- 29話 -
形の無い強固な意志
- 前 回
- 次 回
目次
~深淵に隠された切り札~
ニューヒキダの A-22 地区に在る APCの要所……。
特務棟……。
特務開発部の中に 置かれている 特務開発部 部長室では……。
…………。
白衣の青年 天瀬十一(アマセ トオイチ)が、ある 3つの作業を並行していた。
…………。
……。
1つ目は……。彼誰五班の第一班、第二班、第三班、第四班の 各班員を自身のデスクからの指示で統率し……。
情報面でのサポートを行いながら、通常種のピップコートとの戦闘処理を進める事。
特務棟 近郊の区画で 散発的に出現する 斥候兵型のエイオス……。ペイジ型を 相手に……。
事前に用意していた 幾つかのオペレーションパターンで、対処を円滑に行っている。
…………。
2つ目は……。神地聖正の残した個人用のデータから、光の試練や それに類する情報の再抽出……。
これによって……。
何体かのエヌ・ゼルプトや、その配下に該当する怪人達の情報も得る事に成功した。
こちらに関しては、更なる情報を得る為……。現在も解析作業が 演算用のツールも用いて行われている。
…………。
3つ目……。天瀬十一の父……。天瀬慎一(アマセ シンイチ)が密かに利用していた 設備に置かれたデータ・ボックス……。
カムナ・ボックス。
この中に眠る アルバチャスの設計の根幹に大きく関わると思われている情報群の解析と調査……。
…………。
……。
今までは、カムナ・ボックスには 特に目だったような情報は見受けられなかった。
恐らく……。
天瀬慎一によって 念入りに暗号化され……。
……解錠用の 適切なルート以外からは、それらが 露呈しないように成されてたのだろう。
だが、ついに 何かしらの条件を満たしたのか……。
……その情報群の 解錠が、兆しを見せる。
…………。
……。
白衣の青年 天瀬十一は……。
バックスクリーンが、黒色のカムナ・ボックス用のデータ ウィンドウに表示されたメッセージに気がつく。
折しも……。
各地での戦いが白熱し……。あまり長い猶予が残されていない 頃合いだった。
…………。
……。
N-06 地区の荒廃した 復興推進区画では……。
愚者のアルバチャスと 戦馬車のアルバチャスが……。
太陽の化身 アポロダイスと 今しがた召喚された 21体程のレッドコート種のペイジ型達と……。
…………。
E-07 地区の 復興推進区画の 一角では……。
丸七型のレヴル・ロウ 3人が……。
レッドコート種の 3体を相手に……。情報収集の為の持久戦を……。
…………。
……。
主に 2つの箇所で 激しい戦いが繰り広げられていた。そんな頃合いだった。
…………。
白衣の青年 天瀬十一は、カムナ・ボックスで 何かしらのデータが解錠された事を知り……。
……直ぐに目を向ける。
専用の ディスプレイの表示に 展開されている情報のメッセージを目視で読み上げた。
…………。
Unlock Grant DAAT Extend……。
( アンロック グラント ダート エクステンド )
Arbachas code-0-……。
( アルバチャス コード アイン )
Arbachas code-7-……。
( アルバチャス コード セブン )
…………。
「 これは……。
もしかして、以前の code-7-にも適用された 上位の codeか ?
だが……。見た所……。まだ、稼働には及んでいない…… ? 」
…………。
天瀬十一は、より深く 解析を行い……。そして……。
この systemの解放の為の条件へと辿り着く。
そこには、解錠の条件と……。解錠後に得られる 特殊な能力についての記述があった……。
…………。
白衣の青年は、直ぐに 愚者のアルバチャスと 戦馬車のアルバチャスに、ボイスチャットでの通信を繋いで……。
……急を要する 現状について伝達した。
…………。
「 2人とも聞こえるかい ?
辛い戦いかもしれないが……。持ちこたえてくれ……。
父さん が 残した 切り札を見つけた。
今の俺達に必要な 最大の打開策に成る筈だ。
だから、それまで……。
なんとしても 持ちこたえてくれ。
レッドコート化した人達も助けられるかもしれない !! 」
…………。
天瀬十一は……。
出来るだけ手短に……。
2つの地区に 要件を伝えて 作業を再開する。
手始めに とある工程を先に済ませて……。
カムナ・ボックスに展開されている 演算用のソフトも用いて、ひたすら 解錠作業と 最適化を進めていく……。
パソコンのキーボードを叩く音が強くなっていった。
………………。
…………。
……。
~持久戦~
E-07 地区……。
3人の 丸七型が、3体のレッドコート種を相手に持久戦を 続けていた。
…………。
3体のレッドコート種の中でも特に強力な個体……。RCソード・キングは……。
炎を発する大剣を 振り回し、周囲の残骸すらも燃焼させている。
…………。
RCソード・キングが 振りかぶると、赤熱した大剣によって重量を乗せた 一撃を繰り出す。
…………。
3人の丸七型の中でも……。
近接格闘主体で 戦っていた 2人は……。
この攻撃を予見したのか……。速やかに回避行動を取った。
近接用武装……。小剣型 L,L,Eを携行している 2人……。
第二班長……。大代大(オオシロ マサル)と……。
第四班長……。荒井一志(アライ カズシ)は、これまでの戦いの所見を 口頭で整理する。
…………。
「 あのレッドコート種……。強いね。
接近戦には、僕も まあまあ自身は あるんだけど……。
あんなに 大きい武器で、隙が少ないってのもね……。
僕も まだまだだ……。 」
「 大代二班長が そうなら 自分は、もっと力不足ですよ。
ですが、先程の 天瀬 副指揮長からの話通りなら……。
これまでに行った持久戦も無駄では無くなります。
残りの 2体のレッドコート種の動きも警戒して、持ちこたえられれば……。
いえ、持ちこたえる……。これですよね。 」
…………。
今この場で 3人の丸七型が戦っている相手……。RCソード・キング以外の 2体は……。
RCソード・ペイジ……。RCカップ・クイーン……。
個体ごとの強弱の違いは有るが……。
偶然にも 近接主体が 2体……。射撃主体が 1体……。丸七型の 3人と似通った構成に成っている。
とはいえ……。
丸七型の 3人は 職滅を狙っての行動には、まだ踏み切りたくない……。戦い方に制限が有るのだ。
レッドコート種の 3体には コレが無く、攻撃的な行動が軸と成っている。
不利な状況での 持久戦と……。情報収集……。
こんな時ほど、1人 1人の精神的な支柱の強さが 試され続ける。
…………。
この場において……。3人の丸七型の 精神面を補強する人物……。
温和な青年……。大代大が、もう 1人の人物、伊世伝次(イセ デンジ)にも 声を掛けた。
…………。
「 ……そういう訳だ。
伊世 君も、まだ頑張れる ? 」
「 大丈夫です。二班長……。
俺だって、頑張りますよ。
どちらかと言えば、問題は……。
丸七型の 残りの活動時間でしょ。 」
「 そうだね。
丸七型や レヴルは……。
