- 39話 -
見えざる真実への導き
- 前 回
- 次 回
目次
~過去からの…~
目は開けているはずなのに……。
耳は あるはずなのに……。何の情報も入らなくなった。
……あの日から、いつの間にか……。
…………。
……。
俺は……。その日……。
仲間の暴挙を鎮め……。助けようと……。隙を見せてしまったのかもしれない。
…………。
……。
様子が変だった……。
急激な変化と……。人間から 異なる形へと変わる様に……。手を伸ばさずにはいられなかった。
…………。
「 恵花……。それを手放せ。
マルクトが 何かしらの悪い影響を及ぼしているのかもしれない。 」
「 恵花界 ?……誰ですか それ ?
俺ボクは……。悪魔のエヌ・ゼルプト……。名前はレト……。
マルクトと、現代の英知は私のものだ。……起動。 」
…………。
隙を作って……。致命傷を負ってしまった筈が……。
悪魔に刺し貫かれた 感知不能な大きさの裂傷は……。
…………。
『 Device Error Factor !! Non Function !! Error !!
( デバイス エラー ファクター !! ノン・ファンクション !! エラー !! ) 』
『 Absolute-13- !! Function !!
( アブソリュート・サーティン !! ファンクション !! ) 』
…………。
原因不明の 誤作動用の音声が鳴ると……。跡形もなく治癒されていった。
肉は盛り上がり……。蠢いていたのを実感する。
…………。
時間が逆回しにでもなったのかと思った……。グズグズと 傷口が蠢いて 再生されていく。
…………。
「 不思議に思わないですか ?
自身の傷の直りが早い事……。
ほら 今も……。身体中の傷が消えていくでしょ ?
丹内 総指揮長……。貴方は 死神のエヌ・ゼルプト……。
エスネトに成りかけているんだ。 」
「 死神の……。エヌ・ゼルプトだと ?
俺は 人間だぞ ?
今までも……。アルバチャスとして……。戦ってきた……。 」
…………。
悪魔は……。多くの情報を開示する エヌ・ゼルプトだった……。
何が嘘で……。何が本当なのか……。もしかしたら……。
事実は 1つも混じっていないのかもしれない。
…………。
「 ですねぇ……。それでも不思議では無い理由はある。
死神は いつも、アルカナ適性の強い何者かの体を変化させて受肉する。
極まった肉体が 格好の餌食。
だから、出現しない事もある。逆に……。
その時代の英雄が、死神に変わった事だって 事例としてはあるんだ。
もし……。対策するなら……。簡単じゃないよね。
さよなら。……これで後少しだ。
今回の試練は失敗でフィニッシュ !バットエンドよ こんにちわ ! 」
…………。
これ以降の 新しい情報が 一切 感じられない……。もしかしたら……。
事実は 1つも混じっていないのかもしれない。
…………。
「 ……さん !!聞こえますよね ?
……らダメで…………。
……を……。……!! 」
…………。
事実は 1つも混じっていないのかもしれない。
俺は……。誰だ…… ?
…………。
……。
………………。
…………。
……。
暗く深い……。どこかの奥底で……。出口の見当たらない空間で……。
身動きも取れず……。存在が諸共 消え入りそうな……。風にも似た塊が あった……。
次第に 小さくなっていく 風にも似た塊の渦に……。白色の光の粒が近づく……。
…………。
……。
………………。
…………。
……。
22災害が 起きるよりも以前……。大災害より 1年に満たない程度の数か月前。
…………。
約 19年前の その日……。
日樹田の中でも有数の河川……。枝川沿いの土手で……。
1人の少年と……。1人の少女が……。始めて顔を合わせた。
…………。
「 ……俺は 乙黒空護(オトグロ クウゴ)。日樹田東小学校 3年だ。
出席番号は 7番。
好きなもんは、これ見たらわかるだろ ?よろしくな !」
「 えっと……。わたしは 夢川結衣(ユメカワ ユイ)……。
日樹田南小学校 3年。……出席番号は 28番。
……実は 私も それが好き。……えへへ。よろしく ! 」
…………。
枝川沿いの 土手の開けた所で……。
何でも無い日に、お互いに いあわせて……。一緒に遊ぶようになった。
…………。
少年が 誇らしげに 指さしているのは……。
この時の少年が着用している 半袖のシャツだ。
空色の爽やかな 半袖のシャツの真ん中に 印刷されている プリント部分……。
…………。
学区が違う 少年少女は……。この日の偶然から 親しくなった。
好きな物の好みも近く、自然と意気投合していく。
…………。
切っ掛けは この時の少年が 着ていた 半袖の Tシャツ……。
数ヶ月分の 少年の お小遣いを誕生日に上乗せして 買ってもらった お気に入りだった。
…………。
……。
毎日のように……。変わらずに流れる川の 横で……。
当たり前のように……。2人は 時間や曜日を合わせて 顔を合わせる。
…………。
「 ねえねえ……。空ちゃん 今日は何する ? 」
「 クウちゃん は やめろよ。ユイ……。
俺は 男だぞ ! 」
「 いいじゃん。可愛いし……。
クウちゃん は、クウちゃん でしょ ?でで ?今日は何して遊ぶ ? 」
「 今日はな……。ザリガニを 釣る…… !
良い場所 見つけたんだ……。猫じゃらし を掴ませて 俺が 1本釣りしてやるんだ ! 」
…………。
当たり前の毎日が 特別だった。
土手の中の 林を散策し……。2人で虫を探し……。衣服に樹液すらも引っ付けて……。
衣服に 引っ付いた樹液を目当てにした 蜂に追いかけられたりもした。
…………。
枝川に繋がる小さな沢では、ザリガニを見つけて 喜んだ。
直ぐに時間は過ぎて……。気がつくと お互いに家の門限の時間が近づく……。
気がつけば……。何カ月かが過ぎ去っていた。
…………。
そんな日々の中での、ある 休日……。
2人は 駄菓子屋で買って来た お菓子を交換して、土手の上に座って食べ始めた。
前に遊んだ日に決めた ピクニックである。
…………。
この日も、日が暮れて……。土手沿いを流れる枝川を背にして 土手の上の道まで 2人で昇った。
日樹田の中心部から更に遠く……。
枝川が流れる辺りから離れた遠くには……。この日も山が見える。
夕日が世界を赤く染める中……。なんとなく 2人が その山を数秒 眺めた。
…………。
「 空ちゃん……。山好きなの ?なんか綺麗だよね ? 」
「 確か 4年になったら……。登山遠足で あそこ行くんだ 俺。 」
「 凄い !絶対 お話 聞かせてね ?隊長。
……あと、ケガしちゃダメだよ ? 」
「 大丈夫さ !いつもユイと 探検してるし……。まだまだ先だし。
あ……。そうだ。
お前……。俺が誰だか知らないんだってな ?
俺は……。 」
「 ……わたしも ビュレットハウンド !!
風に乗って弾丸を撃つ 天の猟犬……。空は庭なんだ !! 」
…………。
少年と少女が 親しくなる きっかけの……。映画の中での決め台詞だった。
同時上映の 1本目は……。
Doon !Really ? Ultimate……。
(ドーン リアリー アルティメイト)
2本目は……。
・Hound……。
(ビュレットハウンド)
2種類の映画の片方の映画の ヒーローは、2人の心を 今も掴んでいるらしい。
…………。
「 おい。良いところで割り込むなよな。
それに、また アレンジしただろ。 」
「 えへへ。良いじゃん アレンジしても。わたしも好きなんだもん。
わたし達、ビュレ友だもんね ? 」
…………。
この日以降……。2人の間では……。件の山……。古嶋山林(フルシマ サンリン)への興味が高まると……。
図書館などでも 情報を漁り……。
いつか バスを乗り継いで、
古嶋山林の中の 使われてない鉱山跡に冒険に行こうと 約束を交わすようになる。
…………。
いつものように 土手を拠点に顔を合わせ……。計画を煮詰め……。お小遣いも貯めた。
そんな 日々の中で……。少女が ある不安事項を知ってしまう。
…………。
古嶋山林の別名である。
…………。
通称 お化け山……。どうやら 不思議な事が起きる場所らしく……。
お化け山で 季節外れの桜を見ると……。恐ろしい怪物に見つかり……。見知らぬ場所に連れていかれるのだとか……。
…………。
「 ねえ……。クウちゃん。
もし、本当に お化け山だったら どうする ? 」
「 大丈夫さ。きっと嘘に決まってる。
噂 通りなら、それを広めてる人が 知ってるはずが無いだろ ?
