- 38話 -
永遠不滅のシリウス
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目次
~空虚からの~
ある日の早朝……。
青年 有馬要人(アリマ カナト)は……。
目を覚ます前の混濁した感覚の中で……。未開の情報量に さらされる。
…………。
まどろみの中での気配には、真新しさや 異質さを感じる風でも無いが……。知らない筈の情報群の連続だった。
知っている誰かにも似た、何かしらを 感じるが……。
明確に 特定するには 至らない。
…………。
気配は……。聞き覚えのある 声で語りかける。
…………。
知性を感じさせる……。声だった。
…………。
……。
あれからも……。地力の向上に努め……。ギリギリの所で 留まり続けたんですね。
マルクトを使いこなし……。何度も何度も 判断の取り違いをせず……。鍵すらも手放さずに……。
…………。
それでも、悪魔は目を覚まし……。死神が形を成そうとしている。
…………。
試練の英雄が消え去れば……。正規の規定に則って 終わりが 履行されてしまうでしょう……。
ですが……。まだ焦らないでください。
まだ……。立ち止まらないでください。
…………。
試練の英雄が存在しない ままでも……。
鍵が……。無限の光を生みだせば……。最後の道へと至れるでしょう。
…………。
無限の光に必要な最後の 1つは……。死神に飲み込まれそうになっている。
だから 私を……。その根幹に送ってください。
…………。
貴方が扱う 深淵の月なら……。それが出来る筈……。
…………。
……。
声と気配は、いつの間にか遠のいていき……。
印象的な 白色の翼が漠然とした記憶に焼き付いた。
暖かな光の残滓を 感じ取り……。刹那的な記憶として これを埋もれさせる。
…………。
APCが用意した 宿舎の中の……。青年の部屋では……。
まだ、静かな寝息が聞こえるだけの空間で、寝台の近くに置かれたドリームキャッチャーすらもが、微弱な光を放つ。
カーテンの隙間からは、夜明けの日差しが零れて 昨日までとは異なる今日を主張する。
…………。
……。
この日……。
青年 有馬要人が、目を覚ましてからの 数時間後……。
…………。
複数の怪人エイオスが出現した。
エヌ・ゼルプトにしても、現在の特務棟で危惧されている中での 3体が出現し……。
ピップコートの数も……。まとまった形で 群を無す。
青年が見た夢は……。この日から始まる 試練の終局に大きく関わっていく。
………………。
…………。
……。
~激烈~
ニューヒキダの各地で エヌ・ゼルプトと ピップコートが出現し……。
APC 特務棟所属の 実動班は継続的に、戦闘処理や 避難誘導への対処に追われ続ける。
…………。
……。
まだ、青空に月が残る 速い時間の強襲……。
彼誰五班の面々は、編成を分けて 2つの戦地へと 急行する。
…………。
……。
2つの戦地の片方……。G-15地区を目指して 22人の レヴル・ロウが ホバー滑走で進む。
22人は……。彼誰五班の第二班 第四班の総力で作られた 合一編成である。
…………。
武装は……。小銃型武装デバイス R,R,G を 11人が携行し……。
小剣型武装デバイス L,L,E を残りの 11人が 手にしているようだ。
…………。
元来……。彼誰五班の 第二班にしても 第四班にしても……。分班長の 頭数を除けば……。
小剣 L,L,E の数も、小銃 R,R,G の数も同数で、5人ずつの 総計 10人で編成される。
…………。
しかし、昨今……。その両班が合同での活動や 訓練も増え……。
以前よりも 分班長 通しの連携も強くなった為……。
合一編成を行う際には、各武装を担当する人員の 一部を入れ替える形式が取られていた。
…………。
つまり……。第二班や 第四班として 従来の分班での活動時は 既存の人員と編成で活動するが……。
合一編成の場合のみ……。それぞれの班から、得意な武装で 人員を振り分け……。
再編成を行うようになったのである。
…………。
……。
大代大(オオシロ マサル)が 班長を務める 第二班では……。小剣型武装デバイス L,L,E を扱う 班員が集められ……。
荒井一志(アライ カズシ)が 班長を務める 第四班では……。小銃型武装デバイス R,R,G の使い手が統制された。
…………。
……。
この方針は……。大代大と 荒井一志らが 互いに考えを巡らせ……。
号令時の簡略化と、状況に合わせての 特化型の編成として より高い戦果を上げる目的で取り入れられたものだ。
…………。
第二班と 第四班の どちらの練度に 差があっても、最大限の効果は発揮できない 編成 案だが……。
大代大が 主導して行った錬成で、集団戦闘での連携を強めた件が 良い結果につながったのである。
…………。
また、これを機に……。両 分班長の携行武装にも 変化があった。
こちらは……。合一編成時の 立ち回りを想定した 形式で固定化され……。
既存の武装デバイスの 絶対数も考慮して 決定づけられている。
…………。
……。
大代大の 固定武装は……。小剣型武装デバイス L,L,E となり……。
荒井一志は 小銃型武装デバイス R,R,G へと、使用武装の固定化が 成された。
…………。
……。
この取り組みには 主な狙いは……。
編成の切り替えを行った際に、それぞれの班員が 直観的にも判断しやすいようにする象徴的なものだ。
…………。
大代大も、荒井一志も……。得意な武装、苦手な武装共に 殆ど偏りが無いからこそ可能な取り組みである。
両 分班長の 偏りのない 武装への認識は……。戦闘処理に置いての行動指針にも影響した。
…………。
具体的に上げるのであれば……。
…………。
合一編成での活動時は、分班毎の担当武装の取り扱いに 特化した判断を……。
既存の個別分班編成では……。標準通りの バランス型の混成班に 適切な連携や行動基準を 使い分けられるのだ。
…………。
……。
合一編成 22人が 今回の活動予定地に近づくと……。
第二班班長 大代大が、両班の人員に ボイスチャットでの 号令を掛ける。
…………。
「 彼誰五班 第二班長 大代大より……。
第二班第四班 !!合一編成総員に通達 !!
