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思いやり
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目次
~規律の順守~
ニューヒキダの何処かに確かに存在する場所……。
その場所は仄暗く……。広い窪地には 青白い光が満たされている……。
ぼんやりと 照らされる……。何処かの洞内……。
…………。
光り溜まりの淵には……。3つの影が立っていた……。
真紅の体表を持つ……。部族のような戦士……。ログ……。
黒い翼の天使型の怪人……。ドゥークラ……。そして……。
片翼 5枚の翼と 異形の片腕を持つ大柄な巨怪……。
黒翼の怪人が……。何やら話しているようだった……。
…………。
「 ……ポメグラネト。
ポメグラネト……か。
元来 存在しない筈の 是れ に、名前を付ける……。
……人間とは不思議なものだ。 」
…………。
黒い翼の 怪人は、何かを思い浮かべて 関心を示す……。
視線の先には、片翼 5枚の巨怪が立っている。
…………。
「 汝は そういった経緯でも 呼び名を認識できるのか…… ? 」
「 ……………………。 」
「 やはり……。
どれの意思すらも 残ってはいないか……。 」
…………。
赤眼の巨怪は……。静寂を極めており 一切の受け答えをしない……。
真紅の怪人が、一連の流れを傍観した末に……。
……今後の潮流を口にした。
…………。
「 ドゥークラ……。人形に話しかけても意味はない……。
英雄は 動き出した……。
試練は進むだろう……。 」
「 我を誰だと思っている……。カシュマトアトルよ……。
我は使い……。
試練の道程を絶えず導く天使の長……。
そして、最も最後のエヌ・ゼルプト……。
試練における 秩序に最も近しく……。
あらゆる 審判を下す……。
英雄であろうと……。エヌ・ゼルプトであろうと……。
規定数の機を活かせないものは……。
暗雲に溶かす……。 」
…………。
黒翼の怪人は、光の試練と思しき 事象について……。
これに関わる エヌ・ゼルプトについて……。淡々とした口調で 言葉を紡いだ……。
その声には 微細な抑揚も無く……。静かだった……。
…………。
「 この度の試練の進捗は……。
3体のエヌ・ゼルプトが 人間によって倒されている……。
皇帝、恋人、節制……。
君主型が 1体……。天使型が 2体……。
遺物型を含めて 残る 2体のエヌ・ゼルプトを倒す事が出来れば、試練は成就する……。
だが……。この度の試練は成就しないだろう……。
試練の英雄は いずれ消滅する……。 」
…………。
光の試練に関する 知見なのか……。
多くの謎は、仄暗い 洞の中に 静かに 潜む……。
………………。
…………。
……。
~表か裏か~
ある日の夕食時……。
特務棟の、実動班班員 宿舎から 離れた街の物陰では……。
植物好きの青年 恵花界 と……。
適当な青年 伊世伝次が、普段の様子とは珍しく……。感情に波を立てていた……。
恵花界は、自身の中の悩みを 怒りと隣り合わせにする……。
…………。
「 なあ、伝次……。
僕らは 何なんだろうな……。
戦闘処理に出ても、マルクトが無い分 大きな戦果は上げられない……。
誰かの敵(かたき)を討ちたくても……。
今のままじゃ……。
レヴル・ロウのままじゃ、レッドコートにも勝てるか どうか妖しい……。
関さん を助けたのが お前なら……。
僕の言いたい事は わかるだろう ? 」
…………。
植物好きの青年の悩み……。
戦いにおける ある種の天井……。それを打破するまでの もどかしさが……。
……フラストレーションに成っていた。
自分自身の気持ちとは 横並びにならない結果が……。
まるで、額に 水滴を落とし続ける拷問のように……。日々の焦燥感を乗算しているのだろうか……。
…………。
恵花界の 心の内に潜む 何かしらの基準だったり、行き先と 思い通りに合致しない……。
…………そんな様子だった。
…………。
「 なあ……。伝次……。
……聞こえてるのか ? 」
「 んん ?……ああ !!