矛盾って言うんだぜ ?そういうの。
それに……。山道の出入り口の近くには、駐在所も あるみたいだし。 」
「 けどさ……。その駐在さん が前に……。
血だらけの人を見たって噂もあるよ ?
血だらけの人は、女の人と子供を連れまわしてたんだって……。ちょっと怖くなってきちゃった。 」
…………。
お化け山の話をしていると 急に雨が振り出し……。
2人は 橋の高架下へと駆けだした。
雨量は多く、激しい悪天候は 音も強い……。少し先の景色すらも灰色にしてしまう。
空気は 一気に冷え込んで……。少女の表情を重くした。
…………。
一般的に……。山の天気が変わりやすいのも有名な話で……。
計画の話をしている時に降り出した 雨の影響もあって、少しだけ及び腰に させたのかもしれない。
…………。
「 なあ。俺が誰かわかるか ? 」
「 空ちゃん ?……急にどうしたの ? 」
「 ……そうじゃない。
けど……。見てろよ ?結衣 ! 」
…………。
少年は……。数秒程 雨音を 橋の高架下から聞くが……。木の枝を拾うと……。
直ぐに 高架下から飛び出して、空に向かって 枝を向けて声高に叫んだ。
…………。
「 どんな天気も どんな心も 俺の弾丸で変えて見せる !!
お前……。俺が誰だか知らないんだってな !?
俺は ビュレットハウンド !!
風に乗って弾丸を撃つ 天の猟犬……。空は俺の庭なんだ !! 」
…………。
少年は 暗い雨雲に向けた 枝で銃を撃つ ふりを何度か繰り返した。
すると……。偶然なのか……。雨の勢いは緩み……。止んでしまうと……。陽光すらも差し込む。
…………。
「 え !?……ほらな ?
見ただろ ?結衣 !俺が一緒なら 大丈夫さ。
俺は ビュレットハウンド !!
どんな心も どんな空も……。俺がいれば 自由自在だ !! 」
「 フフフ。……空ちゃん 今 驚いてたじゃん。 」
「 仕方ないだろ !ビックリしたんだから !
けど、俺が いるだろ ?
何があっても 絶対 大丈夫。な ? 」
「 えへへ。そうかもね。ありがとう 空ちゃん。
さっきは ごめんね ? 」
…………。
本当に天気が変わると思っていなかったのか……。少年が驚いた表情を残したまま……。
ひきつった表情で、得意げに笑い くしゃみをする。
少女には笑顔が戻り……。少年も一緒になって 笑った。
…………。
この日の 乙黒空護が 着ている お気に入りの半袖の Tシャツは……。
殆どが 雨に濡れたからか すっかり くたびれていた が……。
シャツの中央に 印刷されたプリント部分は しっかりと形を残している。
…………。
シャツのプリントでは……。天狗がモチーフの ヒーロー ビュレットハウンドが 凛としていた。
黒い翼と、白い翼……。左右で異なる色の 翼を一枚ずつを持った 赤い面のヒーローが……。
空に向かって 扇を掲げている。
…………。
少年と少女が 親しくなる 手助けをした 空色のシャツだった。
…………。
2人は 今度……。必要な運賃分の お小遣いと時間の準備が整ったら……。
お化け山に 一緒に行こうと 固い約束をした。
そして……。更に月日が過ぎると……。
22災害が発生する。
………………。
…………。
……。
~隠れた敵は~
22災害 当日……。
…………。
最初は 酷い地鳴りが続き……。
どこから現れたのかも わからない 化け物が 地上と上空を埋めつくし 暴れまわっている。
地上には……。単眼の爬虫類が直立したような 異様な怪人や、それらを先導する 数体の怪人が……。
…………。
空では……。中空を走り回る 上半身だけの騎兵が……。
至る所で、建物は倒壊し……。化け物を 倒しに来た 戦闘機は墜落していく。
…………。
混乱が続く日樹田で、どれ程の時間が経過したのか……。
いつも……。顔を見るだけで安心できる 2人が、命からがら 川沿いの 土手に辿り着く。
この時 既に、どちらも両親を亡くしていたのだ。
…………。
先に 土手に辿り着いたのは 少女の方で……。
夢川結衣は……。息苦しさに苛まれる中……。黒翼の怪人と遭遇してしまう。
少年 乙黒空護が、直ぐに割り込み……。少女を護ろうと立ちはだかるが……。
黒翼の怪人が 片方の手で振り払うと 簡単に吹き飛ばされて、少年は気絶してしまった。
…………。
少年は 軽症とは言えず……。裂傷だらけだ……。
少女 夢川結衣は、このまま 黒翼の怪人に命を奪われるのだと……。直観的に感じていた。
ふきとばされた 少年に寄り添い……。震えながら……。息苦しさにも 耐え続ける。
…………。
……。
黒翼の怪人が迫るが……。謎の怪人が 木の剣で割り込んだ。
川の反対岸へと蹴とばすと、激しく争い 更に遠くに消えていく……。
この日の街全体は どこにいっても何かが激しくぶつかっている。何も不思議ではない……。
真紅の体表を持つ……。片手剣と盾を持った……。荒々しい言葉遣いの 怪人だった。
…………。
わけのわからない事の連続と……。度重なる精神的な強い負荷が……。少女の意識を薄れさせていく。
そんな時だった……。
…………。
少年と 少女の元に……。
先程の黒翼の怪人とは異なる 柔らかな空気を持った 白翼の怪人が舞い下りたのだ。
この時の 白翼の怪人が、聴き取りやすい 落ち着いた声で少女に語りかける。
…………。
「 貴女は既に……。稀な奇跡によって 死の淵から 戻ってきている。
それは、貴女の父と母が 自己を 犠牲にしたからこそ……。及ぼされた奇跡……。狙って行えるものではない……。
ドゥークラは それを帳消しにしようと していたのでしょう……。
試練が果たされる前の 稀な奇跡が審判にとっては許せなかった。
貴女は……。生きたいですか ?