我々は……。間も無く 件の G-15地区に到着する。
今回 予定される戦闘処理 対象は……。
悪魔のエヌ・ゼルプトが 1体。ピップコートの総数は不明だ。
地上には ソード・ペイジ 及び ワンド・ペイジが散見され……。
空中 地表付近には、ワンド・ナイト 及び ペンタクル・ナイトが無数に確認されている。
初動については……。
近接編成は、ペイジ型の掃討を基調とした動きで 規定規模の安全確保を行う !!
常に 緊急時の避難誘導用 経路を確保しろ。
射撃編成は、ナイト型への警戒を怠らず 近接編成の初動の 補助を行い……。
第二班第四班 合一編成 全体の、ホバー滑走範囲の拡大に努めて動線を意識して制圧範囲の拡大に務める !!
エヌ・ゼルプトの対処については 一切の攻撃を仕掛けるな。
こちらについては、丸七型 2名を持って対処に当たる。
後々の避難誘導については 専門の後方班が 遅れて到着する為……。
仮の 警護地点を早期に選定し、これを防衛の中心に置く。
以上 !!各員……。健闘を祈る !! 」
…………。
今回の戦闘処理を行うにあたり……。
特務棟を出発する以前にも 概要の通達を行われていたが……。
目的の地点に到着する前の 最終確認として、ひとしきりの連絡が行き届いた。
…………。
大代大は……。
丸七型 頭部マスクの内側の 視認センサーで、ボイスチャットのチャンネルを切り替える。
…………。
第二班第四班合一編成 全体用の チャンネルから……。
生真面目な青年 荒井一志との 単独に戻すと、目的地到着までの短い時間で 言葉を交わす。
…………。
「 こんな所か……。
荒井 君……。今 ボイスチャットを マンツーマンに切り替えた。
何か気になる点はあるかい ? 」
「 お疲れ様です。流石の陣頭指揮ですね。
自分の方は別段 気になる点は……。
もし上げるとすれば、やはり 自分達が交戦する悪魔が 本物かどうか でしょうか。
仁科 C.E.O代理からの情報では……。
有馬さん も、天瀬さん も……。もう戦っているようです。
どっちの レトが本体なのかで、戦況は大きく変わってしまう。 」
…………。
現在……。
合一編成が 向かう地区では……。数 対 数の 集団戦闘が 想定されている。
…………。
こちらとは逆に……。
別行動を行っている 有馬要人と 天瀬十一が向かった場所では……。エヌ・ゼルプトの反応が 3体分。
その 3体分の反応の中にも 悪魔 レトの 存在が確認されているのだ。
…………。
どちらかに 本体が出現しているのか、それとも……。未だに本体は出現せず……。
隠れた場所から 分身体を投入しているのか……。
数の変化は……。大きな不確定事項として 想定を覆しかねない。
…………。
「 僕の指揮能力は まだまださ。けど、ありがとう。
あっちの方は……。
J-06 は、ピップコートこそ出現していなくても、エヌ・ゼルプトの反応が 3体分……。
僕も複雑な気持ちだけど、ここまで来たら 2人の判断に託すのみだ。
その為には……。 」
「 ……そうですね。
自分達の 今回の持ち場で イレギュラーを 発生させる訳にはいかない。 」
…………。
2人の分班長の言葉尻には 確かな戦意が漂う。
…………。
ホバー滑走で 疾駆する中で、景色は 移ろいでいき……。
複数の 農業用の資材置き場が視界に入る。
…………。
大代大は……。丸七型用に調整された、小剣型武装デバイス L,L,E の柄を しっかりと握り……。
荒井一志も……。小銃型武装デバイス R,R,G を保持する 両腕の力加減を 肩のあたりから整えなおした。
…………。
「 ……そろそろ 見えてくるな。
荒井 君……。一度 チャンネルをオープンに戻す……。僕らも やるぞ !!
第二班第四班合一編成の総員に通達 !!
初動は先んじて 伝達したとおりだ !!
これは訓練では無いが、実戦は我々にとって日常だ。萎縮する物でもない !!
各員 全力を持って 事に当たれ !!