アルバチャスみたに単独での行動も……。
長時間での激しい戦いも想定されていない
いくら班長 3人が揃っても……。
限界は近い事に変わりは無い。
ここらで、3人の暫定的な目安でも共有しようか。
それぞれの視覚情報に集約しよう。 」
…………。
3人の 丸七型は……。
ホバー滑走での、回避行動は継続させたままに、大代大の話す件に着手する。
目安となる 残りの 大技の使用回数が、表示される。
…………。
……。
大代大……。小剣型武装 L,L,E……。
暫定 ロウズ ファンクション 使用回数……。3回……。
…………。
伊世伝次……。小銃型武装 R,R,G……。
暫定 レヴル ファンクション 使用回数……。2回……。
…………。
荒井一志……。小剣型武装 L,L,E……。
暫定 ロウズ ファンクション 使用回数……。1~2回……。
…………。
……。
丸七型 3人の それぞれの 頭部マスクの内部で、件の情報が 視界に投影された。
戦いの激しさが増すほど、この暫定回数は 縮まってしまう。
レヴル・ロウ 丸七型は……。
1度の 大技で、1時間程度の暫定活動時間に相当するエネルギーを消費する。
アルカナの内在貯蔵量の増加を待つにしても……。戦闘中では 現実的な選択肢ではない……。
当然……。マルクトによって、加速度的に エネルギーが 補填される事も無い。
どうしても長期戦や 少数での戦闘には弱いのである。
…………。
だが……。
…………。
「 長期戦には向かないのが、僕達 レヴル・ロウの弱点ではあるが……。
丸七型の底力……。
人間の底力で耐えきる。
伊世 君も、荒井 君も……。いけるよね ? 」
「 自分も伝次も やって見せますよ。 」
「 一志……。俺の分まで答えるなよ。 答えは 同じだけど……。 」
…………。
3人の 丸七型は……。
レッドコート種からの攻撃に 最小限の手段で 対処していく。
…………。
天瀬十一が、口にした レッドコート種への対抗策が どういったものなのか……。詳細はわからない。
それでも、かつての仲間を助けられる 道が見えるのなら……。
その道を 選べるのなら……。
腹の底に力を入れなおさない訳にはいかない。
…………。
RCソード・ペイジからの、小剣による強襲が……。大代大の背後から仕掛けられる。
丸七型の 光弾による射撃が RCソード・ペイジに数発浴びせられる。
圧縮率を調整した 伊世伝次の銃射撃だ。
…………。
「 無事ですよね ?二班長。 」
「 ……ありがとう。伊世 君。 」
…………。
攻め過ぎずに戦う……。それでいて、自分達も やられるわけにはいかない。
これが、丸七型 3人の共通認識であり……。優先事項である。
…………。
RCカップ・クイーンが、溶岩のような高熱の弾丸を射出した。弾丸が飛来する 行先は……。
……近接武装の丸七型。
少しばかり対処に遅れた……。荒井一志の前に……。
大代大が、ホバー滑走で滑り込み……。
自身の小剣型武装 L,L,Eの 刃先を用いて、弾丸の軌道を ずらした。
溶岩のような弾丸は、丸七型に直撃する事はなく……。離れた位置の 瓦礫を爆発させる。
…………。
「 大代 二班長 !
すみません。ありがとうございます。 」
「 良いさ。お互い様だよ。 」
…………。
丸七型の 3人は、各々が得意な戦い方で 互いの死角を補い合う。
…………。
時間を……。稼ぐ事……。
今は時間を……。
…………。
……。
3人の丸七型は……。3体のレッドコート種と 激しく戦った。
そして いよいよ、戦いの流れが 変わり始める。
…………。
……。
伊世伝次の 目が、何かを見つける。
この戦いの場に、加わるであろう新たな変化だった。
少し離れた遠くの場所から……。こちらに接近する人影が 1つ……。1人の丸七型の姿が見えた。
…………。
「 お前……。界 ?
……無事だったのか ?
丹内 総指揮長と 一緒だったんじゃ……。 」
「 伝次 !あっちは 有馬さんが合流したんだ。
今はもう、僕がいると邪魔になる。
だからって訳じゃないけど……。
こっちの援護に来た。 」
…………。
3人の丸七型の戦いの場に 加わろうとしてるのは、同様に丸七型を駆る人物。
伊世伝次とも、荒井一志とも 同期の人物……。
この日の戦闘処理においては、最初は有馬要人と……。その次は 丹内空護と、合同での行動をしていた人物……。
恵花界(エハナ カイ)だった。
…………。
……。
伊世伝次は……。
最近まで行方不明者だった同期の仲間が……。気がかりで……。
今 この瞬間に至っても、この心情は変わっていない。
だからなのか……。それとも……。単純に相手が巧みだったのか……。
長い戦いによる 集中力の低下でのヒューマンエラーなのか……。
RCソード・ペイジからの攻撃を……。少しだけ 甘く見積もってしまった。
…………。
……。
炎熱の斬撃が、伊世伝次の 小銃型 R,R,Gを 弾き飛ばす。
示し合わせたように、RCカップ・クイーンによる 溶岩の弾丸が 飛来し……。伊世伝次に命中する。
…………。
……。
伊世伝次は、咄嗟に 片腕に常設されている 小盾で、致命的な直撃を防ぐ。
……が しかし、爆発力の高さに堪えきれなかった。
吹き飛ばされて中空を舞うと、自由落下によって地面に叩きつけられてしまう。
ついに、伊世伝次の丸七型は、systemを強制的に解除させてしまったのだ。
…………。
ここで真っ先に 動いたのは RCソード・キングだった。
燃え上がる大剣で……。生身の人間を 両断しようと走りだす。
燃え盛る 炎の大剣を……。振りかぶって 背負い投げのように 一気に振り下ろした。
…………。
辛うじて……。
伊世伝次が 両断される事は無かった……。
大代大が、その間に割って入り……。
ロウズ ファンクションで強化した 小剣型武装と、自身の小盾で塞き止める。
…………。
「 ……生きてるね ?伊世 君。
けど、この剣圧……。重いな……。ダメだ……。
荒井 君 !!恵花 君 !! 」
…………。
大代大が、2人の青年に呼びかける。
荒井一志も、恵花界も 直ぐに察して 動き出す。
真っ先に動いたのは荒井一志だった。即座に、大代大の後方にいる 伊世伝次を抱き起こして……。
ホバー滑走で、安全圏まで距離を取った。
…………。
大代大は、これに気がついて 炎熱の大剣から自身の身を逃す……。
大代大の小剣型武装は、耐えきれずに爆散してしまう……。
…………。
恵花界が、頃合いを見定めて 炸裂弾を RCソード・キングに撃ち込んだ。
…………。
『 Rebel Function !! Pentacle !!
( レヴル ファンクション !! ペンタクル !! ) 』
…………。
全て、数秒間の出来事だった。
数秒で 2人の丸七型が 継続戦闘不可の状態に陥ってしまったのだ。
伊世伝次と 大代大が……。この数秒で systemを強制解除させていた。
…………。
「 二班長……。
すみません。俺の不注意で……。 」
「 ……良いよ。間に合ってよかった。
遅かれ早かれ、僕達の持久戦は難しくなっていた。
恵花 君と、荒井 君がいて助かったね。
肩を貸す。歩けるよね ?