このままでは……。貴女の身に起きた神秘の奇跡も 直ぐに底をつくでしょう。 」
「 ……私は どうなっても良い。
う……。空ちゃん が……。空ちゃん に生きてて欲しい……。 」
…………。
少女は……。息も絶え絶えに……。意思を示す。
…………。
「 その 少年が 好きなのですね……。
今の私に助けられるのは、貴女だけです。
そこの少年には……。既に 別のエヌ・ゼルプトが 潜り込んでいる。
少年が ドゥークラを相手に 少しも怯まなかったからでしょう。
死神が それに目を付け……。入り込んでしまった。
傷は……。死神が 直すでしょう。ですが いずれ……。死神は その少年を食いつくしてしまう。
これも光の試練の 1つの形なのかもしれませんね。
貴女は……。これすらも……。どうにかしたいですか ? 」
「 ……お願いします。
私は……。どうなってでも……。空ちゃんを……。助けたい ! 」
「 貴女も 揺るがないのですね……。わかりました。
私は 今の貴女を助けます。
貴女の 父と母が命がけで 呼び戻した その命を……。私が完全に 繋ぎ留めましょう。
ですが この方法は……。まとも ではありません。
間違いなく 今の身体とは 異なる存在になってしまうでしょう。ですが……。
天使型としての 能力を存分に使いこなせれば……。今よりは可能性が望める。
貴女が……。いずれ 少年を助けるのです。
私の代わりに 新たな 恋人のエヌ・ゼルプトとなって……。 」
…………。
少女の身体は……。光の粒に還元され……。白翼の怪人に吸収されると……。
白翼の怪人の 頭上の光輪から、再度 光の粒として排出されていき……。元の少女の形へと戻っていく。
少女の息苦しさは、この時には無くなっていたようで……。少年の横で 静かに息を立てている。
…………。
白翼の怪人は、これを終えると……。全身が崩れ去り……。砕けた欠片は くすんだ色の光の粒となって……。
はるか遠く離れた……。当時の上空に留まる、緑翼の石鎧へと吸い込まれていった。
…………。
この時の少女と 少年の記憶の奥底には……。崩れさる前の白翼の怪人の声が響く。
…………。
「 この日の あなた方の記憶は……。急激に薄れてしまうでしょう。
この日に関わる 多くの記憶にも影響を及ぼすかもしれません。
試練が始まる前後の多くは……。記憶を曖昧にしてしまうのです……。
ですが……。これらを思い出したとき……。試練への干渉が間に合うなら……。
その時こそ 2人で立ち向かってください。
どうか……。自分達を信じて……。トーラのように……。 」
…………。
22災害での出来事は 度重なる精神的な負荷に埋もれていき……。
そして、時が流れた。
…………。
……。
少年は……。強くありたいと……。故郷の為に戦えるようにと……。身体を鍛え……。
少女は……。身寄りも無く施設で育つが……。自然と 多くの知識と学を身に着け……。
互いに 互いの存在を忘れたまま……。APCの特務棟で働くようになる。
…………。
……。
人知れず……。光の試練が進み始めると……。その影響からか……。
白衣の女性 夢川結衣は、かつての記憶を少しずつ蘇らせて エヌ・ゼルプトとして変異しだしだのだ。
…………。
変異が進むほどに 葛藤も強くなるが……。
試練に置いての役割や エヌ・ゼルプトとしての能力についても……。俯瞰的な認識が 強まっていく。
…………。
……。
認識を深める中で……。今回の光の試練における英雄は 神地聖正であるとも知り……。
同時に……。天使型故の認識として……。
今回の試練が 遠からずの内に 失敗に終わるのだと知覚した。
…………。
……。
エヌ・ゼルプトとしての役割から逸脱すれば……。発生してしまう自己破壊現象……。単独崩壊。
これが自信に起こったとしても……。どうにかできないかと……。
出来る限りの 手がかりと 切っ掛けを 残す為に……。自ら失踪し……。後光の鍵の存在を認識する。
…………。
……。
無限の光を作り出せれば……。どうにかなるかもしれない。
…………。
……。
その為には……。隠れた光を……。
いずれ大きな脅威と成りうる 死神と悪魔の存在だけでも……。教えなければ……。
…………。
至る所に……。ナティファーとしての能力で……。生きた記憶を残し続けた……。
1つ 1つは……。微弱で……。時間の経過で摩耗してしまうかもしれないが……。どれか 1つが 希望を繋げれば……。
…………。
……それで良い。
…………。
そして それが……。やっと……。
やっと 繋がった……。あの青年が……。鍵を持つ青年が……。恒星のように どこまでも伸びる光で……。
通り道を 作り出してくれたのである。
…………。
……。
暗く深い……。どこかの奥底で……。出口の見当たらない空間で……。
身動きも取れず……。存在 諸共 消え入りそうな……。風にも似た塊が あった。
次第に 小さくなっていく 風にも似た塊の渦に……。白色の光の粒が近づく……。
白色の光の粒が……。白色の羽根に変わると……。風が少し渦巻き……。勢いを強くした。
…………。
「 ……俺は誰だ ?
何が嘘で……。何が本当なのか……。事実は 1つも混じっていないのかもしれない。 」
…………。
渦巻く風は……。暗い空間の中で……。まだ意識を ハッキリとさせていない。
白色の光の粒が 出入り口に使った この空間の間隙は……。埋もれていき……。再び閉ざされた空間へと変わるが……。
状況は さっきまでと同じでは無かった。
…………。
閉じ込められた誰かの精神とは別の声が……。閉じ込められた誰かと近しい女性の声が 強く呼びかける。
…………。
「 やっと 見つけました……。
丹内さん……。しっかりしてください。貴方は……。 」
「 俺は……。……だれだ ? 」
「 貴方は……。乙黒……。
いいえ。貴方は 丹内空護 !アルバチャスの 1人でしょう ?
しっかりしてください !! 」
「 俺は……。俺が…… ? 」
…………。
閉ざされた空間が 少しずつ明るさを取り戻し……。
誰かの精神の焦点が 研ぎ澄まされていく……。
…………。
「 ……ここは。そうか……。俺は あの日、恵花界が 英雄のマルクトを手にした日に……。
自分の身体を……。あいつらに奪われたのか……。
もしかして……。結衣が 俺を 呼び覚ましてくれたのか ?
……いや もしかすると、俺が こんなになっても精神を食われないで済んだのは……。
前に……。お前が記憶の残滓を、俺に流し込んだからなのか ? 」
…………。
まだ……。薄明りの中の 出入り口の無い 空間だが……。
渦巻く風は……。いつの間にか 坊主頭の筋骨隆々の青年へと 姿を戻し……。
白色の光の粒もまた、白衣の女性 夢川結衣の姿へと 変わっていた。
…………。
「 そうです。私は以前……。
ナティファーとして 丹内さん の中にも記憶の残滓を送り込みました。
……ですが、それでは足りず エスネトや -A-13-にも太刀打ちできなかった。
今こうして 新たに入り込めなければ……。こうして言葉を交わすのも望めなかったでしょう。
……ここまで来るのも、私だけでは 到底 不可能だった。
協力者達は 今も貴方の身体と戦っている……。 」
「 有馬と 十一か……。
結衣……。お前は……。俺の中の記憶の中の幻では無いんだな ? 」
「 前に……。何度か私の姿や声を見聞きしているんでしたね。
もう 気がついているかもしれませんが、アレは 私では無いです……。
アレは エスネトが……。丹内さん の中で 支配率を上げる為に生みだした偶像……。
貴方の記憶に触れているから 私にもわかります……。
アレで 酷く……。精神を追い詰められたんですね。
今まで……。よく戦いました。 」
…………。
2人は これまでの過去を埋めるように 言葉を交わす。
…………。
「 結衣……。俺は まだ戦えるか ?
ここから出て……。自分の身体を取り戻せるか ?
