……。アレの相手は 俺と お前が主力だ。
荒井は 大代を補佐しつつ……。ここから距離を取って 特務まで 一旦下がるんだ。
現在の N 地区の全容としての、情報の吸い上げが上手くいっていないのは 知っているだろう ?
荒井と 大代とで 生の情報を 特務に持って行ってくれ。 」
…………。
丹内空護と 荒井一志は……。知っていたのだ。
真っ先に 近郊から N 地区に駆け付けた 有馬要人と 大代大が 知りえない 外側からの状態について。
…………。
この時の N 地区は全体的に 外への情報が行き届いておらず……。特務棟につていも例外ではなかったのだ。
今回 現れた 最初の 3体のエヌ・ゼルプト達についても……。
先程まで 大量に闊歩していた ピップコート達についても……。
今の今まで 交戦していた 新手の ダーク・コートや……。これを作り出した 闇の化身についても……。
…………。
情報として N 地区の外に 届いている可能性は極めて低い。
…………。
というのも……。過去に幾度か発生していた 通信障害が発生しているらしく……。
異常性の高さを N 地区に向かう前に 天瀬十一から共有されていたのである。
…………。
丹内空護と 荒井一志は 初動として……。避難誘導と 被害状況の確認を早急に進め……。
天瀬十一が 特務を出るよりも先に N 地区に向かい 今に至るのだ。
…………。
「 了解。一旦って事は……。
補給が終わり次第……。援護くらいには戻ってきても良いんですね ?丹内さん。
僕も 荒井君も 気持ちは まだまだ ありますからね。 」
「 自分達は 一度 下がりますが……。無茶はしないでください。
大代さん が話した通り 一度 下がるだけです。 」
…………。
荒井一志は 大代大を担いで……。ホバー滑走で APCの特務棟が 在る A 地区の方へと 走りだす。
…………。
「 闇からは 逃れられぬ……。 」
…………。
闇の化身が 翼を広げるが……。周囲には 光の障壁が 展開され……。
愚者のアルバチャスと 月のアルバチャスさえも 巻き込んで 半ば 強制的な 2 対 1 の状況が 仕上がった。
…………。
『 Not exist gun !! Function !!
( ノット・イグジスト・ガン !! ファンクション !! ) 』
『 Extend !! Testudo Panselinos !!
( エクステンド !! テストゥドゥ・パンセリノス !! ) 』
「 アイツらは 俺達が 逃がすんだよ。
逃げたんじゃない。 」
「 空護さん と俺が相手だ。
数での不満は 言わせないぞ ? 」
『 Barrage Armed !! Dual Function !! Wand Cup !!
( バラージ・アームド !! デュアル・ファンクション !! ワンド・カップ !! ) 』
『 Defender's Ability And Tactics !!
( ディフェンダーズ アビリティ アンド タクティクス !! ) 』
『 Extend !! Trick Ster ter !!
( エクステンド !! トリック・スター・ター !! ) 』
…………。
半球型の 光の ドームの中で……。18体まで増えた 愚者の分身体が 両手に射撃武装を呼び出し……。
漆黒の鎧の月のアルバチャスも 自前の 銃射撃用武装を 展開する。
…………。
並みの エヌ・ゼルプトならば……。充分すぎる 万全の状況が整っていた。
…………。
18体分の分身体も交えた 愚者と……。戦い慣れた 強靭な強さを発揮する 漆黒の月を相手にしても……。
闇の化身は 容易く 戦い続ける。
…………。
愚者の分身体が 10体以上 消し飛ばされて……。月のアルバチャスにも 重く速い 掌底が命中した。
有馬要人も 丹内空護も……。致命傷は追っていないものの……。
それらしい 有効打を 与えられないままの 防戦だ。
…………。
光の障壁の中での戦いは 1分も経過していない。
…………。
「 貴様らの力量は こんなものか……。ならば 次は……。
あっちの方は どうだ ? 」
…………。
闇の化身が 遠くに見える 丸七型の背中の方を向いた。
光の障壁は 今も展開され……。有馬要人と 丹内空護も 戦いの手を緩めてはいない。
…………。
「 闇は あらゆるものと隣り合う……。
何者も 捉えることなど出来はしない。 」
…………。
にもかかわらず……。
闇の化身は 即座に姿を消し……。同時に遠くの方で 何かに打撃が加えられた音が鳴った。
…………。
荒井一志も 丸七型を 強制解除に追いやられ……。辛うじて反撃した 大代大も共に……。
武装デバイスを 破損させてしまう。
…………。
闇の化身の 拳が 掠めただけで 2人の武装デバイスは 破壊され……。吹き飛ばされてしまったのだ。
直撃を 防いだのは……。ある人物が 白群色の雷を放つ 大剣で 拳を受け止めたからである。
…………。
白群色の雷を操る 獅子の意匠を頭部に持った 発展型……。
正義と剛克の ジャスティフォース……。天瀬十一が……。どうにか 間に合った。
…………。
「 ……危ない所だった。間に合って良かったよ。
合一編成の中から 何人か 随行させてある。今のうちに 彼らと一緒に 下がってくれ。 」
…………。
天瀬十一は……。荒井一志と 大代大の 2人に 数人の レヴル・ロウの存在を共有し……。撤退の 継続を促す。
合一編成の中の 数人と共に特務棟の方角へと 撤退していくのを尻目にして……。改めて大剣を振るった。
…………。
「 通信障害の原因は コイツか ?
どちらにせよ……。仲間を 死なせるわけにはいかないんだ !! 」
『 Extend !! Force of Bastard !!