僕達は もう少し下がろう。 」
…………。
恵花界と、荒井一志が 並び立ち……。後退を始めた 2人を援護する。
…………。
3体のレッドコート種が 妖しく 身構えた。
大気が熱で揺らめく……。
…………。
残された 2人の丸七型が、武器を握りなおす……。
…………。
「 ごめん 伝次 大代さん。
僕が 巻き起こしたミスだ。
だから、僕が 2人の分も戦う !
悪いけど手伝ってくれ 一志。 」
「 界……。あまり気負ってはダメですよ。
自分達は、ある目的があって持久戦をしていました。
あの 3体……。
倒さずに戦えますか ? 」
「 持久戦を…… ?
相手は怪人だぞ ?
……その狙いはなんだ ? 」
「 ……理由ですか。
界にも 話しますよ。伝次や大代 二班長が 体を張って繋いだ理由……。
必ず話すので……。
今は、戦いを継続しましょう。 」
…………。
荒井一志と……。恵花界が……。
同じ景色を 視界に映す。
…………。
「 そういう事なら……。
僕も バトンを繋ごう。
持久戦て事は、前の有馬さん みたいな情報収集の類いか……。
けど……。最悪の場合は想定しているか…… ? 」
「 もちろんです。 」
「 わかった。 」
…………。
2人の丸七型が……。
それぞれに使用できる大技の 目安は……。1度ずつ……。
レッドコート種 3体は……。
今も、奥底を残しているようだった。
………………。
…………。
……。
~隠者が残した力~
N-06 地区……。
復興予定区画……。
禍々しい 太陽が……。2人のアルバチャスに向けて 21体のレッドコート種を差し向ける。
愚者のアルバチャス 有馬要人も……。
戦馬車のアルバチャス 丹内空護にしても……。
ここに来て……。戦い方の自由度が大きく制限されてしまう。
…………。
……。
太陽のエヌ・ゼルプト……。アポロダイスは、21体のレッドコート種を完全に操っているようだった。
…………。
RCソード・ペイジによる 赤熱した小剣の横薙ぎ……。刺突……。
RCカップ・ペイジが扱う 銃器のような武具からの火炎放射……。火炎弾……。
容赦のない 攻撃から……。身を護り……。
凶神の如き太陽に 反撃を行わなければならない。
…………。
……。
レッドコート種への反撃を せずに、1体の相手との激戦を組み立てる必要がある。
これまでにも、数の多い 相手と戦う事は あったが……。
大多数に反撃に出られない 戦い程 厄介なものは無い。
…………。
青年 有馬要人は、杖型の武装 B.A.Wandに護符の恩恵を組み合わせて……。
空を飛び、立体的な軌道で 攪乱する。
僅かな隙さえあれば、空中からの 一撃を アポロダイスに叩き込む算段だ。
…………。
戦馬車 丹内空護も、2種類の武装で……。戦いの糸口を こじ開けようとして 立ち回る。
射撃用武装 B.A.Cupと 刀剣型武装 B.A.Swordを握る手にも力が入っていた。
…………。
……。
今のような状況に成ってから……。DEF 月での 波状攻撃も試みているが……。
都合通りの 転機に繋がる事は無かった。
…………。
引き延ばされた時間軸での戦いは、アポロダイスとの戦いに集中出来るように思われたのだが……。
倒してはいけない 相手が 密集していて……。
この背景を 相手が見透かしている。
2人のアルバチャスの攻撃は、ちょっとした工夫で 立ち行かなくなってしまうのだ。
…………。
代表例としては……。
アポロダイスが、レッドコート種の中に紛れて、銃射撃のみで戦う場合だ。
21体の レッドコート種は、2人のアルバチャスにとって 弾除け以上の働きをしてしまう。
…………。
……。
戦いは数……。
有利な状況を一早く 作り上げた物だけが、流れを支配できる。
凶神の如き太陽は、炎熱の尖兵達を引き連れて 愚者と 戦馬車を 追い詰めていく。
…………。
「 ……多様性を認めてはくれないか ?
これが 私なのだよ。
欲しいものは……。欲しい。
したくない事は……。したくない。
New order is my order.
(ニュー オーダー イズ マイ オーダー)
私なりの新秩序さ ! 私以外は どうでもいいのだよ……。
さあ、行け !!21体の尖兵達 !!
私の 手足以上に 働くんだ !! 」
…………。
アポロダイスは、大手を広げて 持論を述べる。
短い演説の後に、レッドコート種に 総攻撃を仕掛けさせた。
…………。
愚者のアルバチャスは、レッドコート種を相手に 回避行動を優先せざるを得ず……。
なかなか反撃に 移れない。
…………。
そんな中で、戦馬車のアルバチャスが、力強く攻勢に出た。
…………。
「 ……聖正 !! 」
『 Device Error Factor !! Cross Function !! THE MOON !!
( デバイス エラー ファクター !! クロス・ファンクション !! ムーン !! ) 』
『 Hover Chaser !! Function !!
( ホバー・チェイサー !! ファンクション!! ) 』
『 Barrage Armed !! Dual Function !! Sword Pentacle !!
( バラージ・アームド !! デュアル・ファンクション !! ソード・ペンタクル !! ) 』
…………。
引き延ばされた時間軸の中での 一撃を狙った。
ホバー滑走で疾走し……。レッドコート種の間を すり抜けてからの、剣撃だ。
…………。
だが 太陽の化身もまた、時間軸の移動を行っており……。
戦馬車の突撃に対応して見せた。
名も無い銃で、何発もの銃弾を浴びせ……。丹内空護が握る 刀剣型武装を吹き飛ばす。
…………。
「 丹内 君か……。君も不思議だね……。
七郎太の養子で血の繋がりが無いのに……。
身体だけは頑丈で、そういう所は よく似ている。
フフフ。隙ありだぁ……。 」
「 ……B.A.Swordが 無くとも、俺には拳がある !! 」
「 私も拳で 合わせてあげようか。知るがいい。
エヌ・ゼルプトの 拳の威力を !! 」
…………。
戦馬車の拳と、凶神の拳が激突する。
丹内空護が繰り出したのは、暴風のような 乱打であった。
禍々しい太陽は、この手数の押収に対して 燃え上がる爆炎の拳鉄 1つで反撃する。
爆風が巻き起こると、戦馬車のアルバチャスは 大きく後退させられた。
DEF 月の機能も強制解除に陥ってしまう。
…………。
丹内空護は……。自身の背面の方向に 吹き飛ばされて……。
片膝をつく……。
警戒心も戦意も 未だに勢いを衰えさせないが……。戦馬車の systemは 限界が近い。
…………。
アポロダイスは、わざとらしく……。時間軸を通常の時間に戻し……。
名も無い銃の引き金を握る。
太陽の化身が放った銃撃と 同時に、RCカップ・ペイジ達も 火炎弾を発射した。
戦馬車の身に 火球の群れが 襲い掛かる。
…………。
この猛襲を……。
愚者のアルバチャス……。有馬要人が防いだ。
…………。
『 Device Error Factor !! Cross Function !! THE MOON !!
( デバイス エラー ファクター !! クロス・ファンクション !! ムーン !! ) 』
『 Hover Chaser !! Function !!
( ホバー・チェイサー !! ファンクション!! ) 』
『 Barrage Armed !! Dual Function !! Wand Pentacle !!