もし そうなら、俺は 戦いたい。教えてくれ ! 」
「 丹内さん なら……。そう言うと思ってましたよ。
私は それを助ける為に ここまで来ました。一緒に 取り戻しましょう。
この世界で……。2つの存在を退けてください。
1つは……。死神のエヌ・ゼルプト エスネトを……。
もう 1つは……。それと拮抗して支配域を広げようとする -A-13-の 根幹 systemを……。
いつもの戦闘処理の要領で、挑めば ここでも戦える筈です。
アルバチャスとして戦っていた時の自分を思い出してください。
それが戦う力を 呼び覚ますはず……。 」
…………。
坊主頭の青年 丹内空護は……。すっかり意識も晴れて……。目には戦意が戻っていた。
先程までは閉ざされていた空間だったが、何もなかった場所に 通り道が発生すると……。
白衣の女性 夢川結衣と共に……。その先へと歩いていく……。
………………。
…………。
……。
~夢と幻想の中の空~
丹内空護は……。夢川結衣と共に 自身の精神世界の中を進んだ。
現実の世界とは異なり……。見覚えのある景色が 現実とは異なる形で 繋がっている。
…………。
中には……。過去の災害が発生する以前の 日樹田の懐かしい景色や……。
現在の ニューヒキダ以降の 記憶に新しい景色も散見された。
…………。
……。
現実の時間とは異なるのだろうが……。体感時間としては 1時間以上は経過したように思えた……。
少しずつ 歪みの範囲が大きい景色へと近づいていく。
夢川結衣からの情報では……。最も大きい歪みがある景色の中心付近に……。退けるべき対象がいるのだとか。
…………。
丹内空護が 自身の身体を取り戻す為に 退けるべき 2つの存在は……。
死神のエヌ・ゼルプト エスネトと……。神地聖正が残した人格の上書き systemの根幹である。
…………。
今近づいている 歪みの中心にいるのは どちらなのか……。
…………。
……。
いつの間にか 2人が進む景色は……。22災害 当時の枝川沿いが元となった景色に変わっていた。
現実と大きく異なるのは……。枝川の水の流れが 完全に止まり……。
凍り付いていないのに その上を 歩ける点だ。
…………。
枝川の水面は 通常の地面と似た感覚で しっかりと安定しているが……。
足が触れると 波紋が広がっていき……。流動性を残しているようだが、決して沈みはしない。
現実の世界をは大きく異なるのだと 直観的に知覚させる。
…………。
空の色は 不自然に黒く……。かといって 視界が悪いわけでもない……。空の色が直接 黒色に塗られたような……。
だだったぴろい 天蓋が おおっている感じにも見える。
…………。
……。
更に進むと……。枝川の川幅が 不自然な形で 真円型に広がった 景色に辿り着いた。
その真円型の 水の流れが止まった川の中心には、2つの存在が激しく 争い合っている。
…………。
……。
片方は……。死神のエヌ・ゼルプトなのか……。姿は -A-13- の形をしており……。
もう片方は……。太陽のアルバチャス……。code-19-の姿をしていた。
…………。
間髪入れずに接近戦を 仕掛けようと動き回る 死神 エスネトと……。
絶えず一定の距離から、B.A.Cupでの 銃射撃を注ぎ込む code-19-が、激しく戦っていたのだ。
死神も 太陽も 互いに譲らず、勢いを 衰えさせない。
…………。
現状では 死神のエスネトが 最も強い支配権を持っているはずで……。この戦況は誤算だった。
…………。
「 丹内さん あの両者を 退ける必要が有ります……。
それも……。根治的に 打ち倒して、僅かな再現性も残してはならない。
準備は良いですか ? 」
「 ここに来るまでに……。code-7-の力を思い出せている。
問題ない。……やってやるさ。
行くぞ !! 結衣 !!……アルバチャス 起動 !! 」
『 Arbachas code-7- !! The Chariot Function !!
( アルバチャス コード セブン !! チャリオット ファンクション !! ) 』
『 Hover Chaser Function !!
( ホバー・チェイサー ファンクション !! ) 』
『 Barrage Armed !! Dual Function !! Cup Sword !!
( バラージ・アームド !! デュアル・ファンクション !! カップ・ソード !! ) 』
…………。
丹内空護は……。戦馬車アルバチャスに姿を変えた。
自身の記憶の中から 使い慣れた 戦う為の形を手繰り寄せたのだ。
…………。
実際に……。実物のデバイス端末が 手元に ある訳では無いが 丹内空護の現実の肉体は……。
複雑な形で、エヌ・ゼルプトや アルバチャスとも混じり合っている 不安定な状態である。
…………。
だからこそ……。その全容が、死神のエヌ・ゼルプトとして完全に定着するまでは……。
あるいは……。死神のアルバチャスとして 完全に染まるまでは……。どれでもないのだ。
…………。
ならば……。自身の肉体や 戦馬車のデバイスに残る 微細なデータでも……。
code-7-として 戦う姿を手繰り寄せられる……。といった具合なのである。
…………。
……。
早々に ホバー滑走で疾駆し……。両手には使い慣れた 2種類の武装を展開した。
戦馬車のアルバチャス code-7-が、死神と太陽に接近し……。攻勢にでるのと殆ど同じくして……。
白衣の女性も 白翼の怪人へと姿を変えて……。赤色の弓を構えて 光の矢を放つ。
…………。
水面を沈まずに歩ける 精神世界の中の 歪な 枝川の 水面の上で……。
死神と 太陽を相手に 三つ巴の激戦が始まる。
…………。
死神 エスネトは 無言で立ち回り……。
太陽からの火球も 戦馬車からの光弾も 身を反らせて避けて見せると、鋭く曲刃で無差別に切り込む。
…………。
太陽のアルバチャスは、片手に握った B.A.Cupから 火球を無数に 放っては周囲の水面を 蒸発させる。
単純な瞬発力も 侮れない速度で、爆炎を起こす打撃が 死神や 白翼へと迫った。
…………。
白翼の怪人 ナティファーも 応戦し……。
赤色の弓に光の刃を這わせては、接近戦においても 負けず劣らずの戦いをして見せる。
…………。
2 対 1 対 1 の三つ巴の乱戦は……。まだ……。誰もが勝敗を譲らない。
…………。
戦馬車のアルバチャス 丹内空護は……。
片腕に備えられた 盾で 太陽からの火球を 粉砕し……。
夢川結衣が 放った光の矢が命中するのと 同時の着弾を狙って、死神に向けて B.A.Cupでの射撃を撃ち込んだ。
…………。
「 ……隙ありだ !! 」
『 Barrage Armed !! Dual Function !! Cup Pentacle !!
( バラージ・アームド !! デュアル・ファンクション !! カップ・ペンタクル !! ) 』
…………。
死神は……。白翼からの 6本中 4本の光の矢を避けるが……。残りの 2本に被弾し……。
戦馬車が 放った B.A.Cupでの 強力な弾丸も命中し……。その身に受けた。
エスネトが 大きくよろめいた瞬間……。太陽のアルバチャスも 動き出す。
…………。
「 助かるよ。2人とも……。
私もね 死神が 邪魔だったんだ……。 」
『 -Twins And Sun- !! event !! Precepts !!
( ツインズ・アンド・サン !! イベント !! プリーセプトゥ !! ) 』
『 Hover Chaser !! Function !!
( ホバー・チェイサー !! ファンクション!! ) 』
『 Barrage Armed !! Function !! Pentacle !!
( バラージ・アームド !! ファンクション !! ペンタクル !! ) 』
…………。
太陽のアルバチャスは 確かに……。神地聖正の声を発し……。
拘束用の能力と B.A.Pentacleによる 出力強化を使用した。
ホバー滑走で 死神に急接近し……。特大の爆炎を 打撃と共に 繰り出す。
…………。
死神は動きを完全に拘束されているのか……。
一切の回避行動も無いまま、遠方まで吹き飛ばされていき 水しぶきと水蒸気が巻き上がる。
…………。
意外な人物の声は、丹内空護と 夢川結衣を驚かせた。
…………。
「 この気配は……。聖正か…… ?只の データじゃないのか ?