( エクステンド !! フォース オブ バスタード !! ) 』
…………。
白群色の雷が 綺麗な樹形に伸びていき……。リヒテンベルク図形を作り出す。
雷鳴を鳴らす大剣が 闇の化身に 振り下ろされた。
…………。
「 貴様は……。誰だ ?
穢れた光を 扱う 旧世界の使途か……。貴様も完全なる不完全を拒むのか…… ? 」
…………。
闇の化身は 片手で 雷鳴の大剣の 刃を掴み……。両断される事なく 眼前で静止させ続ける。
片手で刃を 直接つかんでいるというのに……。その片手は微塵も 揺れない。
…………。
「 なんだ…… ?
-JFC-の パワーと この技を 片手で止めているのか ?
コイツは本当に……。なんなんだ ? 」
「 十一さん !!そのまま 抑えてて下さい !! 」
「 有馬 君 !? 」
…………。
闇の化身を 追って……。愚者の青年が ホバー滑走で疾駆した。
道中では 速やかにボイスチャットでの 呼びかけを行い……。起死回生の 一手に移る
…………。
『 Defender's Ability And Tactics !!
( ディフェンダーズ アビリティ アンド タクティクス !! ) 』
『 Extend !! Aureole F0Ol !!
( エクステンド !! オーレオール・フール !! ) 』
『 Barrage Armed !! Dual Function !! Wand Pentacle !!
( バラージ・アームド !! デュアル・ファンクション !! ワンド・ペンタクル !! ) 』
…………。
全身に極まった光を 循環させて……。頭部から 余剰分の 光の柱を放出させて……。
愚者のアルバチャスが、B.A.Wandを ビリヤードの キューで 狙うように 狙いを研ぎ澄ました。
迅速に接近した 愚者は B.A.Wandの先端部分を 器用に 闇の化身と -JFC-の間に差し込んで……。
一気に力を込めて 振りかぶる。
…………。
「 十一さん……。このまま コイツを 上空に打ち上げます !! 」
「 そういう事か !!なら…… !! 」
…………。
愚者の青年が DAAT 太陽の恩恵を 精密に調整し……。天瀬十一の -JFC-と連携できる 範囲の速度で奮起した。
天瀬十一もまた……。大剣に込める力を 一気に抜いて 雷を込めた殴打で 闇の化身の腹部に一撃を叩き込む。
…………。
闇の化身が 中空に殴り飛ばされると……。
…………。
『 Extend !! La Garita Quadriga !!
( エクステンド !! ラ・ガリータ・クアドリカ !! ) 』
「 高度は低いが……。更に低い位置から 砲撃を放てれば……。コレが使える !! 」
『 Function !! Cataphract Feggari !!
( ファンクション !! カタフラクト・フェンガーリ !! ) 』
…………。
黒馬型の戦車に騎乗した AA-18が 追撃を加えた。
高密度エネルギー体の 重装騎兵が 闇の化身に向けて 放たれる。
…………。
有馬要人、丹内空護、天瀬十一の 3人の 連携が 決まった。……筈だった。
…………。
「 ……闇は 光如きでは 完全に消せはしない。
世界の 大部分を構成せしめるのは……。際限のない闇なのだ。我は倒せぬ。
貴様らの力量は把握させて貰った。 」
…………。
闇の化身が 高密度のエネルギー体を 霧散させて……。大きな翼を広げる。
暗い明度の翼から……。動揺に暗い 色の光弾を放ち……。
周囲の 瓦礫や地面を抉り飛ばす。
…………。
禍々しい赤と黒の波動と……。得体のしれない 闇の化身の底知れなさに 3人の青年は 虚を突かれ……。
天瀬十一にしても……。丹内空護にしても……。強制解除こそしないものの……。周辺の瓦礫ごと 大きく吹き飛ばされてしまう。
…………。
青年 有馬要人も 例外では無く……。
それどころか……。地面に叩きつけられた 瞬間に システムを強制解除させてしまっていた。
…………。
「 闇は 常に あらゆるものと隣り合う……。
知っているぞ 貴様らは 光の試練を 歩む者共だったな ?だが……。それも既に叶わぬ。
貴様らも世界さえも……。
唯一 絶対なる闇の前では……。再生亡き 破壊を……。輪廻の及ばない 破滅を 待つのみ。
何者も抗えぬ……。全ては完全なる不完全へと 捻じ曲げられるのだ。
暗い光が 世界の全てを 溶かすだろう。 」
…………。
3人の青年達は それぞれが 離れた位置に吹き飛ばされ……。
生身で 突っ伏している 有馬要人の周囲からは かなりの距離があった。
青年 有馬要人の 元へと……。闇の化身が近づき……。先程と動揺に 闇の傀儡を 5体 召喚する。
…………。
有馬要人は……。どうにか拳を握って立ち上がるが……。眼前には 闇の傀儡が迫っていた。
…………。
天瀬十一は ホバー滑走で走り……。
丹内空護は 再度 黒馬型の戦車で中空を飛翔する。
…………。
だが……。突如として……。
ジャスティフォースと アンチエースムーン の両者から アルカナの光が 湧き出し始め……。
青年 有馬要人の 拳に吸い寄せられていく。
…………。
愚者の青年の 片手には 誰も見た事が無い 一振りの 蒼い剣が握られており……。
蒼い剣の輝きが……。闇の傀儡を 2体 消滅させた。
…………。
『 code-000- !! Last Path Sword !!
( アインソフオール !! ラスト・パス・ソード !! ) 』
…………。
蒼い剣の煌めきは……。
この場にいる 誰もが 知りえない 神秘的な 何かを 動作させたのだ。
…………。
青年 有馬要人は……。code-0-DAATにも似た 蒼色をした未知の姿へと 変化していく。
………………。
…………。
……。
- 前 回
- 次 回