( バラージ・アームド !! デュアル・ファンクション !! ワンド・ペンタクル !! ) 』
…………。
青年は……。
RCソード・ペイジからの攻撃を強引に突破した……。
DEF 月の 恩恵も利用し……。戦馬車の正面に躍り出ると……。
眼前の 火球の群れに相対した。
DEF の機能を切り替えて 杖型武装による 横薙ぎを数回 行う。
…………。
『 Device Error Factor !! Cross Function !! THE STAR !!
( デバイス エラー ファクター !! クロス・ファンクション !! スター !! ) 』
…………。
愚者のアルバチャスが 複製した 杖の打撃によって、火球の群れが 全てが爆発した。
青年 有馬要人もまた、限界が近いようで……。呼吸は荒い……。
それでも、強く 心を保って反論する。
…………。
「 どの口が言うんだ ?神地……。
多様性を否定している お前の全てが、なんの説得力になると思っている ? 」
…………。
愚者のアルバチャス……。有馬要人からしても……。
神地聖正の物言いは 納得できるものではないのだろう。
…………。
つい先程の 丹内空護と同様に 声には怒りが満ちている。
…………。
2人のアルバチャスの怒りを滲ませる声と行動に……。太陽の化身が回答して見せた。
…………。
「 何を言っている ?
私は……。太陽英雄神だぞ ?
凡人の基準に押し込めないでくれたまえ。
私が 右と言えば……。右に……。左と言えば……。左に……。
黒と言えば黒……。白と言えば……。白……。
それこそが、先導されるべき輩 達の 標準ってものさ。
多様性を認めるのは愚衆の側だけなのだよ。
大事な事だ……。よく覚えておいてくれよ ?
君達に許されるのは……。Yesだけだ……。
聞こえたかな ?
イエス !!いえす !!……ゐ・ゑ・す !!
理解できるだろう…… ? 」
…………。
太陽の凶神は弁舌を続ける……。
片手に持った 名も無い銃を 撫でまわしながら……。
独自の切り口で思想を伝播させようと説いていった。
…………。
「 お前達は さっきから 何を期待している…… ?
手ぬるい戦い方をしている 理由があるんだろうなあ。
例えば 天瀬十一……。
慎一にも劣る 七光りが……。何かしらの小細工を準備している……。
そんな所か ?
中途半端な希望は 毒だな。残酷だよ。
君達は こんなにも醜態を晒して、戦っているというのに……。
それを補う リターンが どれ程かも 知りえない。
あくまでも予測程度なんじゃあないか ?
もしも……。早々に諦める気持ちが有るのなら…… ?
どちらか片方は助けてやっても良いんだぞ ?
これは 優しさだ。……どうだい ? 」
…………。
アポロダイスからの恩赦だった。
語気には微細な慈悲も漂ってはいないが……。言葉の意味としては 間違いなく そうなのだろう。
…………。
丹内空護は、考えるまでも無く 返答を返す。
戦馬車のアルバチャスは、既に至る所の装甲が 破損しているが……。
その言葉に一切の迷いは 見えない。
…………。
「 わかっていないな。聖正……。
十一は、必ず 俺には出来ない事をやってのける。
アイツを値踏みして 痛い目を見るのは お前の方さ。 」
「 んん…… ?
わかっていないのは 君達だよ。
エヌ・ゼルプトの実力は 本来、人間の持つ戦力を遥かに凌駕する。
覆すとなれば、それは絵空事だ。
皇帝のエヌ・ゼルプト……。マーへレス。
恋人のエヌ・ゼルプト……。ナティファー。
これまでに出現した全てのエヌ・ゼルプト達の実力も……。
基準値は、あんなものではない。
当時の英雄のマルクトの活性状況が、
低いからこその 下方修正が成された水準で アレだったのだ。
アルカナ・オリジンス……。エイオス。
アルカナの光を操る原種の上位種達は……。
凡作のマルクトでは 敵う筈が無いのだよ。
エヌ・ゼルプトは、常に 英雄のマルクトを基準に 数段上の強さで出現するのだからな。
だが……。
今の私は……。両方の能力を持っている。
それを相手に 何を期待できるというのだ……。
お前達が 繰り出す 渾身の一撃は……。どれをとっても……。
私の何気ない所作にも劣るというのに……。
ならば……。
天瀬十一 如きが何をした所で……。私には勝てない。
私は 私の やり方で 試練を完遂する。邪魔をしてくれるな。 」
…………。
凶神 アポロダイスも、心は折れてはいないようで……。
情報での攻撃としてだろう。……光の試練に絡んだ事柄に触れていく。
…………。
青年 有馬要人も、地に足の着いたような意思を 言葉にする。
次第に感情が高ぶっていたのか、拳を硬く握って……。最後には啖呵を切った。
…………。
「 神地……。アンタは 知らないだろう。
俺達が今までだって 勝ち続けられた理由を……。
本当は……。
やり方を間違えさえしなければ、アンタも同じ筈だったんだ。 」
「 私が…… ?凡人と同じはずが無いだろう ?
馬鹿な事を言う奴だ。 」
「 慎一さんが……。
APCを作り上げた頃からの 多くの人達が……。
一緒に戦ってくれてた筈だろう ?
……戦いは数、そう話していたよな ?
なら……。今 それで 劣勢なのは アンタの方だ。
レッドコートにされた 人達だって、強制的に従わせているだけなら……。
俺達は……。アルバチャスは負けない !!
必ず 今を ひっくり返して見せる !! 」
…………。
愚者の青年の強い言葉に……。
太陽の化身の何かが 逆なでされたようだった。
…………。
「 はい……。
スピーチを ありがとう。
馬鹿と馬は 蒸発だ。 」
…………。
アポロダイスの一言に合わせて、再度 レッドコート種を交えた総攻撃が仕掛けられた。
2人のアルバチャスは、これまでで 最も大きな爆炎に飲まれてしまう。
…………。
……。
灰燼が巻き上がる中……。
太陽の凶神が 絶景を眼前に納める。
…………。
「 これで 終わりだ。……残念だよ。
馬鹿共の旗印は蒸発し……。残されたマルクトだけは回収させてもらう。
私の……。勝ちだ……。 」
…………。
黒煙が漂う 戦地の中で……。
爆炎の燃え滓が 少しずつ勢いを弱めるよりも早く……。
その動作音は 鳴った。
…………。
『 Unlock Grant !!
( アンロック グラント !! ) 』
『 Arbachas code-0- DAAT !!
( アルバチャス コード アイン ダート!! ) 』
『 The F0OL Extend !!
( ザ・フール エクステンド !! ) 』
『 Arbachas code-7- DAAT !!
( アルバチャス コード セブン ダート!! ) 』
『 The Chariot Extend !!