そう……だな !!……俺もそう思う !! 」
「 なんか変だぞ ?伝次……。
前の戦いで 何か あったのか ? 」
…………。
気心の知れた 同期の中でも……。情報開示には格差が有り……。
極々 最近の出来事が、適当な青年の 中で引っかかる……。
血の日食において……。
行方不明だった……人物のレッドコート化 現象。関あかり が、レッドコート種へと変容してしまった事実。
これについては、伊世伝次も 1人の班長として 実際の映像を元に情報共有を受けたばかりだった。
情報共有と同時に……。混乱を避ける為の情報統制と……。恵花界への警戒。
関あかり の件を知っている者の間では、経過観察とされているものの……。
間違いなく……。これは、最悪の事態を想定しているのだろう。
恵花界が 救助されてから 既に 1週間以上は経過しているが……。
別段 気になるような 所は見当たらず……。それどころか、至極 今まで通りの感覚だった。
それに……。
関あかり に関しては……。救助当時から 意識は無く……。
例の件が 発生するまで、昏睡状態が続いていたようなもので……。
こうして……。言葉を交わせる状態でもなかった。
過去の出来事も含めて、何のブレも無い 馴染みの相手には 疑いようもない。
伊世伝次は、悶々とするが……。核心に迫るべきか、天秤を揺らす……。
…………。
「 ……あのさ 界。……お前。 」
「 ん ?……どうしたんだ ?
改まって。らしくないな……。 」
…………。
核心に切り込めば……。全く何もない事には出来ない……。
それは きっと、誰から見ても 明確にわかる波風だ。
何かを onか offに切り替える スイッチの選択……。
自己の不安を解消する事を選ぶのか……。可能性を……。いや、相手を信じるのか……。
短い時間での 選択が 伊世伝次の 前に 接近していく……。
どちらを……。選ぶべきか……。べき…… ?
適当な青年が……。選ぶべき側を決める……。
…………。
「 ……あっ……と。…………そうだな。そう !!
やっぱりさ……。その……。
名部マリアちゃんの 連絡先 教えてくれよ ?
間を取りなしてくれないか ?
ワン モア チャンス !!
プリーズ ミー !!ミスター 界……。 」
「 僕が真剣な話を してるのに……。
お前は 本当……。変わらないな……。
良いか ?伝次……。
ニューヒキダの安全を確保しないと、デートなんて夢の又 夢だろう ?
流石に適当すぎるぞ……。
けど、わかった。アイツだ……。
ポメグラネト と……。
レッドコート種の打開策の見通しが付いたら……。
その後なら、僕も考えるよ。
丹内さん みたいな、実績が ある方が……。
気持ち的にも 箔が付くんじゃないか ? 」
「 それは……。目標が高すぎかな。
……ハードルの下……。潜り抜けてもいいか ? 」
…………。
……信じる事。
背中を預けられる同期を……。疑わない事……。揺らいだ事が間違いだった……。
いつもと変わらない。何気ない冗談も通じる奴だ……。
経過等、難しい事を観察するまでも無い……。そんな筈だ……。これでいい……。
念の為の確認を……。
…………。
「 界……。お前は……。
今も変わらないんだろ ?
亡くなった ご両親の為に、ニューヒキダを絶対に安全な街にしたい……。
これが 軸に有るんだよな ? 」
「 当然じゃないか……。
僕が……。その為に 戦い続ける事は 絶対に変わらないよ。
今までも、これからだってね。 」
…………。
念の為の確認を……。選択の後に……。沿える……。
問題ない。
問題なんて 全くない……。きっと……。そうだ……。
…………。
恵花界は、熱意に火が付いたのか……。益々 意識の角度が強くなる……。
…………。
「 よし……。そうと決まったら……。
僕達も、徒手格闘の訓練を増やそう…… !!
その後は……。
レヴル・ロウ以上の手段を……。どうにか手に入れられれば……。
実績があれば……。
僕達の発言力だって 今よりも強くなる筈。
実動班に配属されている以上は、
誰にだって アルバチャス適性の項目が有るだろうし……。
仮に……。レヴル・ロウを使い続けるにしても、
一六型みたいに 武装機器の対応端末に マルクトを装着すれば……。 」
「 界……。お前……。
そんな事まで知ってるのか……。
もしかして、
共有用のデータレポート 全部読んでるのか ?
今の話……。
書かれてない内容もあるだろう ? 」
「 僕だって……。なんでもするさ。
出遅れた分の巻き返しにね……。
レポートに記載されていない部分は、丸七型の使用感からの予想も混じってる。
力不足は、自分の行動で埋めるしかないんだ。 」
…………。
恵花界……。平時は静かで……。思慮深い印象を漂わせるが……。
自身が するべきことの為に、苦労も辞さない。
適当な青年 伊世伝次から見た イメージは、今も変わらない。きっと、これからも大丈夫だ……。
…………。
「 お前……。やっぱ 凄いわ……。
流石だ……。界……。 」
「 そうか ?