お前は……。有馬との戦いに敗れて 完全に消えた筈だろう ?まさか……。 」
「 丹内さん……。そのまさかです。
アルカナの光には それが出来る……。すみません 私も気が付けなかった。
アレは 本人の精神体をデータに混ぜ込んだのでしょう。
恐らく……。
多くのエヌ・ゼルプトの性質を 試練の英雄としての幻視を元に分析し……。
記憶の移送などを……。
自身の復活の為の 手段として取り入れた。しかし……。これは……。 」
…………。
先程まで、只のデータだけだと 思われていた code-19-からは、明確に ある人物の気配が 溢れ始める。
神地聖正……。光の試練における英雄であり……。多くの事象に裏から……。表から関わった人物。
…………。
予想外の その人物の言葉が、嫌な予感を 現実として裏打ちした。
…………。
「 その通り……。
流石……。夢川 君だ……。侮れないな……。
人間に混じり 慎一の補佐としても 多くの功績を残した人材だ。
あの時よりも、もっと速く始末しておくべきだったか……。
こんな場所まで入り込むとは、まるで害虫だな。
折角 厄介な死神を 拘束したというのに……。君達の事だ……。邪魔をするんだろう ? 」
…………。
太陽のアルバチャスが、片手に握った B.A.Cupから 数発の火炎弾を放った。
火炎弾は……。戦馬車のアルバチャスや 白翼のナティファーの 近くの水面に被弾し……。水しぶきと水蒸気を上げる。
水と水蒸気を目くらましに……。神地聖正が……。水上を走り……。ナティファーの懐に飛び込む……。
…………。
夢川結衣に 赤熱した太陽の拳鉄が伸びた。
…………。
丹内空護は、無心で ホバー滑走を操り……。赤熱した拳を盾で弾き飛ばす。
…………。
「 あの時だと ?
結衣の正体を知っていながら……。焼き払ったのか ? 」
「 当たり前だろう ?丹内 君……。
私は 試練の英雄だぞ ?何が討伐対象なのか……。どういったルールなのか……。
どんな抜け道があるのか……。知り尽くしているのさ。
今……。君の中に私が 潜り込んでいるようにねぇ。
……もちろん、この発想は 君の横にいる 怪人の得意分野を 私なりに応用させてもらった。
理屈さえ理解できて 時間さえあれば 造作も無い。
前に……。君の マルクトを使ったときに、
私自身の マルクトから きっかけを仕込ませてもらった。その後は微調整を続けるだけ……。
私は 正真正銘の存在……。データとしてのデッドコピーではない……。
純度 100%の 私……。神地聖正の現身(うつしみ)だ。
オカルトな言い方をするならば……。分霊とでも言おうか……。
私は必ず復活する。
君の肉体を……。死神からも お墨付きを貰った 強靭な素体を元に !!
そして……。英雄として愚衆を導くのだ。
神とは そういうものなのだよ……。何度でも蘇る……。 」
…………。
戦馬車のアルバチャスが、刀剣型武装 B.A.Swordと 射撃用武装 B.A.Cupとの両方で……。
至近距離から、太陽のアルバチャスに反撃の猛襲を仕掛けた。
…………。
神地聖正は 丹内空護からの反撃にも慌てる風でもなく対処し……。
後方へと ホバー滑走で走り 蛇行しながら距離を取った。
…………。
先程……。神地聖正が巻き上げたばかりの 大量の水が それぞれの足元の水面に落下する中……。
太陽のアルバチャスが、更に距離を稼ぎ続け……。話をつづけた。
…………。
「 今……。この精神世界は……。これまでで 最も不安定な状態だ……。
何故か わかるか ?
確かに……。エスネトが 支配権を最も強めた。
だが……。最後に全てが塗り替えられる直前……。その寸前に 有馬 君が……。
不活性化の 光弾を放ったのだ。
アレは エスネトの支配域に 大きな風穴を開けた。
しかも それは……。最も重要な、人体で例えるならば 急所と同等の位置だ……。
最も重要な 精神の中心に届いたのだよ。
そこまで導いて届かせたのは 君だろう ?夢川 君……。
見事……。起死回生の 一手だったね ?
一時的にだが……。争奪戦の最初の状態に 戻したと言っても良い。
今の空を見ろ……。赤々とした 生命の……。太陽の色だ……。
エスネトが 勢いを衰えさせ……。全てが 私に傾き始めている。 」
「 ですが……。まだ確定ではない……。
今なら まだ……。丹内さん にも流れは戻せる !
前のようには いきませんよ ? 」
…………。
決して誰も沈まない 不思議な水面の上を……。神地聖正が ホバー滑走で疾駆するが……。
ナティファーが 赤色の弓から 光の矢を放って反撃する。
常時……。同時に 6本の矢を放てる エヌ・ゼルプトの強襲にも……。太陽は涼しい様子で対処した。
…………。
「 記憶を操る……。精神干渉のエヌ・ゼルプトか……。
なかなかの 力だ……。
だが それこそ 夢物語だ……。
私にも……。今の私にもあるんだよ……。エヌ・ゼルプトとしての力が…… !
無条件で アルバチャスを上回る力がな ! 」
…………。
神地聖正が 不穏な言葉を口にして……。全身から 妖しい光を零れさせる。
…………。
太陽のアルバチャスが 有馬要人との最後の戦いで 見せた姿……。
経緯こそ不明でも いつの間にか身に着けた 凶悪な力……。
丹内空護は……。その言葉の意味を直観的に理解したのか……。即座に妨害の一手を試みた。
…………。
「 聖正 お前は…… !
ここでも 太陽のエヌ・ゼルプトに 成れるのか…… ?……させるか ! 」
『 Hover Chaser Function !!
( ホバー・チェイサー ファンクション !! ) 』
『 Barrage Armed !! Dual Function !! Cup Pentacle !!
( バラージ・アームド !! デュアル・ファンクション !! カップ・ペンタクル !! ) 』
「 残念だねぇ。
私の方が 一手……。速い !! 」
『 Over The Error !! Non Function..
( オーバー・ザ・エラー !! ノン・ファンクション.. ) 』
「 太陽英雄神の…… !!復活だぁあ !!
ウハハハハハハハハハ !!!
我が名は…… !!アポロダイス !!!
新たな肉体を得る為に !!強靭な身体へと転生する為に !!!
この場を 焼け野原にしてくれる !!!! 」
…………。
凶神(まがつかみ)とも呼称される 太陽のエヌ・ゼルプトが……。周囲に熱を振りまく……。
出現と同時に 大気の温度を上げているのか、枝川の水面からは 湯気が上がり始めた。
水面や空気が 激しく振動する。
…………。
死神 エスネトは、今も 太陽によって 集中的に動きを止められているのか……。
遠くの方で、身動きが取れないまま 中空に張り付けられていた。
…………。
そんな中……。凶神が 水面を蹴り 大きく跳躍する……。
丹内空護の懐へと……。太陽の凶神 アポロダイスの赤熱した拳が迫った……。
…………。
「 私こそが……。試練の英雄だ……。
君を消し飛ばして……。私の支配域を 盤石な物とする !!
さらばだ……。code-7-……。 」
…………。
アポロダイスが 上方から殴り伏せる形で 拳を振るう。
極まった熱は……。
拳の形状を残して噴き出す 拳圧となって 水面にまで届き、解放される。
…………。
間欠泉の周りのような熱水の柱から 少し離れた後方……。凶神の対角側には……。
白翼の怪人が、片方の翼を 大きく損壊させて 立っていた。
…………。
周辺には 湯気や水蒸気が立ち込めており……。誰からの視野も 薄らいで見通しは良くない。
…………。
「 身を犠牲にして 丹内 君を護ったのか ?