( ザ・チャリオット エクステンド !! ) 』
…………。
アポロダイス目掛けて 精密な銃射撃が 撃ち込まれる。
それと ほとんど同じにして、爆炎の中から 大きく跳躍して 何者かが跳び蹴りを叩き込んだ。
何者かは、太陽の凶神を 足技で 大きく後退させた。
…………。
爆炎の中から跳躍して現れた何者かは……。愚者のアルバチャスと酷似した外見で……。
それ以上に 俊敏で 脚力も強い……。
…………。
精密な銃射撃を行った何者かは……。ホバー滑走で地表を統べるように走り抜ける。
以前……。戦馬車のアルバチャスが変異した 上位型と思われる白色の鎧姿……。
…………。
アポロダイスは、目の前で 鮮やかな蹴り技を仕掛けてくる相手と……。
白色の装甲姿で 疾駆する 相手に……。
両者の正体に……。高い精度の予測を立てる。
この 2者は 間違いなく、そうなのだろう。
…………。
「 まさか……。これは……。
あの時の 慎一の切り札か……。七光りが !! 」
…………。
爆炎から現れた 2者が……。改めて戦意を強く研ぎ澄ます。
…………。
……。
特務棟の 部長室から一連の様子を確認した人物……。天瀬十一は……。
もう一度……。
正式に解錠できた その systemについて目を通した。
…………。
……。
私が作った単独武装対策兵器 Arbachasには……。
いつの日か訪れるかもしれない、神地聖正の過ちを止める時の為に……。
……多くの苦難を乗り越える為に、幾つかの切り札を残す事にする。
だが、それらの切り札も 強大なものだ。
心無い者の悪用を避ける為に、力を得る為の条件を設ける事とした。
…………。
DEF……。
Device Error Factor だ。
( デバイス エラー ファクター )
これは……。私の親友……。神地聖正と共に考案した systemの発展型……。
広範囲への攻撃と、時間軸への干渉を使い分ける事を可能にし……。
後に完成する code-19-からの 強制制御機能への防護をも行う。
code-0-と code-7-に適用できるように調整した 増設 systemである。
外部端末によって 最適化する この systemだが……。
本来の能力を保護する目的で、最初期は 模擬の誤作動を発生するだけの 分割した systemを組み込む。
残りの systemの解錠を、私 天瀬慎一が 見込んだものだけに適用できるようにする措置である……。
…………。
だが、本来のこの systemの効力は……。
code-0-と code-7-を code-19-に 対抗しうる程度まで 能力を引き上げるものだ。
…………。
本来の systemの名前は……。DAAT……。
Defender's Ability And Tactics ……である。
( ディフェンダーズ アビリティ アンド タクティクス )
コレが 解錠されれば……。
code-0-と code-7-の姿は変わり……。殆どの能力が 飛躍的に向上する。
更に、DEFで発揮されていた能力は負荷が最小化された上で、標準の機能として適用され……。
それぞれに 3つの新たな切り札が付与される。
…………。
強力な力だ……。それ故に……。
以下の条件は全て満たさなければ ならない。
この力が 悪意ある者の手に渡らない事を 心から願う……。
…………。
条件 1.
code-19-と code-0-か code-7-もしくは両方が数回交戦しており圧倒されている事。
条件 2.
条件 1の状況下でも code-0-もしくは code-7-の使用者の心が折れていない事。
条件 3.
DEFの機能において……。THE STARや THE MOONを問題なく扱える事。
条件 4.
天瀬十一 が託しても問題ないと判断できる事。
…………。
追記として……。データを最後に書き加えたいと思う。
…………。
十一……。以上の条件を満たす事で 解放される 専用の codeを……。
……お前のデバイスの中に仕込ませてもらった。
その codeの暗号化を解いて……。2人のアルバチャスの助けに成ってやって欲しい。
思えば、父親らしい事を出来た記憶は無い。寂しい思いをさせた事もあったのだろう。
直接 伝えたい事も沢山あったが……。時間を作れない不甲斐ない私を許してくれ。
本当にすまなかった。
父さんは、お前の事も 真尋の事も、母さんと同じように愛している。
十一……。お前が見る正義を疑うつもりは無い。
私が残せる全てを託す事を……。これを記述している この日 決めた。
このメッセージが 展開されている時……。私は何も出来ないのかもしれない……。
すまないが 後の事を頼む。天瀬慎一より。
…………。
……。
白衣の青年 天瀬十一は……。
パソコンのディスプレイに視線を戻した。
今も 戦いの中にある 2人のアルバチャスの様子を見届ける為に……。
…………。
「 俺の出来る事はしたよ……。父さん。
前に心にも無い乱暴な言葉を使ってしまった。……ごめん。
後は 2人の戦いを……。見届けるよ。 」
…………。
白衣の青年 天瀬十一は……。キーボードを叩いて……。
2人のアルバチャスの視界に、簡潔にまとめた 各機能の使用方法や効果を転送した。
キーボードの操作に集中しすぎたのか……。
今頃に成って 指が疲れている事に気がついた。
…………。
……。
白衣の青年が観測する ディスプレイの向こうの……。N-06 地区では……。
新たな力を手にした 2人のアルバチャスが 反撃の一手に出ている。
…………。
愚者のアルバチャス……。code-0-DAAT……。有馬要人……。
戦馬車のアルバチャス……。code-7-DAAT……。丹内空護……。
2人のアルバチャスは、爆炎の中から勢いよく飛び出して 戦っているようだった。
………………。
…………。
……。
~放浪の先へ~
N-06 地区……。
黒煙が漂う 戦地の 一角では……。
爆炎が作り出す くすんだ 熱気を切り裂いて、2人のアルバチャスが 反撃に出る。
…………。
直前に鳴った 動作音は、愚者と戦馬車の 新たなる力の 起動を意味した。
…………。
『 Unlock Grant !!
( アンロック グラント !! ) 』
『 Arbachas code-0- DAAT !!
( アルバチャス コード アイン ダート!! ) 』
『 The F0OL Extend !!
( ザ・フール エクステンド !! ) 』
『 Arbachas code-7- DAAT !!
( アルバチャス コード セブン ダート!! ) 』
『 The Chariot Extend !!
( ザ・チャリオット エクステンド !! ) 』
…………。
2人のアルバチャスは、新たな姿で こそ 発揮できる能力を立ち上げて選択したらしい。
戦馬車のアルバチャスが 行ったと思われる 武装の発動音が鳴り……。
…………。
『 Barrage Armed !! Dual Function !! Cup Pentacle !!
( バラージ・アームド !! デュアル・ファンクション !! カップ・ペンタクル !! ) 』
『 Defender's Ability And Tactics !!
( ディフェンダーズ アビリティ アンド タクティクス !! ) 』
『 Extend !! Meteor Assault !!
( エクステンド !! ミーティア・アサルト !! ) 』
『 Hover Chaser Function !!
( ホバー・チェイサー ファンクション !! ) 』
…………。
愚者のアルバチャスが 発動したと思われる 武装の音も響いた……。
…………。
『 Defender's Ability And Tactics !!
( ディフェンダーズ アビリティ アンド タクティクス !! ) 』
『 Extend !! Trick Ster ter !!