ありがとう。伝次。 」
…………。
この日も……。
翌日の日の光が、地上を照らすまでの間……。
静かに……。深く……。夜の静寂が広がり……。世界を包み込む……。
…………。
……。
………………。
…………。
……。
特務棟の社長室……。
すっかり日も暮れている 一室に……。
白衣の青年 天瀬十一が 顔を出す。
片手には幾つかの紙の資料が 納められており……。
白衣の青年は、これを 部屋の主でもある ショートヘアの女性に提出した。
ショートヘアの女性、仁科十希子 は……。
受け取った資料の中身を 簡単に目視で確認すると、お礼の言葉との ついでに……。別の話題に触れる。
…………。
「 ありがとう。天瀬 君。
確かに確認しました。細かい部分は明日中に目を通しておきます。
それにしても……。
今日は、まだ帰らなくて いいのかしら ?
あんな事が有ったばかりでしょう。 」
…………。
血の日食での行方不明者に起きた 1つの突発的な出来事……。
レッドコート化……。
これによる影響と、
以前から 天瀬十一が仕事に撃ち込みすぎている事への危惧なのか……。
ショートヘアの女性が、話の方向性を変えた……。
白衣の青年は、世間話同然の話題から 強引な切り口で 応答する。
…………。
「 配慮して頂き ありがとうございます……。
もう そろそろ、帰ろうかと思っていましたが、少しだけ お時間を頂きたいと思いまして。
C.E.O代理は……。
World-Exchange's-Bayからの出向で、こちらに来たそうですね……。 」
…………。
天瀬十一の表情に、多少の変化があったようで……。
ショートヘアの女性 仁科十希子も 察する。
白衣の青年は、ある目的で本題に踏み込んだ……。
…………。
「 あちらでは、どういった業務を担当されていたんですか ?
やはり、光の試練に関連するような業務でしょうか……。 」
…………。
仁科十希子は……。
天瀬十一が 踏み込んだ内容から……。おおよその全体像を見定めたらしい。
そして、言葉を選びながら……。返答し 会話を早々に終わらせてしまう。
…………。
「 基本的に……。プライベートな事を答えるつもりは無いんだけど……。
けど……。貴方は 恐らく 私を疑っている。
天瀬 君が考えているのは こう……。
私が、人間に擬態したエヌ・ゼルプトなのではないか……。
そうでしょ ?
過去の経歴を探って、ヒントを得ようとした……。
そういうのは、危ないから やめなさい。
危険な諜報活動は、最初から胡散臭い人間の方が向いている。
例えば……。
リスのように、どこにでも潜り込んで いかなくては ならない……。
如何にも無害そうな 何食わぬ顔でね。
貴方には不向きよ。
もし、下心のある相手に そんな事してたら……。
都合の良いように利用されるだけでしょうね。好きなように振り回されて終わり。
純粋で人の良い貴方に免じて、教えてあげる。
詳しくは離せないけど……。私も前職は技術者だった……。
どこから出向してきたのか 考えたら、どういった分野か 想像は出来るでしょ ?
神地聖正のように 1人で戦おうと考えたら ダメですよ ?
それじゃ……。
お先に 失礼します 天瀬 君……。戸締り よろしくね。 」
…………。
ショートヘアの女性は、帰り支度を済ませて パソコンの電源を落とした。
白衣の青年に、ちょっとした雑務を任せると……。
不毛にも思える話を終わらせて 立ち去って行った……。
………………。
…………。
……。
~不信感~
某日……。
空の太陽に、幾つかの雲が引っかかる日の昼頃……。
ニューヒキダ全域に、怪人達の出現を知らせる警報が鳴る。
N-04 地区の戦いがあった日から数えて……。約 1週間が経過していた。
今回の出現地区は、3箇所……。
特務棟周辺の防衛と予備戦力も兼ねて、4つの編成に分かれて 対処が進む。
…………。
……。
L-05 地区。有馬要人、恵花界……。
装備の内訳としては……、code-0- 1名。丸七型……。小銃型 R,R,G携行 1名。……合計 2名編成。
最優先 行動目標は……。該当地区 近隣に出現中の大量のピップコートの掃討……。
そして、有馬要人によって 恵花界の経過観察……。戦闘処理におけるフォローアップ……。