以上 !!……掛かれ !! 」
…………。
大型車両も 悠々と往来できる 見通しの広い景色の中……。
温和そうな青年 大代大からの 力強い号令が 掛かる。
合一編成は……。ホバー機能を 持続させたまま、速やかに動き出していった。
…………。
銃射撃編成の 第四班は、光弾を飛ばし……。道中の ペイジ型へと 先制攻撃を仕掛け……。
近接戦闘編成の 第二班が、これに続く形で 流れるように切り込んでは、爆散させていく。
…………。
飛翔能力を持つ ナイト型からの妨害も、適時 対処された。
火球を 打ち出そうとする ワンド・ナイトには、第四班からの 弾幕が飛び交い……。
中空からの体当たりや 盾としての妨害を狙う ペンタクル・ナイトには、第二班が 近接格闘で相対する。
…………。
G-15地区では 混戦が深まっていく……。
…………。
……。
ピップコートと レヴル・ロウによる 数と連携の入り乱れる戦いを、あるエヌ・ゼルプトが傍観していた。
離れた位置の 高さのある坂道の上からの観戦だ。
…………。
「 俺ボクの方には 2人と皆か……。
嬉しいよ。前は……。この中で 一志しか会いに来てくれなかった。 」
…………。
不敵に言い含む悪魔の元に……。2つの分班の 班長が 到着する。
真っ先に動き出したのは、接近戦に対応した武装の 大代大だった。
丸七型用の 小剣型武装デバイス L,L,E を交えた格闘戦を仕掛ける。
…………。
「 もう……。声くらいしか 可愛い後輩の 面影は残っていないか。
けど、元々 恵花界は 既に存在しない人物……。
藤崎さん には 僕も お世話になったし……。
何より、息子さん の命を奪って なりすましたのが事実なら……。
優しくは……。できないな !! 」
「 確かに !大代 先輩は 木田さん よりも優しい指導が多くて助かりました。
俺ボクとしては、同期の次に好きかもしれません。
所で……。ハハハ。気になるんでしょ ?
俺ボク私の本体が どっちにいるのか……。 」
…………。
悪魔は……。数発の 打撃だけを身に受けて……。
小剣からの鋭利な 横薙ぎや刺突を 避けてみせる。
…………。
打撃だけを わざとらしく 耐え続けて……。
背面から延びる、節足動物の脚にも か細い枝にも見える ギミックで反撃に出た。
指揮距離から焼き払おうとしているのか、火球を貯え育て始めるが……。
…………。
大代大が ホバー滑走で 後方に離脱すると……。
小銃型武装デバイス R,R,G からの光弾が 火球に 集中的に注ぎ込まれ暴発する。
もう 1人の分班長 荒井一志からの 銃射撃だった。
…………。
「 どっちが本物だったとしても……。自分達の役回りは変わらない
実動班は エイオスと戦う為に存在する。
前にも話した筈です レト !! 」
「 ……ハハハ。本物はね 俺ボク私だよ !?
楽しもう ?折角の良い日だ。
今日 試練は大きく動く……。 」
…………。
悪魔の高笑いが響くが……。
2人の 分班長は、気圧される事も無く 身構え、白熱した戦いを加速させる。
G-15地区での 決着は まだ見えない。
………………。
…………。
……。
~希望は…~
J-06 地区……。大型のショッピング施設も近い、車線の多い道路の 大きな交差点には……。
エヌ・ゼルプトの反応が 3体分存在しており、2人の戦士が奮戦していた。
…………。
『 Device Error Factor !! Cross Function !! THE MOON !!
( デバイス エラー ファクター !! クロス・ファンクション !! ムーン !! ) 』
『 Barrage Armed !! Dual Function !! Wand Pentacle !!
( バラージ・アームド !! デュアル・ファンクション !! ワンド・ペンタクル !! ) 』
…………。
愚者のアルバチャス code-0-DAAT……。有馬要人が勢いよく 交差点上の中空に飛び出す。
杖型武装 B.A.Wandに立ち乗りして飛翔する様は こなれている。
地上から離れる直前に DEF 月 の恩恵によって、活動 時間域を引き延ばし……。
通常の時間軸からは 高速移動にも見まがえる挙動で、空へと飛び出したのだ。
…………。
『 Defender's Ability And Tactics !!
( ディフェンダーズ アビリティ アンド タクティクス !! ) 』
『 Extend !! Trick Ster ter !!