( エクステンド !! トリック・スター・ター !! ) 』
…………。
爆炎の中から、綺麗な水色の彗星を思わせる 弾丸が飛び出し、太陽の化身を狙う。
彗星のような弾丸は数発 射出され……。
凶神 アポロダイスの注意を 確かに引き付けた。
…………。
アポロダイスが 致命傷を回避しようと 咄嗟の対処を試みる。
最初の数発は全てが 直撃はせず……。1発のみが、凶神の片腕の端に少しだけ接触して 通過した。
…………。
爆炎を潜り抜けて、白色の鎧のアルバチャスが 飛び出す。
ホバー滑走によるスラローム射撃で、彗星のような弾丸を 幾度となく撃ち込み続ける。
…………。
凶神 アポロダイスも、自身が持つ 名も無い銃 によって火炎弾を放ち反撃に移った。
…………。
火炎弾は ことごとく、水色の彗星に破壊され……。
今回は、彗星の如き弾丸は その全てが命中する。
…………。
この時に起こった 多くの突発事項によるものなのか……。
彗星の如き弾丸の威力が 確かだったのか……。これらの両方か……。他の要因によるものか……。
アポロダイスが、怯んだようで 隙が出来ていた。
…………。
『 Barrage Armed !! Function !! Pentacle !!
( バラージ・アームド !! ファンクション !! ペンタクル !! ) 』
…………。
この隙の中で 爆炎から飛び出し……。跳躍したアルバチャスが……。護符の恩恵を全身に上乗せすると……。
……凶神に向けて、上空からの踵(かかと)落としを叩き込む。
…………。
赤色と黄色の派手な色彩のアルバチャスは……。強力な足技に重点を置いた格闘戦を仕掛けた。
数発毎に 変則的な タイミングで、軸足を切り替えている。
派手な色彩のアルバチャスは、打撃の猛襲の最後に 護符の恩恵を乗せた 飛び蹴りを行う。
蹴り の威力は、以前よりも遥かに上昇しているようで……。太陽の化身も軽視できないようだった。
…………。
「 まさか……。これは……。
あの時の 慎一の切り札か……。七光りが !!だが……。
あの時と同様の 丹内 君の銃撃は、
弾丸の威力も……。速度にしても……。正確無比な陽動と 本命の弾丸の切り替え……。
流石と いった所ではある。
だのに……。馬鹿の方は そうでもないんじゃあないか ?
姿が少し変わって脚力が向上した程度か……。
新たな武装も無い……。貧相じゃあないか ?
これが慎一の切り札だと ?笑わせるな…… !! 」
…………。
絶えず彗星の如き弾丸が 飛び交う戦地の中で……。
アポロダイスは、多少の被弾も気にしていないのか……。愚者のアルバチャスにのみ反撃を行う。
…………。
「 ハハハハハ……。
有馬要人……。隙ありだぁ。 」
…………。
至近距離からの 爆炎が 愚者を包み込んで……。爆散させた……。
…………。
「 やったぞ……。やってやったぞ…… !
私には 21体のレッドコート達もいる……。勝ったぞ。
慎一の切り札に……。存外容易い……。
さあぁ 丹内 君 !!……君も こうはなりたく なければ……。 」
「 聖正……。周りを見てみろ。 」
「 何ぃ……?周りが どうしたというのだ…… ? 」
…………。
アポロダイスは……。
眼前で 爆散した 赤色と黄色のアルバチャスに……。戦況の転換点を見出す。
これを交渉材料のように扱い、戦馬車の青年に 呼びかけるが……。
……これへの返答は、太陽の化身にとっては予期せぬものだった。
…………。
促されたままに 視界を周囲に向けると……。
…………。
「 なんだ これは ?この……。
コイツらは……。なんなんだ……。 」
「 確かに……。俺は お前のようには成りたくはない。
お前のように 周りが見えない奴にはな……。 」
「 何だというのだ……。
この数の code-0-は……。レッドコート達が 抑え込まれている ? 」
…………。
戦塵や 爆風による灰燼が 少しずつ落ち着き出すと……。次第に周囲の景色が明確になる。
アポロダイスにとっての 有用な尖兵……。
RCソード・ペイジにしても、RCカップ・ペイジにしても、21体のレッドコート種 全てが……。
複数の code-0-によって 足止めをされていた。
その数は……。10人程は いるのだろうか。
マルクトは それ程に存在しないし……。
レヴル・ロウのような密度の薄いアルカナ量では code-0-と同一の量産は、ここまで迅速には出来ないだろう……。
…………。
10人程の 愚者達は……。足止めに注力しているようで……。
足払いや 威力の弱い打撃で、21体のレッドコートの連携を妨害している。
…………。
愚者達の妨害は……。7人が引き受けて……。3人が 太陽の化身に近接戦闘を仕掛けた。
戦馬車のアルバチャスは 銃射撃によって、3人の愚者の援護に徹する。
…………。
凶神 アポロダイスは、連携による恩恵を失った。
…………。
愚者の青年 有馬要人は、打撃と共に……。改めて 宣戦布告を叩きつける。
…………。
「 神地……。俺達に託された この力は アンタを止める為のものだった。
……慎一さん が 残して、十一さん が 形にした。
俺の DAATは星の恩恵で、質量の有る残像を複製 出来る。
攪乱(かくらん)し確実にアンタに邪魔をさせない為に こっちを先に使った。
今から お前も……。人間に戻す。 」
「 何を……。 」
…………。
3人の愚者が 入れ替わり立ち替わり、アポロダイスに連脚を浴びせて……。
大きな時間の隙間を作り出す……。
…………。
この合間に、戦馬車のアルバチャスが 先んじて DAAT 月の恩恵を起動し、太陽の化身に接近した。
…………。
『 Barrage Armed !! Dual Function !! Sword Pentacle !!
( バラージ・アームド !! デュアル・ファンクション !! ソード・ペンタクル !! ) 』
『 Defender's Ability And Tactics !!
( ディフェンダーズ アビリティ アンド タクティクス !! ) 』
『 Extend !! Crescent Fighter !!
( エクステンド !! クレッセント・ファイター !! ) 』
…………。
code-7-DAAT……。月の恩恵は……。近接戦闘における能力が補強される特化型である。
接戦での高い攻撃能力と……。これを継続させられる 高い耐久性を特徴に持つ……。
…………。
『 Hover Chaser !! Function !!
( ホバー・チェイサー !! ファンクション!! ) 』
…………。
この時の戦馬車の装甲は……。
……現代的な戦車や 装甲車をも 彷彿とさせる、頑強な動く壁としての役回りも持つようになる。
…………。
丹内空護が、アポロダイスと組みつくと……。
3人の愚者は 後方へと撤収し……。こちらも DAATを月の恩恵に切り替えた。
レッドコート種を足止めする 7人の愚者の中に紛れていた本体が、動作音を鳴らす……。
…………。
10人程存在した愚者は 元の 1人に戻り……。綺麗な青色の輝きを周囲に振りまく……。
…………。
『 Defender's Ability And Tactics !!
( ディフェンダーズ アビリティ アンド タクティクス !! ) 』
『 Extend !! Dawn Moon Purge !!
( エクステンド !! ドーン・ムーン・パージ !! ) 』
…………。
code-0-DAATから あふれ出る 光りに包まれたレッドコート種は……。
……元になったと思われる人間の姿を取り戻していく。
…………。
『 Barrage Armed !! Dual Function !! Wand Pentacle !!
( バラージ・アームド !! デュアル・ファンクション !! ワンド・ペンタクル !! ) 』
『 Hover Chaser !! Function !!