…………。
……。
N-06 地区。丹内空護……。
code-7- 1名。単独編成。
最優先 行動目標は……。該当地区に 出現中の 2体のエイオス……。
レッドコート種 ソード・キングと、ポメグラネイトの対処。
…………。
……。
E-07 地区。伊世伝次、荒井一志……。
装備の内訳は 丸七型……。
伊世伝次は 小銃型 R,R,G携行。荒井一志は 小剣型 L,L,E携行。
班の構成は従来通りで……。
伊世 第三班は、 小銃型 R,R,G携行のみで……10名。
荒井 第四班は、 小銃型 R,R,G……。小剣型 L,L,Eの携行を 5名ずつで……10名。
2個班合一編成で……。総員 22名……。
最優先 行動目標としては、該当地区 近隣のピップコート群の掃討……。
この地域には、レッドコート種の出現も確認されており……。
略称表記であれば……。
RCソード・ペイジ、RCカップ・クイーンが 1体ずつ存在しているとされているようだ……。
…………。
……。
A-22 地区。天瀬十一、大代大……。
天瀬 第一班は、 小剣型 L,L,Eのみで……10名。
大代 第二班は、 小銃型 R,R,G……。小剣型 L,L,Eの携行を従来通りに 5名ずつの……10名。
天瀬十一は……。小銃型 R,R,Gを携行し 一六型で……。
大代大は……。小剣型 L,L,Eを携行し 丸七型で……。
2個班合一編成の 総員 22名……。
該当地域での優先行動は、不意な戦況の変化への対処用予備戦力……。兼、特務棟 近隣への警戒。
…………。
……。
この日の 交戦予測地域は広く、長く過酷な 戦いを予見させる。
だからという訳では無いが……。
白衣の青年 天瀬十一によって、ある後天的な対処策が行われていた。
旧型のエイオス対策装置の改修装置……。A2鹵獲装置 改による足止めだ。
……特にレッドコート種の時間稼ぎを狙って、警報が鳴ったのと殆ど同時に これが起動される……。
アルバチャスや、レヴル・ロウ現着までの……。最大限度の抵抗だった。
各地では、家庭用掃除ロボットのような動きをする 虎ばさみ のような形状の小型機器が、
ホバー移動でエイオスを追いかける。
…………。
……。
L-05 地区……。
レンガ壁と古いトンネルが見える 山林地帯から少し離れた 公道……。
有馬要人、恵花界 組……。
青年が見渡す限りに、多数のピップコートが群を成して ひしめいている。
ワンド・ペイジ……。ペンタクル・ペイジ……。ワンド・ナイト……。
今回の戦闘処理で 数は最も多いようだが、大した事は無いだろう。
青年は、植物好きの青年の心情や様子の変化を気に掛けながら……。臨戦態勢に移った……。
…………。
「 界……。こいつらは 俺と お前なら敵じゃない。
焦るなよ ?
R,R,G での射撃も、格闘も……。
お前なら 余裕だろ ? 」
「 有馬 五班長……。任せてください。
僕だって、今日まで 何度も訓練をしてきました。
今さら、ピップコートなんかに足元 救われたりしませんよ……。
直ぐに片づけて……。 」
「 他の地区の救援に行くぞ ! 」
…………。
青年 有馬要人は、行方不明者 レッドコート化の件を気に掛けてはいたし……。
神地聖正からの これを後押しするような物言いも 記憶には新しく、今も鮮明に思い出せるが……。
どこまで、信憑性が高いのかも断定出来ない事と……。
仲間としての、恵花界を 信頼する気持ちの方が強かった……。これでも、万が一を想定した場合……。
その場合の覚悟は、既に用意をして 肩を並べる。
…………。
愚者のアルバチャスと、小銃型武装を構えた 丸七型が 一気に攻勢に出た。
…………。
『 Device Error Factor !! Cross Function !! THE STAR !!
( デバイス エラー ファクター !! クロス・ファンクション !! スター !! ) 』
『 Barrage Armed !! Dual Function !! Wand Cup !!
( バラージ・アームド !! デュアル・ファンクション !! ワンド・カップ !! ) 』
『 Rebel Function !! Pentacle !!