( エクステンド !! トリック・スター・ター !! ) 』
…………。
青年 有馬要人が、中空で 速やかに別の機能を使用する。
直前には、自身の身体の向きを 地上の側に向けており……。
黒翼の怪人 ドゥークラと 悪魔 レトに狙いを定めているのだろう。
…………。
code-0-DAATの腰部側面のセンサーに片手を かざして……。
DAAT 星 による 実体の伴う分身を中空で作り出した。
…………。
黒翼の怪人 ドゥークラと、悪魔 レトには……。上空から 無数の蹴りが降り注ぐ。
愚者のアルバチャスが、2体のエヌ・ゼルプトの上方から 分身を次々と 発生させ……。
分身達は、それぞれが身を挺した 1度きりの渾身の蹴りを繰り出しているようだった。
エヌ・ゼルプトらに これが命中するか どうかも関係なく、地上付近まで降り注ぐと 分身体は消滅している。
…………。
青年は、実体を伴う飛び蹴りの流星群が、捨て身の攻撃で消滅する度に 次の分身を出現させ……。
短時間で 17体の分身を 絶えず出し続けていたのだ。
…………。
それも……。引き延ばされた時間からの流動的な 奇襲である。
…………。
実際に、蹴りの流星群が降り注いだ時間は短かったが……。確実に ドゥークラと レトの意表を突いた。
…………。
……。
地上では……。
愚者の青年が奮起する辺りから少し離れて……。
…………。
正義と剛克の発展型 ジャスティフォース……。天瀬十一が……。
極光の大剣 エビル・バスターを振るって、俊敏に動き回る 黒色の影と戦う。
…………。
黒色の影は……。
Z字の鋭角的な挙動の繰り返しで滑走し、立ち回っているが……。その速度は 目を見張るものがあり……。
天瀬十一の ジャスティフォースよりも 数段 上の速度のようだ。
…………。
黒色の影は、死神のエヌ・ゼルプト エスネトであり……。
同時に 死神のアルバチャスとしての名前と姿を 混在させる存在である。
アルバチャスとしての名称は……。
-Absolute-13- ……。
(アブソリュート サーティーン)
試練の英雄 神地聖正が 残した、復活の切り札に相当する 人体 乗っ取り systemだ。
…………。
アルバチャスとしての死神が 独自の能力として……。打撃にも斬撃を付与するからなのか……。
ジャスティフォースの背後からも 拳を繰り出しては、斬撃の礫(つぶて)をぶつける。
…………。
片腕の側面から伸びる 曲刃での強襲も鋭い。
…………。
死神からの、これまで以上に 能動的な猛追が 天瀬十一を襲うが……。
冷静に一撃一撃に対処し 相対した。
極光の大剣による広範囲の横薙ぎ で、白群色の雷が帯びる拳で……。
自信よりも速い相手の動きを見極める。
…………。
-A-13-に備えられた 加速能力……。
Creeping 13 にしても……。
( クリーピング・サーティン )
打撃への斬撃付与と 曲刃の強化機能……。
Blade+ は 驚異的な性能を体現しているようだった。
( ブレイド・プラス )
…………。
特に……。曲刃での 一振りは、死神の鎌に相応しい 破壊力があるらしい。
耐久性の高い ジャスティフォースでなければ、1秒足らずの判断を誤っただけで、致命傷に直結しかねない。
…………。
「 -JFC-に……。DEF のような擬似加速能力は無い……。
だが……。それを補う手段は有している。 」
…………。
ジャスティフォースは……。
極光の大剣 エビル・バスターを 自身の真ん前の地面に突き刺し……。
腰部側面のセンサーに かざした掌を 大剣の塚頭に当てがい、これを動作させた。
…………。
『 Extend !! Thunder Roar !!
( エクステンド !! サンダー ロア !! ) 』
…………。
獅子の咆哮にも似た 雷鳴が轟き……。
天瀬十一の周辺には 強力な電荷の大渦が広がる。
…………。
大剣の長尺が 2本分は 納まる程度の半径の大渦は、死神をも飲み込んだ。
…………。
……。
J-06 地区の、複数の車線を持つ 広い道路の交差点では……。
この時も、エヌ・ゼルプトの反応が 3体分 存在している。
戦馬車のアルバチャスの 識別反応は、今も微弱で 消え入りそうな状態だ。
…………。
今回の目的は……。エヌ・ゼルプトの脅威を退ける戦闘処理も 前提とされているが……。
有馬要人にしても、天瀬十一にしても……。もう 1つの目的があった。
前回……。完遂出来なかった目的……。エスネトの鹵獲である。
…………。
突発的な状況は いつ発生するか わからない……。前回の イェルクスが そうだったように……。
…………。
ならば……。これを完遂できる 最後の機会が、この日で最後かもしれない。
常に最悪を想定し、多くの手段の中から 最も その時に効果を望める 選択を探る。
…………。
もしも、この日の戦闘処理の中で 鹵獲を狙うのなら……。やはり、死神と相対するのは 天瀬十一が……。
この間の 足止めと 主だった戦闘は 有馬要人が……。
青年達は、事前に決められた通りのオペレーションで、全力を尽くした。
…………。
「 先輩……。ちゃんと戦ってます ?
俺ボクの負担が、若干 大きい気がするんですけど……。
あっちも こっちもですよ ? 」
…………。
悪魔のエヌ・ゼルプト レト が、飄々とした口ぶりで もう 1体へと不服を漏らす。
件の 1体……。黒翼の怪人 ドゥークラは……。
愚者のアルバチャス からの猛襲を 徒手空拳で応戦する合間に……。応答するが……。
返す言葉で、ある前例を理由にしては 釘を刺した。
…………。
「 汝 レト……。天使型と言えども、正規の役割を持たぬのが悪魔だ。
なれば、我と同等の 訳が無いだろう ?