只の天使型が……。私に 抗うのか……。やめておけ……。
code-7-程度の 戦力したか手繰り寄せられない……。半端な戦士じゃあ 英雄には敵わない。 」
「 そうとも……。言えません。……きっと負けない。
丹内さん は負けない 理由がある……。 」
…………。
白翼の怪人が 自ら 前方へと飛び出し……。無手格闘のまま……。太陽のエヌ・ゼルプトと格闘戦を展開した。
夢川結衣はナティファーとしての姿の拳に、光の矢に込めるのと同等の 硬質なオーラを付与し……。
見た目以上に 高い威力を発揮する 打撃で、神地聖正へと有効打を叩き込む。
迅速で 面積の少ない 殴打は、棒術での打突や 口径の大きな弾丸にも似た 鋭さで打ち出される。
…………。
「 白翼の怪人 ナティファー……。いいや 夢川結衣……。
驚きだよ……。ここまでの接近戦を君が出来るなんてね。
だが……。まだだ……。いや……。まただ……。
また君は私に負けるんだよ……。いき急いだな ?
水蒸気が立ち込める こんな中で、自棄を起こすのも わかるがね……。
得意の光の矢が精密に使えないんじゃあ 仕方がない。
今の君よりも遥かに弱い code-7-を残して、ここで消滅するのだよ。 」
「 アポロダイス……。私はさっき 丹内さん は負けないと……。
理由があると……。そう言ったんです。
私は 悪魔のエヌ・ゼルプトでは ありません。 」
「 何を…… ?ハハハハハ !!
とうとう 気でも触れたか。そんなもの見ればわかる……。
全力も出せない 記憶の残滓が…… !!
私に戯言を……。何度でも 燃やしてやろう !!
そうさ……。もう一度 燃やしてやろう !!完全試合だ !! 」
「 悪魔は よく嘘をつきますが……。
私は さっき、事実を言いました。丹内さん は……。空ちゃん は勝てる !! 」
…………。
太陽のエヌ・ゼルプトは……。白翼の怪人と互角以上に拳闘を繰り返し……。
異常な 破壊力の殴打で 流れを作り始めた。
…………。
「 空……ちゃん ?……何を ?
さっきから 何を言っているんだ !?この化け物が !!弱い人間が 慣れ合うだけの戯言を !! 」
「 化け物は お前の方だ……。聖正。
俺達 人間は、お前には負けない。
アルバチャスの力は常に 誰かを護るために使われるんだ……。 」
…………。
戦馬車のアルバチャス code-7-の手には……。赤色の弓が握られている。
赤色の弓は……。光の粒に変わって 丹内空護の方へと集まっていった。
…………。
『 Unlock Grant !!
( アンロック グラント !! ) 』
「 結衣が 俺に足りない分の力をくれたんだ……。
残り少ない 自身の残滓を犠牲にしてな……。これは俺自身の弱さのせいだ。
俺は……。自身の不甲斐なさを生涯忘れない。 」
『 Arbachas code-7- DAAT !!
( アルバチャス コード セブン ダート!! ) 』
『 The Chariot Extend !!
( ザ・チャリオット エクステンド !! ) 』
…………。
丹内空護は……。赤色の弓からの光の粒を その身に吸収し……。
戦馬車のアルバチャスを 上位の段階へと引き上げる。
…………。
精神世界で 一度は分散させられてしまった 戦う力の全てを引き寄せうるように……。
code-7-DAATへと 姿を変えていった。
…………。
深淵の隠された力 DAATを取り戻した戦馬車は、速やかに ありったけの武装を展開し……。
引き延ばされた時間の中へ ホバー滑走で飛び込み……。走りだす。
…………。
水上を失踪する 戦馬車の両手には B.A.Swordが 2本 鋭く輝いた。
…………。
『 Device Error Factor !! Cross Function !! THE MOON !!
( デバイス エラー ファクター !! クロス・ファンクション !! ムーン !! ) 』
『 Hover Chaser !! Function !!
( ホバー・チェイサー !! ファンクション!! ) 』
『 Barrage Armed !! Dual Function !! Sword Pentacle !!
( バラージ・アームド !! デュアル・ファンクション !! ソード・ペンタクル !! ) 』
『 Defender's Ability And Tactics !!
( ディフェンダーズ アビリティ アンド タクティクス !! ) 』
『 Extend !! Crescent Fighter !!
( エクステンド !! クレッセント・ファイター !! ) 』
「 聖正 !!
お前が 隠している本当の奥の手を !!
俺達が ここで完全に 断ち切ってみせる…… !! 」
…………。
2本の B.A.Swordによる 猛襲で激しく アポロダイスを切り刻んだ……。
ホバー滑走を利用して 一定の距離を保ったまま……。
その場で 独楽のように回転して……。同じ方向に刃の向きを揃えた B.A.Swordで 何度も切り込む。
…………。
戦馬車のアルバチャスが DEF 月 の恩恵を解除し……。
片方の B.A.Swordを……。ホバー滑走の動きの中で 即座に 夢川結衣へと手渡す。
…………。
白色の翼を持つ 夢川結衣と……。白色の鎧で身を包む 丹内空護は……。
阿吽の呼吸で 連携した 攻勢に出た。
その様は……。2つの旋風が吹きすさぶかのうようで……。鮮やかに アポロダイスを圧倒する。
…………。
「 ぐうぁ……。こんな……。馬鹿な…… !!
私が……。こんな こんな 場所で……。馬鹿共に…… !!私は……。英雄だぞ !?
こうなれば……。エスネトの拘束を解いて……。
私も……。音速の……。 」
「 させない…… !!空ちゃん !! 」
「 任せろ !! 」
…………。
神地聖正も -TAS-の能力を切り替えて、時間の引き延ばしで反撃を狙うが……。
夢川結衣からの 鋭い 一閃が 数秒未満の隙を作る。
既に……。白翼は 所々で崩れ始め……。これまでの戦いの激しさが 兆候として出始めていた。
…………。
丹内空護は、即座に 武装を切り替える。
…………。
『 Barrage Armed !! Dual Function !! Cup Pentacle !!
( バラージ・アームド !! デュアル・ファンクション !! カップ・ペンタクル !! ) 』
『 Defender's Ability And Tactics !!
( ディフェンダーズ アビリティ アンド タクティクス !! ) 』
『 Extend !! Meteor Assault !!
( エクステンド !! ミーティア・アサルト !! ) 』
…………。
戦馬車の DAAT 星 の恩恵によって……。B.A.Cupが 2丁出現する。
丹内空護は 先程と動揺に、こなれたホバー滑走で 夢川結衣に片方を手渡し……。
白色の翼と……。白色の鎧の 2者で 鮮やかな射撃を注ぎ込んだ。
…………。
澄んだ空色の 光弾が、幾度となく……。太陽のエヌ・ゼルプトに 浴びせられた。
…………。
つい 今さっきまでの B.A.Swordでの 旋風で 周囲の靄は 薄れており……。
B.A.Cupでの光弾は 充分な威力を発揮している。
…………。
「 聖正……。お前も 馬鹿の 1人なんだよ……。俺達と同じようにな……。
それに……。英雄だって お前だけじゃない……。
只 1人の英雄なんて いないんだ。 」
…………。
丹内空護は ホバー滑走で移動し……。夢川結衣は 残りの翼ではためき……。相互に同程度の移動速度で 立ち回った。
2人は 対角線上の 中心に アポロダイスが 位置する形を維持したまま……。
時計回りに 旋廻し 光弾を注ぎ込む。
…………。
ひとしきり……。光弾を浴びせると……。丹内空護が 行動を変えた。
…………。
『 Barrage Armed !! Dual Function !! Wand Pentacle !!
( バラージ・アームド !! デュアル・ファンクション !! ワンド・ペンタクル !! ) 』
「 結衣 後は任せてくれ……。後は 俺が……。 」
「 私は大丈夫……。アンチェスは……。私が全てを伝えた方が速い……。
全てを取り戻して 空ちゃん。
自分の身体も……。街の日常も……。いつも 一緒だよ。 」
「 ……ありがとう !いつも 一緒だ ! 」
『 Defender's Ability And Tactics !!