( レヴル ファンクション !! ペンタクル !! ) 』
…………。
2人は背中をあわせて 広範囲に銃射撃を ばらまく。
火球と光弾が飛び交い、跋扈(ばっこ)する 無数のエイオスが 爆散していった……。
…………。
……。
………………。
…………。
……。
A-22 地区……。
APCの特務棟が 在る地区 屋外……。
天瀬十一、大代大 組……。
彼誰五班の第一斑と第二班の総員を伴って、一六型と 丸七型の レヴル・ロウが警戒に当たる。
まだ、今回の戦闘処理は始まってから 大して時間も経過していない……。
戦況の変化は、一六型の情報武装に集約されるように成っているが、油断は出来ない。
天瀬十一は 自身の 一六型 を解して、各地の状況を精査する。
そんな中……。この場に残った人員以外が 出撃しきった 今頃になって……。
…………。
大量のピップコートが出現する。
白衣の青年 天瀬十一にとっても、温和な青年 大代大にとっても、想定内であるが……。
警戒の色は濃くなる。
…………。
「 見た感じは、ピップコートだけのようだ……。
大代さん、L,L,Eでの近接戦と 各個撃破は一任します。 」
「 了解です。
天瀬さんは、大切な管制塔みたいなもんですから。
僕らを上手い事 誘導してください。
小銃型デバイスの R,R,Gで、後方からバーン !……てな感じでね。
ひとまず 僕は、防衛ラインでも押し上げしょうか。 」
…………。
特務棟の 近郊でも、乱戦が始まる。
出現した怪人は、ペンタクル・ペイジと ワンド・ペイジだけのようだ……。
第一斑と第二班は、連携を重ねて 時間の経過に比例するように、ピップコートの数を着実に減少させていった。
…………。
少し時間が経過し……。
特務棟 周辺の エイオスを、軒並み 処理し終える頃。
大代大が、自班の第二班から 3名のレヴル・ロウを引き連れて哨戒行動に出る……。
…………。
そんな状況下で、更に少しの時間が経過すると……。
白衣の青年 天瀬十一の 元に、ある既視感の強いアルバチャスが姿を見せる……。
code-19- 太陽のアルバチャス。
…………。
太陽は、いつの間にか 一六型の近くに接近していたようだった。
恐らく、時間軸を移動できる機能で 誰にも気取られる事なく 現れたのだろう……。
-Twins And Sun- Accelerate……。
( ツインズ・アンド・サン アクセラレータ )
code-19-に備えられている 時間軸の移動機能 systemだ。これを使用すれば、高速化でもしたかのように活動できる。
…………。
白衣の青年は、警戒心を強めた。
…………。
「 神地さん……。やはり生きていたんですね。
有馬 君と 接触した事は聞いています……。 」
「 十一 君……。
警戒する必要はない……。
私は 試練の英雄として、何よりも君を育てた 1人の人間として……。
助言を与えに来たんだ。
埒(らち)が明かないだろう ?
全てを知る 私がいない、今の現状さ……。だからね、馬場の策を開けてやろうと思ってね……。
迷いは少ない方が良い。
何も知らない 今のままじゃ、付け焼刃の量産型しか工面できないだろう ?
現に……。今さっき……。
大代大を 私が助けてやった。
レッドコードの ペイジに成す術もないんだ 情けない。
命を奪う事に躊躇しない 愚者の男のように、馬鹿に成れないんだろうな……。 」
…………。
鮮烈な赤色のアルバチャスが、自己の波長を乱す事無く……。言葉を並べる……。
敵意は 本当に無いのか……。それとも……。
白衣の青年が、要件の骨子に迫った。
…………。
「 本題は何ですか…… ?
挑発する為に来た訳では無い筈です……。 」
「 そうだった……。
……嫌だな 歳を取ると話が長くなってしまう。
本題は……。老婆心だよ……。
私なりの 君達への……。 正義のヒーロー達への手向けさ。
今から 送るコードを、私のデータに試してみるといい。
ある、データの解錠コードさ。
礼は いらないよ。
World-Exchange's-Bayと結託しても、
知る事が出来るのは 過去の出来事の 一部だけだ……。
今の試練を少しでも知りたいのなら……。
学ぶしかない。
英雄は、その時と 立場で役割も 見え方も変わるだろう……。
試してみるといい……。 」
…………。
太陽のアルバチャスは、自身の用件だけ伝えると 出現した時と同じように、いつの間にか消え失せる。
一六型の情報武装には、それから もうしばらく後に成って報告が入る。
報告元は、大代大……。
内容は……。
RCペイジと交戦したが、突如現れた code-19-によって、
RCペイジが 瞬時に職滅されたとの事だった……。
白衣の青年 天瀬十一は、自身の情報武装に届いている 簡素な暗号コードを どうするべきか……。
……しばらくの間 考えた。
………………。
…………。
……。
~絆と虚栄~
N-06 地区……。
復興地区……。度重なる 戦いの影響が最も強く残る地区は……。至る所が 今も荒廃している……。
荒れ地のような瓦礫の中で……。
アルバチャス code-7-。
白色の戦馬車、丹内空護が 2体のエイオスと激しく戦う……。
…………。
『 Hover Chaser Function !!
( ホバー・チェイサー ファンクション !! ) 』
『 Barrage Armed !! Dual Function !! Sword Pentacle !!