次に 汝が窮地に陥った時……。
もしくは、試練を捻じ曲げようとした時……。
我が再起不能を与えるのだ。
下手な考えを 起こさない方が 賢明ではないか ? 」
「 堅物で 束縛する感じですよね……。本当に。
一応、非正規でも役割 ありますからね ?俺ボクも……。
……エスネトでも 助けに行きますか。
ん ?いやいや……。
これは……。ハハハ。 」
…………。
悪魔 レトは、手痛い筈の 指摘にも 動じることなく……。
それどころか、気分転換気味の 軽い調子で、別の行動に移ろうと動き出す。
しかし……。悪魔の足取りは 意外な形で止まった。
…………。
レトが 何かに気がついたらしく……。その声は異常なまでに高揚する。
…………。
「 ヘイヘイヘイ。
有馬要人 !!天瀬十一 !!
注目 !!
俺ボク私からの優しさで……。お知らせがぁ……。有るよ ?
一旦、休憩だと思ってさ……。お話ししよ ?疲れるでしょう ?
気ぃ 張り続けるのもさ……。 」
…………。
悪魔が 興奮気味の口ぶりで、何かを誘引する。
…………。
青年 有馬要人は……。
DEF 月 を既に解除したいたが、地上からも ホバー走行を交えた 迅速な応酬を繰り広げる。
スラローム移動での 中断蹴りに DAAT 星 を掛け合わせ……。分身体を 弾丸のようにして 打ち出した。
…………。
「 レト……。俺達が 何をしようとしているのか、知っているんだろう ?
阻害する為に 言葉だけでの時間稼ぎをしたいなら……。 」
「 ……優しさだって言ったじゃないですか。
俺ボクって 本当に信用無いのかな ちょっと悲しいかも。
けどね、時間 稼ぎは もう いらないんですよ。
意味……。わかります ?
答え合わせしましょうか ?
丹内空護にしろ……。神地聖正にしろ……。
どっちも もう手遅れの範囲に入りました。……調度 今です。 」
…………。
死神のエヌ・ゼルプトの浸食率に 関連していると思われるが……。
悪魔からの情報は 真偽が不明だ。
…………。
天瀬十一が、悪魔からの 悪報に反論する。
…………。
「 確かに、デバイスからの……。空護の生体識別は かなり微弱だが……。
……まだ感知は出来ている。
俺達が今 諦めるには値しない。 」
…………。
2人の青年の言動に 特に取り合うそぶりも無く……。
もう 1体の……。死神とも 悪魔とも異なる エヌ・ゼルプトが口を開く。
…………。
黒翼の怪人 ドゥークラは、レトが話したばかりの内容を補填していった。
…………。
「 間も無く 試練は失敗と見なされるだろう……。
レトの物言いは、奔放で 虚構も多いが、今の啓示は事実だ。
其れは エスネトとして 覚醒し、エヌ・ゼルプトとしての姿に完全に変異するだろう。
そして、イェルクス様が ご自身の意思で こちらに お姿を顕現させたとき……。
段階的に……。今世界の 調和の全ての 崩壊が成される。
この度の試練は 成就しなかったのだ。 」
「 先輩……。俺ボクの言いたいとこ 奪わないで下さいよ……。
ま、そんな感じなんで……。そこにいるのはもう エスネト。
ほらほらぁ……。若干早いけど 身震いしてる。
その内 完全に変異し終わるのかな ?
はっぴーばーすでー。 」
…………。
ドゥークラが 抑えた要点に続いて レトが続ける……。
どうやら、ここまでの開示は……。自信が行いたかった らしく、いささかの苦言を漏らす。
とはいえ……。別段 機嫌を損ねるでもなく 今の悪報を喜んでいる。
…………。
ドゥークラからの 補填が、レトからの情報を 暫定の虚言から 現実味のある 様式に整えたのだ。
有馬要人も……。天瀬十一も……。集中力を 幾分か削がれてしまったのか 僅かに動きが鈍った。
…………。
更に ここから……。
別の存在が、より強い説得材料を示してしまう。
…………。
ニューヒキダの上空……。高い位置の 一点の中空に……。極彩色の光が集まり……。
光の中から……。緑翼の石鎧……。イェルクスが姿を見せたのだ。
…………。
「 鍵の覚醒も間に合わず……。
試練の英雄の復活も頓挫した……。
既に猶予は無し。今世界に崩壊を……。 」
…………。
前回の出現時とは異なる 様相で……。真意は不明だが……。
イェルクスが……。何か 意味を含んだ言語を発した。
…………。
この時の……。青年 有馬要人は……。
光の試練に おいての何らかの悪い転機を 迎えてしまったのだと……。無意識に感じ取る。
立て続けの変化の連続は……。あらゆる最悪が重なってしまったのだと……。
そんな風に感じてしまったのだ。
…………。
自分でも得体のしれない 何かが……。静かにざわついた。
………………。
…………。
……。
~猶予の無い選択~
ニューヒキダの上空……。高い位置の 一点の中空に……。極彩色の光が集まり……。
緑翼の石鎧……。イェルクスが姿を見せた。
…………。
まだ……。姿を表しただけではあるが……。
イェルクスの出現は……。ある事柄の説得力を強める。
それは……。つい先ほどの……。2体のエヌ・ゼルプトからの 悪報だった。
…………。
死神のエヌ・ゼルプト……。エスネトが 間も無く完全に変異を終える……。
…………。
こういった意味合いの 悪報が……。2体のエヌ・ゼルプトから告げられたのだ。
悪魔 レト……。黒翼の怪人 ドゥークラ……。この 2体が立て続けに啓示し……。
まるで、裏付けているような頃合いで、イェルクスが出現した。
…………。
「 鍵の覚醒も間に合わず……。
試練の英雄の復活も頓挫した……。
既に猶予は無し。今世界に崩壊を……。 」
…………。
緑翼の石鎧 イェルクスは……。
ニューヒキダの上空で 一定の高度に留まり……。周囲に 極彩色の光を発っする。
…………。
これが 何かしらの合図なのか……。真っ先に 応答したのは 悪魔 レト であった。
…………。
「 御意のままに……。フフフ……。ハハハ。
ほらほら ?