( ディフェンダーズ アビリティ アンド タクティクス !! ) 』
『 Extend !! Bishop Ring Tank !!
( エクステンド !! ビショップ・リング・タンク !! ) 』
…………。
戦馬車のアルバチャスが、自身の DAATの中でも 最も高い瞬間火力を発揮する武装を 動作させる。
B.A.Wandの 先端を アポロダイスに向けて……。
巨大な砲身に変化する 杖型武装がブレないように、丹内空護が支え……。夢川結衣も 手を重ねた。
…………。
轟音が鳴ると……。砲身の中の強力なエネルギー弾が アポロダイスを飲み込んだ。
…………。
強大な砲身から放たれた 高密度のエネルギー弾が 辺りの蒸気を 増やす……。
少しだけ風が吹くと……。空の色は 黒と空色が混じり合った 2層の色に別れており……。
…………。
太陽のエヌ・ゼルプトが 完全に影響力を失ったのだと 判別できた。
戦馬車のアルバチャス code-7-DAATの姿は 変わらない ままだが……。傍らには……。
それどころか……。周囲には 一切の人影は見当たらない。
…………。
……。
丹内空護は……。ほんの少し前を思い出す……。
調度……。夢川結衣から 赤色の弓を預けられた 直後だった。
既に 激しく消耗していた その身で 夢川結衣が 神地聖正と……。アポロダイスと接近戦を繰り広げたのだ。
…………。
この時の 赤色の弓からは……。ナティファーとしての能力で メッセージが残されていた。
丹内空護が 自身の身体を取り戻す 唯一無二の方法と……。その理由が 一気に流れ込む。
…………。
他に望める手段は 無かった。
…………。
その方法は……。神地聖正が 自信の精神に同化させていた エヌ・ゼルプト。
法王 アンチェスに対処する 方法……。必要なのは前段階として アポロダイスを撃破する事……。
…………。
…………。
……。
風が時間の経過で 蒸気を払っていくと……。戦馬車のアルバチャスを目指して ある黒い鎧が近づく……。
離れた位置で 中空にはりつけにされていた 死神が拘束から解放されたらしく……。
…………。
死神 エスネトは、丹内空護を目指して走りだし 曲刃を向けている。
…………。
霧が 少しずつ晴れていく……。
戦馬車のアルバチャスが……。DAAT 星を動作させて……。2丁の B.A.Cupから 彗星にも似た 無数の弾丸を放った。
………………。
…………。
……。
~脱却と第一歩と~
空ちゃん よく聞いて……。まずは アポロダイスを倒して……。
そしたら 次は エスネトを……。
…………。
神地聖正が エスネトを拘束していた 手段の根幹……。アンチェスは……。私が 必ず どうにかする……。
だから それが終わるまで……。絶対に負けないで……。
…………。
……。
丹内空護は 赤色の弓を経由して託された記憶を……。思い起こした。
既に 先程受け取った 記憶は独立した意思も持たず……。 呼びかけに呼応する事も無い。
…………。
この世界での……。戦う姿としての 戦馬車のアルバチャスを 支える一部として……。
エスネトに対抗する手段として 完全に融和してしまったのかもしれない。
…………。
……。
死神 エスネトは 感情が無いのか……。一切の息遣いも無く、無言で曲刃を 振るっている。
黒色の一閃が 激しく飛び交い……。戦馬車を苦戦させた。
…………。
最初こそ……。DAAT 星 の武装によって 離れた距離からの 銃射撃を主軸にしていたが……。
死神は 片腕の曲刃のみで 最低限度の 弾丸を切り払い……。ある程度近づくと 被弾も辞さないのか……。
一気に 距離を狭めて 猛襲を仕掛ける。
…………。
丹内空護は、即座に DAAT 月 の武装に切り替えた。
…………。
戦馬車が振るう 2本の B.A.Swordと……。死神が 扱う大鎌にも見紛う 曲刃が……。
激しく ぶつかり続ける。
…………。
どちらの動きを切り取っても 怒涛の様相で……。いつの間にか……。
枝川の水上を それぞれの滑走能力で 並走したまま、何度も何度も 切り結ぶ。
…………。
精神世界の空の色は……。次第に変わっていき……。暗い色が増えているようだった。
丹内空護は それでも尚 焦らず……。落ち着き払って……。死神と切り合う。
無言のまま……。B.A.Swordを振るい続けた……。
…………。
苛烈を極める 切り合いの中で……。今までにない別の気配が漂うと……。
姿すら見えない何者かからの呼びかけが 響く。
…………。
「 君が……。風のマルクトの戦士だね ?
私は アンチェス……。見えないかもしれないが それについては 気にしないでくれ……。
あいにく 今は姿が無くてね……。
本題だが……。君には 風のマルクトに眠る 全てを託そうと思う。
月の力を……。遺物型の中でも 特異な力を 今から君に託す……。
但し、使いこなせるかは 君しだいだ……。
失敗すれば……。エスネトが全てを手にしてしまうだろう。使ってみるがいい……。 」
…………。
精神世界の空には……。綺麗な真円の月が輝く。
程なくして……。死神と 戦馬車との間で 勝敗が決まる。
…………。
……。
………………。
…………。
……。
J-06 地区……。車線の多い拡幅の有る道路の 大きな交差点……。
怪人 エヌ・ゼルプトの反応が 今も 3体分存在しており、2人の青年が苦戦を強いられていた。
…………。
……。
青年 有馬要人は……。愚者のアルバチャス code-0-DAAT の能力によって……。
実体の有る 10体以上の分身を 常に出し続ける。
…………。
白衣の青年 天瀬十一は……。正義と剛克の発展型 ジャスティフォースに備えられた 強力な雷 精製能力と……。
極光の大剣 エビル・バスターによって 複数の怪人と やり合った。
…………。
……。
周辺区域での 避難は 既に完了しているが……。
つい先ほど……。10分足らず前から……。この場での戦いは 苛烈を極め 緊張感を加速させる。
…………。
要因は 2体の怪人……。黒翼の怪人 ドゥークラと……。緑翼の石鎧 イェルクス……。
この 2体が……。青年 有馬要人の ある行動以降に 激しく猛威を振るい始めたのだ。
調度……。有馬要人が、死神 エスネトに 不活性化の光弾を注ぎ込んだ後から この兆しが如実になる。
…………。
黒翼の怪人 ドゥークラは、大量の 黒色の羽根を 無尽蔵に 放ち……。
緑翼の石鎧 イェルクスは、掌や翼の先端等 全身の至る箇所から 極彩色の光弾や 光線を放出した。
…………。
2体の 強敵との混戦でも……。2人の青年の後方には ある 1体のエヌ・ゼルプトが 今も沈黙している。
…………。
死神 エスネト……。有馬要人が 不活性化の光弾を注ぎ込んだ エヌ・ゼルプトだ。
エスネトは それ以降……。沈黙し この時も 黒色の靄に 包まれている。
…………。
「 贋作の戦士達よ……。諦めるのだな。
既に エスネトの変異は 最後の段階にある。愚者が行った 足掻きなど……。児戯にもならん。
だというのに……。何故 そこで立ちはだかる ? 」
…………。
ドゥークラからの 言葉による 揺さぶりと……。
黒色の羽根や殴打での 応酬が、有馬要人と 天瀬十一に向けられた。
…………。
相も変わらず 重く速い打撃なようで、愚者の数体の分身体を 容易く消滅させてしてしまう。
…………。
「 ……それは どうかな ?まだ完全に結果は出ていない。
俺達は アルバチャスだ……。空護さん だって……。きっと まだ……。 」
「 有馬 君……。俺が 出来る限り時間を稼ぐ……。
もう一度……。DEF 星で広域に 不活性化を…… !悪あがきは 何度やったっていい。 」
…………。
2人の青年は奮起し……。先程から何度か行っている 打開策を繰り返そうと足並みを揃える。
…………。
黒色の羽根と同様に……。極彩色の光弾も飛び交い……。
ジャスティフォースは 光弾の何発かを切り払った。
…………。
「 汝、水のマルクト如きで……。
我だけでは 飽き足らず、イェルクス様にも仇を成せると思っているのか ?