( バラージ・アームド !! デュアル・ファンクション !! ソード・ペンタクル !! ) 』
…………。
アルバチャスが 行える 各武装を、適時 切り替えて……。数の不利にも怯まない……。
この場に出現している 2体のエイオス……。
赤眼の巨怪……。ポメグラネイト……。
左右非対称で大柄なエイオス……。
蘭々と輝く赤い単眼と、独特な形状の武装が片腕に固着し、片翼 5枚の翼が特徴的な怪人……。
レッドコート種。ソード・キング……。
赤熱した外殻と、炎熱を駆使する 新手のピップコート種のキング型……。
身の丈ほどの大剣を軽々と振り回す……。
ポメグラネイトによって、片腕から 光の短槍が発射される……。
闇色の鞭が 伸びてくる……。
RCソード・キングからは、重い剣圧の斬撃が 襲い掛かる……。
…………。
だが、これで押し切られる程 不甲斐ない戦いはしない。
白色の戦馬車が ホバー滑走で、間合いを変えて 攻守を切り替える。
片腕の盾や、片足の装甲を使い分けて……。あらゆる攻撃を 致命傷にさせない……。
…………。
『 Barrage Armed !! Dual Function !! Cup Pentacle !!
( バラージ・アームド !! デュアル・ファンクション !! カップ・ペンタクル !! ) 』
…………。
武装 systemを……。
多くの仲間によって培われた 武器を、力に変える。
刀剣型武装に光の刃を発生させて 薙ぎ払い……。
銃型武装に光を集めては、特大の光の弾丸や無数の光の弾丸を放つ。
…………。
『 Device Error Factor !! Cross Function !! THE MOON !!
( デバイス エラー ファクター !! クロス・ファンクション !! ムーン !! ) 』
『 Barrage Armed !! Dual Function !! Cup Sword !!
( バラージ・アームド !! デュアル・ファンクション !! カップ・ソード !! ) 』
…………。
時間軸を引き延ばし……。護るよりも、攻める姿勢を 前面に押し出した。
白色の戦馬車が、暴風のように 吹きすさぶ……。荒々しい 斬撃と 弾丸の猛襲……。
戦いとは無関係の落ち葉でさえも 旋風の中をスローモーションで 渦を描く景色の中……。
……一心不乱に 剣と銃を扱う。
今の戦いに あらゆる意識を結集させる 戦馬車だったが……。
こんな状況では、あり得ないであろう 声と人影を 知覚してしまう……。
…………。
「 ………………い。 」
…………。
その人影は 何かを伝えようとしているようだったが……。言語としては まだ形が無い……。
何かが……。間の空間に有るように、ピンボケした 只の音……。
…………。
「 ……に…………………………。 」
…………。
その人影は……。現在 最も……。そうなった経緯が不明の人物……。
戦馬車の青年にとって、今も気がかりな 未練……。
もしかしたら……。何かしらのボタンの かけ違いを間違わなければ……。
今も何事も無く……。生活していたのか……。それさえも わからない……。
…………。
「 夢川……。 」
「 ……私の変わりに 殺してください。 」
…………。
今までで……。最もハッキリと……。肉声が届いたようだった……。
まるで、耳元で……。耳の中で……。発せられたような……。直接的な声……。
思いもよらない……。
不意な出来事に……。DEF 月の活動時間が……。過ぎた……。
引き延ばされた時間軸が強制的に解除される。
明け方の悪夢からの目覚めのように、唐突に 見える景色が変わり……。意図しない感覚の落差に立ち眩みを起こす。
戦馬車の青年は、2体のエイオスから 手痛い反撃を受けてしまう……。
アルバチャス code-7-から、微量の赤と黒の粒子が噴き出した。
…………。
……。
………………。
…………。
……。
L-05 地区……。
古いトンネルや レンガ壁の残骸が山道に埋もれる 山林地帯付近の 公道……。
有馬要人、恵花界 組……。
大量に出現していた ピップコートは、2人の青年によって 打倒され数を減らしていた。
愚者のアルバチャス 有馬要人が、ホバー滑走で走り抜けて……。B.A.Wandを降り抜く。
丸七型を駆る 恵花界は、小銃型武装デバイス R,R,Gを 打撃武器として扱い、握把(あくは)で 脳天から殴り伏せた。
青年の後方では、5体のピップコートが……。
植物好きの青年の前方では、1体のピップコートが……。殆ど同時に爆散した。
交戦開始から、まだ 経過時間は浅い……。順調な流れだった。
青年 有馬要人から見ても、恵花界の様子に変化は特に無い。神地聖正から聞いた事は……。杞憂だったのか……。
深く思案するまでも無く、青年は 安堵した。
…………。
「 これで、ここら一帯の安全は確保できた。
大丈夫だったか ?界……。
怪我とかは無いか ? 」
「 大丈夫です。有馬 五班長。
こちらの丸七型の、推定活動時間の残量も まだまだ問題なさそうです。
早速、移動しますか ?