前に 俺ボクの邪魔しなきゃ まだマシだったのかな ?ハハハ。
今は 辛うじて残ってるかもね ?
けど……。故 丹内空護さん は、もういない。
試練を始めた英雄 神地聖正も……。込み込みプランで エスネトの中に 溶けて無くなるだろうね。
仮に……。残滓が残っても……。
いつの間にか自分が誰かも わからずに沈んでいくんだよ ?
そう……。カシュマトアトルのようにね。 」
…………。
悪魔の高笑いが 響き渡った。
流暢な口ぶりで、まるで 感情のままに 数々の言葉が流れる。
…………。
そんな 浮ついた不意を突いたのか……。レトが わざと不意を突かせたのか……。
…………。
青年 有馬要人が……。短時間の間だけ 時間を引き延ばし、擬似的な高速移動で……。切りかかった。
…………。
『 Device Error Factor !! Cross Function !! THE MOON !!
( デバイス エラー ファクター !! クロス・ファンクション !! ムーン !! ) 』
『 Hover Chaser Function !!
( ホバー・チェイサー ファンクション !! ) 』
『 Barrage Armed !! Dual Function !! Sword Pentacle !!
( バラージ・アームド !! デュアル・ファンクション !! ソード・ペンタクル !! ) 』
「 ……さっきまでの戦いで わかった。
こっちは 偽物だ。強度は上がっても 分身体なんだろ ? 」
…………。
刀剣型武装 B.A.Swordには 護符の恩恵も乗せられており……。
強力無比な 鋭い一閃が、悪魔を両断する。
…………。
「 ハハハ……。最高だよ 有馬さん…… !!
……大・正・解。
俺ボクは……。俺ボク私は 渾身の強めな 分身体……。有馬さん は やっぱり……。 」
…………。
悪魔の 分身体が 跡形もなく霧散する。
…………。
青年は 視線だけを動かして……。
自身の頭部を覆うマスクの内面に映し出されてる映像を確認する。
上空では……。イェルクスが未だに 中空に停滞しており、何もしていないように見えた。
…………。
短時間で 判断を切り替えて……。地上に残る もう 1体のエヌ・ゼルプトに……。
刀剣型武装 B.A.Swordの 剣先を向ける。
…………。
「 ドゥークラ……。答えろよ。
光の試練が 今から 終わりなら……。
それを終わらせる お前らを倒せば どうなる ? 」
「 汝、贋作のマルクト程度で それを出来ると思っているのか……。無理だ。
試練の終局による調和の崩壊が 妨げられるなど……。
只の一度も 有りはしない。
イェルクス様の力は 絶対だ。
今世界 終焉の為に……。アルカナが 満ち満ちるのが わかるだろう ?