なんとも のん気な……。甘く見られたな。 」
「 逆だよ……。甘くなんて 見ていない……。だから それぞれに長けた分野を任せ合うんだ !!
有馬 君 !!……頼んだよ !! 」
『 Hover Chaser Function !!
( ホバー・チェイサー ファンクション !! ) 』
『 Extend !! Force of Bastard !!
( エクステンド !! フォース オブ バスタード !! ) 』
…………。
天瀬十一が 極光の大剣に 白群色の雷を まとわせて……。ホバー滑走で乱舞した。
黒翼の怪人からは 黒色の羽根で……。緑翼の石鎧からは 極彩色の光弾が……。反撃に浴びせられる。
…………。
そんな中での変化だった……。
有馬要人が 即座に DAAT の機能を切り替えようとした時……。分身を解除した矢先……。
エスネトが包まれている黒色の霞から 何かが現れ……。片手の一振りで 霞を払う。
…………。
何かの姿は 死神 エスネトとは異なるが……。戦馬車の面影はなく……。全身を包む 漆黒の鎧が禍々しさを漂わせる。
禍々しい 漆黒の鎧の合間には 白色系統の光が鳴動していた。
…………。
「 ……空護さん ? 」
…………。
青年 有馬要人でさえも……。面を食らい……。戦いの場で 数秒の隙を作ってしまう。
黒翼の怪人は 何かを察したのか……。イェルクスと共に 高く飛び上がった。
緑翼の石鎧が 更に高度を上げるが……。ドゥークラは、一定の高さに留まり……。黒色の羽根を無数に射出する。
…………。
触れれば爆発する 黒色の羽根が……。有馬要人と 天瀬十一を 上空の全方位から取り囲む形で 立ち並んだ。
…………。
「 汝ら……。土と 水も……。これで 終わりだ……。
よもや 再三の 復活も ありはしない。この度の 試練の英雄は……。完全に潰えた。 」
…………。
有馬要人も……。天瀬十一も……。突如 出現した 漆黒の鎧に……。判断を遅らせてしまう。
文字通り無数の 数えきれない 黒色の羽根が……。飛来する。
…………。
しかし、無数の羽根は……。薄い空色の光の壁に阻まれて……。動きを静止させた。
…………。
『 Extend !! Testudo Panselinos !!
( エクステンド !! テストゥドゥ・パンセリノス !! ) 』
「 ドゥークラ……。お前にも 多くの借りがあったな……。
有馬や 十一も……。やらせはしない……。 」
…………。
漆黒の鎧の何者かが……。何かを発動した。
光の壁を 出現させたであろう その何者かは……。2人の青年にとって 聞き覚えのある声を発する。
…………。
有馬要人にしても……。天瀬十一にしても……。情報が不足しており 状況把握もままならない様子だ。
…………。
「 なんだ……。これ……。羽根が途中で止まって……。
本当に 空護さん ? 」
「 強力な 光の障壁……。つまり高密度のバリアで抑えているのか……。
こんな事できるのか…… ?
俺も知らない systemが……。どうして……。本当に空護なのか ? 」
…………。
驚愕する声に……。
漆黒の鎧の戦士が……。応える。
…………。
「 有馬も……。十一も……。皆の お陰で帰ってこれたんだ……。
後は 俺に任せてくれ。 」
『 Not exist gun !! Function !!
( ノット・イグジスト・ガン !! ファンクション !! ) 』
『 Extend !! Uni Pilum Verriculum !!
( エクステンド !! ユニ・ピルム・ヴェリクルム !! ) 』
…………。
丹内空護の声が 確かに発せられた。
漆黒の鎧の戦士が 即座に何かを動作させると……。手元には銃にも似た武具が取り出される。
…………。
黒色の銃にも似た 武具は、白色の光を鳴動させており……。
内部から 銃口のような先端に向けて、光が流れているようだった。
…………。
黒色の羽根を止めた 光の壁は ドゥークラを包み込む 強大な球状だったらしく……。真球型の形状を 保って収縮していく。
バリア球は、無数の羽根と 黒翼の怪人 諸共……。中空で握り拳 程まで圧縮されてしまう。
…………。
漆黒の鎧の戦士 丹内空護が、黒色の武具の銃口を バリア弾に向けて……。引き金を握った。
…………。
ドゥークラが 圧縮された位置では……。
連鎖的な爆発音が幾度となく発生するが……。圧縮された障壁は 形状も変えずに留まっている。
…………。
「 まだ 足りないだろうな……。ならば……。
この姿での 最大級を ぶちこむ。 」
『 Hover Chaser Function !!
( ホバー・チェイサー ファンクション !! ) 』
…………。
丹内空護が……。ホバー機能で 疾走し……。この辺りで最も拡幅の広い 辺りを走り抜けた。
速度を更に上げて 途中で跳躍すると 別の武装を起動する。
…………。
『 Extend !! La Garita Quadriga !!
( エクステンド !! ラ・ガリータ・クアドリカ !! ) 』
…………。
黒色の銃にも似た武具を放り投げると、武具は アルカナの光を吸収し 大型の何かへと変形していく。
これに丹内空護が騎乗すると……。
ドゥークラと イェルクスが留まっている 位置に向けて勢いよく 飛び立った。
…………。
4頭の馬の意匠が目立つ 黒色の戦車が……。空を走り……。大きな砲身を イェルクスに向ける。
すると タイミングを合わせたように、先程の 光の障壁に圧縮され 爆発音を発生させた位置から……。
ドゥークラが 吐き出された。
…………。
黒翼の怪人は これまでにない程に 消耗しているのか……。全身には亀裂が走り……。大きな翼には欠損も見られる。
…………。
「 我が……。こんな事は……。あり得ぬ……。
英雄のマルクトでもない 3つの贋作が何故こうも……。想定外の効果を……。 」
…………。
ニューヒキダの中空では……。黒翼の怪人と 緑翼の石鎧が、黒馬の戦車の射線上に納まった。
…………。
「 俺にも やっと理解できた。
光の試練と アルカナの秘密だ……。だが……。だからこそ 今の状況にも合点がいく。
ドゥークラ……。イェルクス……。今の俺の全力だ 喰らえ……。 」
『 Function !! Cataphract Feggari !!
( ファンクション !! カタフラクト・フェンガーリ !! ) 』
…………。
漆黒の鎧の戦士が……。黒馬型戦車の砲身から……。高密度のエネルギー弾を解き放つ。
重装騎兵の形状をした 高密度のエネルギーが 猛進していき、2体の怪人を飲み込んで燃焼させた……。
…………。
丹内空護の心の奥では……。
多くの出来事が 過ぎ去ったが……。中でも ある日の幼馴染との思い出が色濃く映る。
そのせいか……。誰からも知られない 頭部マスクの中で……。
…………。
知らぬ間に 涙が流れていた。
…………。
「 空は……。俺の庭か……。
結衣……。ありがとう。俺も お前が好きだ……。
これからも 全力で街を護り続けよう。 」
…………。
漆黒の鎧の戦士が……。
黒馬の戦車に跨って……。自分にだけ聞こえる程度の声で……。誓いと感謝を言葉にする。
…………。
2体のエヌ・ゼルプトが 高密度のエネルギー波動に飲み込まれ……。
ニューヒキダ全域から 気配を消した。
………………。
…………。
……。
- 前 回
- 次 回