丹内 総指揮長となら N-06 へ……。
伝次 や 一志との合流なら E-07 へ……。どちらにしても移動時間は同程度です。 」
「 そうだな……。その二択なら……。 」
…………。
いつもと 変わらない様子の 恵花界だった……。
現状の 洗い出しを即座に行い、次の優先順位の候補を提示している。
いつもと変わらない。次を把握できる冷静さ……。
一六型の情報武装から 下ろされた戦況で判断するのなら……。
当初の予定区域で 最も早く一段落付いたのが、現在地の L-05地区のようだ。
他の 2つの地区は、大きく戦況が傾いている様子はない。
N-06 地区の戦馬車は、只の 1人でも劣勢にはなっていない……。相変わらずの状態だ。
E-07 地区の 伊世伝次と 荒井一志は、レッドコートとの交戦に 不慣れな可能性が伺える。
この該当地区での 強敵は、RCソード・ペイジ、RCカップ・クイーンが 1体ずつ……。
…………。
……。
青年は短い時間で 感覚的な イメージ重視で思案する。
ならやはり……。
先に E-07 地区を抑えて 補給に戻る人員と分けたうえで……。N-06 地区の救援に向かうのが良いか……。
……戦馬車の先輩なら、それまで 全然 戦えるだろう。
…………。
「 ……そうだな。やっぱ、その二択なら。
伝次 と 一志の……。
……!!
……避けろ !!界 !! 」
…………。
恵花界の……。数歩 程、後方に……。青白い光りが集約し……。真紅の体表を持つ……。怪人が現れる……。
天瀬十一の父、天瀬慎一を不意な強襲で殺害した……。不穏なエイオス……。
22災害では……。
数多のエヌ・ゼルプトやエイオスを消滅させたとされる……。目的も行動原理も異質な存在……。
民族的な木剣、マクアウィトルにも似た 特徴的な武器を扱う 戦士。
ログ……。カシュマトアトル……。複数の名前を持つ怪人……。
…………。
愚者の青年は、真紅の戦士の胴体に跳び蹴りを加えて、数歩分だけ 後ずさりさせる。
…………。
「 ……間に合った。
界……。身体 動くよな ?
コイツは……。俺に任せろ。
誰でもいい……。別の地区に合流するんだ。 」
「 真紅の戦士……。
ですが、有馬 五班長……。僕も残ります。
数の有利で……。対抗しましょう。
もう一度、この地区を早急に抑えるんです……。
他への合流は その後で良いと思います……。
伝次 も 一志も、日を追うごとに強くなってます。 」
…………。
青年には、真紅の戦士の行動も狙いも読めない。
植物好きの青年と 足並みをそろえて戦うには、リスクが大きいように思えた。
だが……。青年 有馬要人が、丹内空護への信頼を抱くのと同じように……。
同期の 3人の間にも……。同質の団結と背中を預け合う感情が あるようだ……。
…………。
ならば……。どうするか……。青年は 1秒にも満たない間隙の直観で……。
決意を固める……。
…………。
「 同期を……。信じるのか……。
……良い事だと思う。
けど、コイツの相手しながらじゃ……。
いや……。違うな……。
界だって 半端な気持ちで戦ってないんだよな。
なら、今からは 俺達 2人の本気以上だ……。
準備出来てるか ? 」
「 いつでも大丈夫です。
この街を、平和にする為なら……。覚悟は出来てます ! 」
…………。
2人の青年が 真紅の戦士に相対する。
真紅の戦士は、中空から 木剣と木製の盾を呼び出し……。戦意を剝き出しにする……。
低い声とは反比例する、甚大な規模の戦意……。
…………。
「 鍵を持つ愚者よ……。
力を示せ。
眼前に迫る 天使型に……。
いずれ来る遺物型を 超えられるものか 示すが良い……。
土のマルクトが どれ程か。
脇道を正道に出来る物か どうか……。
彼の物に並び立てるものか……。示すのだ。 」
…………。
木剣の一振りが、公道のアスファルトを簡単に破壊してしまう……。
愚者のアルバチャスと 丸七型が、最初の一撃を避ける。
…………。
「 これが 真紅の戦士……。 」
「 界、コイツの話す事は気にするな。
俺も 意味が分からない。
けど、確実なのは……。
コイツの実力は エヌ・ゼルプトでも かなりの上位に入る。
気を抜くなよ……。 」
…………。
各々が後方や側面に飛び退いて、警戒心を高めた。
ピップコートとは格が違う 強敵の強襲には 一瞬の緩みも許されない。
かといって、警戒するだけでは 立ち行かない。
例えるのなら……。
ピアン線の上で綱渡りをするような 細心の注意と……。
土砂降りの中でも、跳ね返りの水を気に留めないような、その場限りの大胆さ……。
強者に相対する為の 2つの鉄則。
機会を能動的に 掴みとるしかない……。
…………。
『 Barrage Armed !! Dual Function !! Wand Pentacle !!