試練の為に与えられた 程度のマルクトでは 微細な奇跡も望めると思うな。
身の程を知るがいい。 」
…………。
黒翼の怪人 ドゥークラが……。片方の手を外側に薙ぐと……。
これまでとは比べ物にならない速度で 黒色の羽根が 何枚も飛来し……。四方から 青年に襲い掛かった。
…………。
愚者のアルバチャスは……。爆風に飲まれるが……。ホバー滑走で粉塵から脱して、反撃に移る。
決して引かず、ドゥークラが先程まで立っていた方角へと……。刀剣型武装 B.A.Swordで刺突を繰り出す。
…………。
だが……。既に黒翼の怪人の姿は そこには無く……。
青年の背後から ドゥークラの拳鉄が迫る。
…………。
黒翼の怪人からの強襲は……。獅子の意匠を頭部に持つ 戦士によって食い止められる。
その人物は……。
極光の大剣の腹を盾の代わりにして……。ドゥークラを押し返し……。
即座に……。白群色の雷鳴がうなる大剣を 振り下ろした。
…………。
黒翼の怪人 ドゥークラは、後方へと退避する 直前……。
自信に振り下ろされる 大剣の軌道上に 黒色の羽根を 多量に滑り込ませて、
黒色の羽根の推進力と 爆風とで軌道を反らした。
…………。
極光の大剣から 逃れて一定の距離へと 脱する。
…………。
「 汝、贋作の戦士にしては 丈夫な鎧だ……。
ブラフチェティの 其れを 彷彿とさせる。 」
「 有馬 君……。大丈夫か ? 」
…………。
青年 有馬要人は……。間違いなく冷静さを欠いていたが……。
黒翼の怪人 ドゥークラは、あらゆる面で 手強くなっていた。
…………。
徒手空拳での拳圧も……。黒色の羽根の俊敏性や精度も……。何をもってしても 確実に向上しているのだ。
…………。
天瀬十一は……。以前の 神地聖正と レトの発言を思い出す。
…………。
……。
エヌ・ゼルプトの実力は 本来、人間の持つ戦力を遥かに凌駕する。
覆すとなれば、それは絵空事だ……。
…………。
全ての エヌ・ゼルプトの強度は……。英雄のマルクトの活性状況と比例する……。
…………。
……。
英雄のマルクトを 所持していたからこその共通した言い回しなのか……。いずれにしても……。
黒翼の怪人の 急激な 戦闘能力の向上と合致してしまう。
はたまた……。イェルクスが何かしらを行っているのか……。
…………。
天瀬十一は、極光の大剣 エビル・バスターを片手で構える。
…………。
……。
青年 有馬要人は……。動揺していた。
動揺の理由は……。黒翼の怪人の 戦闘能力が向上したからではなく……。
自身の不手際を 仲間に助けられていたからでもない。
…………。
何かが……。何かを……。見聞きしたのだ。
…………。
「 今のは……。なんだ…… ? 」
「 汝、気でも触れたか……。試練の終局では 何も珍しくもない……。
エスネトよ……。今世界を 終局へ導く。
思うがままに 死の脅威を広げるがいい。 」
…………。
転がり続ける 状況の中で……。黒翼の怪人が 死神に呼びかける。
エスネトは 未だに変異の途上なのか 身震いを継続させており……。黒色の亀裂が ゆっくりと全身に広がっていく。
…………。
そんな中……。
有馬要人は……。天瀬十一に 思うままの言葉を 提案をした。
…………。
「 十一さん……。情報源が曖昧な話をしても……。信じてくれますか ?
頭の中に浮かびました。
自棄を起こしての思いつきではないと断言できます。
実体験の無い、確かな記憶と知識が……。有ります。 」
「 有馬 君……。もしかして それは……。
エスネトや 空護にも大きく関わる話かい ? 」
「 そうです。何故それを…… ? 」
…………。
天瀬十一は……。提案の内容から 言葉の真意の輪郭を掴んだかのように返答した。
既に 考えとして、何かが 繋がっているのか……。
有馬要人が 行いたいであろう行動を察したらしい。
…………。
獅子の意匠を持つ戦士は……。この場合に必要な 先立つ情報も添えて……。愚者の背中を押した。
…………。
「 たぶん 俺は……。2人のような 体験は していない……。
けど 大丈夫な 気がしたんだ。
今だから 予測がつくが……。
空護は 以前、あるエヌ・ゼルプトとの交戦時に ヒントを貰っていたんだろう。
アレは……。当時は俺達が知りえない情報を 警笛として呼びかけていたんだ。
もし、エスネトに不活性化を もう一度 試すなら……。
このデータを参考にすると良い。
今 仁科さん から送ってもらった 出来立ての検証結果を元にしている。
嘘みたいな タイミングで信じがたいかもしれないが……。きっと役に立つはずだ。
太陽が広域へ、死神が境域へと 影響範囲を限定して 効率的な性能差を実現していたなら……。
こちらも これを 応用できるかもしれない。
そういった考えから 始まった検証だったが……。
今の 有馬 君の アルバチャスなら……。それが実践できる。 」
…………。
2人の青年の やりとりから、黒翼の怪人も 何かに感づいたのか……。黒色の羽根を大量に射出した。
…………。
「 汝ら……。何をするつもりだ……。
今世界の終局は……。既に覆りはしない。
試練の対局を 歪めるなど これ以上は許されぬ。 」
「 俺達は可能性を諦めない……。
ジャスティフォースの 底力は まだまだ こんなもんじゃないぞ !! 」
『 Extend !! Force of Bastard !!
( エクステンド !! フォース オブ バスタード !! ) 』
…………。
黒色の羽根は……。白群色の雷鳴の 大ぶりな斬撃によって爆散する。
…………。
「 ……有馬 君 !!
足止めは 俺が引き受ける。そっちは 頼んだよ。 」
「 任せてください !! 」
…………。
ドゥークラの 前には……。天瀬十一が立ちふさがり……。大剣と雷鳴によって……。
有馬要人への妨害を 塞き止め続ける。
…………。
黒翼の怪人は……。先程よりも明確に何かを感じ取ったのか……。
強引な攻勢で踏み出し……。ジャスティフォースに拳を振るった。
…………。
「 ……この気配は まさか。
残滓が残っていたとでも 言うのか ?