( ホバー・チェイサー !! ファンクション!! ) 』
…………。
青年 有馬要人は 自身から発せられる、不活性化の効力を 杖型武装に乗せる。
ホバー滑走で駆けまわり……。この場の レッドコート種の全てに これを行っていく。
B.A.Wandの先端からは 不活性化の光が放出され続けており……。
……まるで、巨大な筆に浸された墨汁を 振りまくかのように スラローム移動の中で 杖を振り回す。
…………。
21体のレッドコート達は、行方不明者の人間の姿を完全に取り戻していた。
今でこそ 意識は失っているようだが……。天瀬十一から送られた使用案内 通りの効果が発揮されている。
…………。
……。
ついに、戦いを 3者だけの状態にまで 押し戻す事が出来たのだ。
…………。
……。
青年 有馬要人と、丹内空護に……。天瀬十一からの ボイスチャットが 入る。
更なる変化の兆しは……。事態の好転を目指す全員の総力のようだった。
…………。
「 2人共 聞こえるかい ?
早速で悪いけど、要件を伝える。
今から、そっちに 丸七型が 2人顔を出す筈だ……。
3体の レッドコート種に 追いかけられて、向かっている。
3体の 不活性化を、有馬 君が……。
空護は……。丸七型 2人と共に 人間に戻った 班員達を護りきってほしい。
頃合いを見て 護送して欲しい。
レヴル・ロウ 20人を 特務棟の防衛要因から回している。
生身の人間 24人なら……。
アルバチャス 1人、丸七型 2人、レヴル・ロウ 20人で運べる筈だ。
特務棟の方では 医療班も待機している。
気を付けて 帰還してくれ。
有馬 君の DAATなら、今の神地にも 対抗できるだろう。
撤退の時期は 空護に一任する。
以上だ。2人共 最後まで気を付けて。 」
…………。
話の内容をまとめると……。
E-07 地区で戦っている 2人の丸七型が、3体のレッドコート種を こちらに誘導してくる というものだ。
…………。
到着次第……。有馬要人の DAATで レッドコート種を人間に戻し……。
丹内空護は その 2人と、こちらに向かっている 20人のレヴル・ロウと協力して 撤退戦を……。
……といった具合だ。
…………。
……。
有馬要人と 丹内空護は、簡単に了承の返答を返して 件の 2人が 来るであろう方角を視界にいれる。
示し合わせたように……。2人の人影が見えた。
人影は どちらも丸七型で……。ホバー滑走で走行し 後方にはレッドコート種が 3体追従しているようだ。
情報武装用の通信シグナルを確認すると 2人が誰なのか判別できた。
…………。
1人は 荒井一志……。もう 1人は 恵花界である。
恵花界が、自身の後方に向けて 小銃型武装 R,R,Gで、威嚇用の微弱な弾丸を バラまいているようだ。
荒井一志は、不意な強襲を 盾や 小剣型武装 L,L,Eで、妨害しては 2人にとっての致命傷を避けている。
…………。
……。
青年 有馬要人は、直ぐに状況を把握して 動き出した。
DAAT 月の恩恵が まだまだ 稼働できる事を再認識して……。2つの武装だけを起動しなおす。
…………。
『 Hover Chaser !! Function !!
( ホバー・チェイサー !! ファンクション!! ) 』
『 Barrage Armed !! Dual Function !! Wand Pentacle !!
( バラージ・アームド !! デュアル・ファンクション !! ワンド・ペンタクル !! ) 』
「 状況は わかった……。
空護さん もう少し そっち お願いします。 」
「 誰に言っている。
行け !!有馬 !! 」
…………。
愚者のアルバチャスは、B.A.Wandを両手で しっかりと握って 3体のレッドコート種に接近した。
杖型武装の 先端から 綺麗な青色の輝きを放ち……。2人の丸七型と すれ違う。
不活性化の 光源を、大ぶりの横薙ぎで払い……。一振りで 3体のレッドコート種に浴びせた。
…………。
有馬要人は、この動作を行い終えるのと同時に 滑走機能を利用して 身体の向きを半回転させる。
縦方向の体軸を起点にした、独楽のような動きの方向転換だった。
…………。
進行方向を反転させて、直ぐに来た道を逆走する。
目指す先は 丹内空護が戦う、アポロダイスの いる地点だ。
…………。
……。
愚者のアルバチャスに、伊世伝次からの ボイスチャットが届く。
有馬要人は、恵花界に情報武装でのチャンネルを合わせて 2人の状態を気に掛ける。
…………。
「 有馬 五班長。荒井です。
助力 ありがとうございます。
自分は、界と 一緒に レッドコート種から戻った人達の 安否確認に移行します。 」
「 一志か……。怪我は無さそうだな。
後少しだ……。お互い頑張るぞ。
界の方は どうだ ?まだ動けるか ?
……界 ?聞こえてるか ? 」
…………。
今後の行動と現在の個々の状態の確認だったが……。少し反応が弱かった。
少しだけ気になったが……。直ぐに時間差での返答が帰ってくる。
…………。
「 ……こちら 恵花界です。
すみません。返事が遅れましたが 僕も大丈夫です。
指示は、天瀬 副指揮長からも頂いているので……。
規定の行動に移ります。
護送用の救援人員の誘導は、僕が行います。
有馬 五班長も 気をつけてください。 」
…………。
青年 有馬要人の心配は杞憂だったようだ。
気持ちを切り替えて、太陽の化身の元へと最接近していく……。
…………。
……。
有馬要人は、丹内空護が激戦を繰り広げる 場へと戻って、杖型武装を軽めに振りかぶる。
戦馬車のアルバチャスが、これを見越して 後方へと距離を置いた。
愚者のアルバチャスが B.A.Wandによる 不活性化の輝きを、太陽のエヌ・ゼルプトに注ぎ込む。
凶神 アポロダイスは、愚者の行動に嫌悪した。
…………。
「 やめろ…… !!私は……。
力を手にしているのだ !!
太陽の !!英雄であり !!神である私への !!嫉妬か !?
有馬要人ぉ……。グゥォ……。
私は……。私は…… !!
太陽英雄神だ……。
負けてなるものか……。慎一の小細工に……。 」
「 神地……。アンタも 1人の人間だ。
友がいて……。故郷がある 人間だ…… !!
人間に戻れるんだ !!
今度こそ code-19-も止めて……。
身柄を抑える。
光の試練なら、俺達も戦える !!
知っている事を 全て 話してもらうぞ。 」
「 流れ者 風情が 私に……。説教を垂れるなあぁ !!
……力は渡さない。
光の試練は、私が 1人で成し遂げ……。
アルカナの光の恩恵は……。全てを私の物とトするのだ…… !!
先攻利益さ……。先駆者が全てを 総取り するのだ……。
それが…… !!
私の未来の あるべき全てだ !!
不活性化など……。
英雄のマルクトと エヌ・ゼルプトの力を合わせれば…… !!……跳ねのけられる !!
……手始めに ニューヒキダ全域を焼き払ってやろう。
最早、マルクトの回収は 捨てる。
街ごと蒸発させてやろうじゃあないか !!