アレの身体は 試練の英雄の手で 消滅した筈だ……。
なれば……。再起不能を与えなければ……。試練は 何者にも歪ませてはならない。 」
「 ドゥークラ……。悪いけど、有馬 君は 忙しいんだ。
仲間の背中は俺が護る…… !! 」
…………。
ジャスティフォースの周囲に 白群色の雷鳴が轟く。
天瀬十一と ドゥークラは……。接戦を極め……。どちらも攻勢を激しくさせた。
…………。
……。
愚者のアルバチャスが……。ホバー滑走で 死神に接近する。
エスネトは 身震いを続けているが……。先程よりも黒色の亀裂は広がっており……。
裂肛の間隙からは、黒色の靄が噴き出していた。
いよいよ……。今日この日を 逃せない……。土壇場の状況が浮き彫りになっていく。
…………。
つい先程 青年が見聞きした何か……。
何故 それが起きたのかは 青年にも 完全な根拠は わからないが……。強く信頼できる実感があった。
何故か この瞬間に成るまで……。忘れ去っていた……。
今朝の早い時間に見た夢の中での ある存在と声が……。呼び起される。
聡明そうな……。優しい声だ……。
…………。
……。
試練の英雄が存在しない ままでも……。
鍵が……。無限の光を生みだせば……。最後の道へと至れるでしょう。
…………。
無限の光に必要な最後の 1つは……。死神に飲み込まれそうになっている。
だから 私を……。その根幹に送ってください。
…………。
貴方が扱う 深淵の月なら……。それが出来る筈……。
…………。
……。
青年は……。この存在を知っている気がした。
確証も無いが、丹内空護とも大きく関わり……。今 取りうる最良の……。最後の手段なのだと……。
この 根拠のない 行動原理を……。ぶつけるには……。
…………。
愚者のアルバチャスの頭部を覆うマスクの内面で、天瀬十一から貰ったばかりの情報に目を通す。
ぶつける 手段を頭の中に叩き込んで……。腹を決める。
…………。
「 空護さん……。まだ……。いますよね ?
貴方は 街のヒーローなんだ。
白い鎧の アルバチャスに 勇気を貰った人は 沢山いるんです。
ちょっと荒っぽいかも ですけど……。今度こそ戻ってきてください。
街のヒーローが 街を脅かす側に行ったらダメだ。
何がひっくり返ってでも 戻ってこなきゃ…… !!
そうでしょう ?……空護さん !! 」
…………。
ホバー滑走で 疾駆し……。自身の腰部側面の各種武装を動作させる。
…………。
『 Defender's Ability And Tactics !!
( ディフェンダーズ アビリティ アンド タクティクス !! ) 』
『 Extend !! Dawn Moon Purge !!
( エクステンド !! ドーン・ムーン・パージ !! ) 』
『 Device Error Factor !! Cross Function !! THE STAR !!
( デバイス エラー ファクター !! クロス・ファンクション !! スター !! ) 』
『 Barrage Armed !! Dual Function !! Wand Cup !!
( バラージ・アームド !! デュアル・ファンクション !! ワンド・カップ !! ) 』
…………。
B.A.Cupと B.A.Wandの両方から……。不活性化の恩恵を乗せた 光弾と光の放射を放ち……。
DEF 星 の恩恵によって、これらを複製……。効果範囲を 限界まで高めて、中空に解き放つ。
…………。
青年が両手に握った武装から放った光弾と光の放射は……。
イェルクスが 絶えず振りまく 活性化の光を 中和しているのか……。エスネトの挙動を鈍らせた。
…………。
ここまでが、天瀬十一から 共有された情報で言う所の 第一段階。
DEF 星での範囲増幅で 不活性化の光を周囲に振りまいて……。
広範囲に 不活性化の力場を 擬似的に再現する。
…………。
これだけでは、まだ効果は弱く……。短時間……。エヌ・ゼルプトの勢いを阻害する程度……。
効果の度合いも 微量である。
…………。
そこで……。
完全に この不活性化の力場が 霧散する前に……。擬似加速能力との両立で 境域での追撃を行う。
本命は……。こちらの方で……。
効果を高める下準備として推奨されるのが、第一段階の広域力場なのである。
…………。
『 Defender's Ability And Tactics !!
( ディフェンダーズ アビリティ アンド タクティクス !! ) 』
『 Extend !! Dawn Moon Purge !!
( エクステンド !! ドーン・ムーン・パージ !! ) 』
『 Device Error Factor !! Cross Function !! THE MOON !!
( デバイス エラー ファクター !! クロス・ファンクション !! ムーン !! ) 』
『 Barrage Armed !! Dual Function !! Cup Pentacle !!
( バラージ・アームド !! デュアル・ファンクション !! カップ・ペンタクル !! ) 』
…………。
愚者のアルバチャスが、DEF 月 の恩恵によって 引き延ばされた時間を 疾駆し……。
死神のアルバチャスの腹部にも伸びる亀裂に、B.A.Cupの銃口をあてがう。
未だに、広域の力場が 漂う 引き延ばされた時間の中……。零距離から 不活性化の光弾を撃ち込んだ。
…………。
極まった 青白い輝きが煌めく……。
………………。
…………。
……。
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