なめるなよ ?……大馬鹿者が !! 」
…………。
太陽のエヌ・ゼルプトは、周囲の温度を 上昇させていく。
その様子から 意思は固く……。微塵の揺らぎも望めないようだった。
code-0-DAATの月の恩恵を 跳ね飛ばしたように……。赤熱した拳で B.A.Wandをも殴り飛ばす。
2人のアルバチャスが、肉薄した戦いの中でも連携を取り合うが……。
…………。
……。
このままでは……。危ない。
…………。
……。
周囲には、人間の姿に戻ったばかりの 気を失った 24人の姿が散らばっている。
調度……。恵花界が、護送用に送り込まれたレヴル・ロウ 20人を引き連れて駆け付けていた。
有馬要人は……。覚悟を決める。
丹内空護、荒井一志、恵花界 と護送用に現着した 20人に、24人の救助を任せる事を……。
…………。
戦馬車のアルバチャスからの ボイスチャットが 青年に届く。
…………。
「 有馬。……本当に 1人で大丈夫か ?
お前の実力は信頼しているが……。決断の 1つは軽いものではない。 」
「 心遣い ありがとうございます。
けど、大丈夫です。
復興区画とはいえ……。
被害が増えたら困る場所じゃ、空護さんの DAATは全力を出し切るのも難しい。
それに……。
大人数を まとめる なら、俺よりも最適です。
今さっき 24人分の時間稼ぎが出来ただけで御の字でしょう。
神地さんは本気だ……。
なら、それに対抗するのが 俺の最善です。 」
「 最強の 14秒……。
お前の DAATの最大の切り札か。
こっちの人命は俺が無事に特務まで連れていく。
……後で また会うぞ。有馬。 」
「 もちろんです。 」
…………。
戦馬車のアルバチャスが、DEF 月の 時間軸の引き延ばしによる加速で激戦区から離れていく。
疾風のような戦馬車によって、2人の丸七型や 20人のレヴル・ロウ達の近くへ 24人の人員が運ばれた。
…………。
……。
この日……。多くの人物や 数多のエイオス達の交戦が繰り広げられた この場所は……。
今となっては、憤怒の様相で 力を高める 太陽の化身と……。
殿(しんがり)として残った愚者だけに成ってた。
禍々しい太陽は、全身が赤熱し……。両手には武具すら握っていない。
…………。
「 有馬要人……。思えば……。
君の存在が 私の多くの計画を狂わせた。
只の流れ者……。
有象無象の 1人でしかない お前が……。
只の根無し草を 利用したつもりだったが……。
私の方が 振り回されていた。
居場所を無くし……。
栄誉も無くした。罪悪感の 1つでも持ってくれているのかな ?
どうなんだ……。有馬要人 !! 」
「 言いたい事は……。それで全部か ?
俺は今から アンタを消滅させる……。全力でだ !!
張り合ってみろよ アンタの全力で !! 」
…………。
愚者の青年は……。腰部側面に設置されている DAAT専用の起動センサーに手をかざした。
起動センサーと同じ方向の中空に投影されたロゴから、太陽の円環が輝くロゴを選択する。
…………。
『 Defender's Ability And Tactics !!
( ディフェンダーズ アビリティ アンド タクティクス !! ) 』
『 Extend !! Aureole F0Ol !!
( エクステンド !! オーレオール・フール !! ) 』
…………。
その瞬間から……。
有馬要人の全身に アルカナの光が循環し 密度を高めていく。
愚者のアルバチャスの頭部には 光の円環が出現し、光の放流を生み出す。
護符の恩恵 B.A.Pentacleにも似たような効果だったが……。その効果の幅は 似て非なる領域である。
…………。
DEF 月の恩恵を使用していなくとも、時間軸は引き延ばされていく。
莫大な量の アルカナの光は、愚者のアルバチャスの頭部だけではなく腕部や脚部からも噴き出している。
有馬要人は、全身の筋肉の力を適度に抜いて……。拳をいつでも固く握れる気構えを整えた。
短く息を吸って……。ゆっくり細長く 口から吐き出す。
…………。
スローモーションの世界で 青年が地面を蹴る。
…………。
太陽の凶神もまた、引き延ばされた時間軸へと活動領域を移して……。
極まった熱の権化のような身体で拳を繰り出した。
…………。
……。
愚者の拳と……。太陽の拳が……。激しく 何度もぶつかる。
有馬要人は無心だった。
短い距離を低く跳躍し、拳の甲の部分で相手の頭部を殴りはらい……。
膝蹴りからの 小さめのステップで 軸足を切り替えた中断蹴り……。
…………。
大きく踏み込んで 腹部から背中まで貫通させる勢いで放つ 下から突き上げるような強打。
…………。
……。
神地聖正も……。言葉の 1つも発さない。
愚者の繰り出す 殴打の拳を掴み……。
打ち出す勢いを利用して引っ張り寄せて姿勢を崩させる……。
無防備になった 姿勢の中でも最も 大きな効果を狙えそうな頭部に、反対側の拳をぶつける。
…………。
この時の拳にも掌にも 太陽のエヌ・ゼルプトとしての、アルバチャスとしての……。
炎熱を織り交ぜて……。1つ 1つの付加価値を高めて成果を積み上げる。
…………。
……。
通常の時間軸で換算すれば……。
最後の 3秒……。
…………。
……。
互いに限界は超えていた。
…………。
先程までに 繰り出した数々の拳と蹴りが 互いに全身の動きを鈍らせる。
…………。
愚者と太陽の拳が かち合う……。
アポロダイスは、拳鉄から 強大な炎の塊を発して 愚者を包み込んだ。
…………。
「 ハハ……。
……馬鹿め。律儀に殴り合い蹴りあい続けるものか。
間も無く……。君の奥の手は 臨界点だ。
……私の勝ちだ。 」
「 知ってるよ。
……俺の臨界点で 俺の勝ちだ !! 」
…………。
炎に身を包まれて……。
愚者が正拳突きを繰り出す。その拳は アポロダイスの顔面に正面から命中した。
有馬要人は、相手が 意識を飛ばした事を確認するまでも無く……。太陽の化身に向けて……。
たった 一撃の上段蹴りを叩き込む。
…………。
アポロダイスの上体の中心で炸裂した蹴りには、ありったけのアルカナの光が注ぎ込まれていた。
青色の光りが爆発するように 太陽の化身を吹き飛ばす。
遠く離れた 瓦礫の方まで……。
…………。
アポロダイスは ゆっくり 起き上がり 少しずつ歩を進めるが……。
…………。
「 こんな……。事が !!こんな馬鹿に !!馬鹿共に !!
……私は 諦めないぞ !!……ハハハッハハッハハハハ !!
絶対に諦めて……。たまるものか……。英雄殺しが……。
……私の勝ちだ。 」
…………。
太陽のエヌ・ゼルプトは……。全身から アルカナの光を噴出させて爆散する。
…………。
有馬要人は、通常の時間軸に戻り……。アルバチャスすらも 強制解除し……。
その場で仰向けに倒れ込む。
…………。
アポロダイスの爆発の後には……。神秘的な鉱物が転がっていた。
荒い多角形の結晶で……。ほんのりと暗いようで、奥底から湧きたつような輝きを内包している。
英雄のマルクトが……。
炎のような赤い輝きをチラつかせていた。
………………。
…………。
……。
- 前 回
- 次 回