( バラージ・アームド !! デュアル・ファンクション !! ワンド・ペンタクル !! ) 』
…………。
真紅の戦士は 筋骨隆々とした体躯にも関わらず、見かけ以上の速さで踏み込んで来る。
木製の盾では殴打を……。木剣では斬撃と殴打の両方を……。最小限の予備動作で使い分けていた。
…………。
「 力を示せ。
燻ぶらせる愚者よ……。 」
…………。
青年は、杖型の武装 B.A.Wandで 真紅の戦士からの攻撃を 適時に見極めて対処する。
受け流すべき攻撃……。絶対に触れてはいけない 受けきれない一撃……。
受け止めれば……。反撃の瞬間を作れるような攻撃……。
木剣の横薙ぎを回避し……。牽制程度の……。重さが乗っていない部類の 木盾の殴打に……。
…………。
「 隙……。あり……。……だ !! 」
…………。
両手で持った B.A.Wandによる 強打を かち合わせる。
……こっちのペースを 掴みとる事に成功した。ほんの数秒 有るか無いかの 間隙だった。
…………。
『 Rebel Function !! Pentacle !!
( レヴル ファンクション !! ペンタクル !! ) 』
「 ……その隙 僕が繋ぎます !! 」
…………。
真紅の戦士の側面から……。丸七型の炸裂弾が 発射される……。
愚者の青年も、次の行動を見越していたのか……。真紅の戦士との距離を、即座に取った。
爆風を 木剣で打ち払い……。真紅の戦士が姿を露わにする……。
…………。
『 Device Error Factor !! Cross Function !! THE STAR !!
( デバイス エラー ファクター !! クロス・ファンクション !! スター !! ) 』
「 サンキュー 界……。
後は任せろ !! 」
『 Barrage Armed !! Dual Function !! Cup Pentacle !!
( バラージ・アームド !! デュアル・ファンクション !! カップ・ペンタクル !! ) 』
…………。
青年が、引き金を握る……。
B.A.Cupに 貯えられた 極まった光の弾丸が、星の恩恵を乗せて 流星群のように複製されて飛び交った。
これらは、真紅の戦士の 全身に直撃する……。
…………。
「 ググゥ…… !!流石は……土のマルクト…… !!
…………ヌゥゥ !! 」
…………。
無数の星のような弾幕が、真紅の戦士を爆風に包んだ……。
そして……。
…………。
……。
戦塵が 少しずつ風に流されて、大地の上を滑っていく……。
…………。
……。
2人の青年は、事態の行く末を見定めようと 警戒心を 今も保持する。
先程まで、真紅の戦士が立っていた場所には……。
一切の痕跡も無く。何者も存在しては いなかった……。
…………。
「 真紅の戦士を……。
僕達が……。倒した ? 」
「 いや……。
流石に……。手応えが無さすぎる……。どういう事なんだ……。 」
…………。
青年には、これだけで あの怪人を仕留めたとは思えなかった。
情報武装 アルカナ・サーチでは、近隣にピップコートの 1体分すらの反応も無い……。
納得はいかないが……。
事態が好転した事実は受け止めて……。当初 通りに次の行動を見繕う事にした。
1つ問題が有るとすれば……。ピップコートの掃討とは異なり、大物との戦いだった以上……。
レヴル・ロウの活動可能時間を 消耗しているであろう事だ……。
実際……。
周囲の安全を確認した後に、この件を 恵花界に確認すると……。
目安としては、レヴル・ファンクションを 1~2度使用できれば 良い程度のようだ。
アルバチャスは、マルクトの影響で まだまだ活動時間に余裕が有るが……。
丸七型に関しては 一度補給を 受けた方が良いかもしれない……。
2人の青年が、現状の洗い出しを行っていた時だった……。
…………。
……。
N-06 地区で……。大きく状況が変化したようだった。
丹内空護が、ポメグラネイトと RCソード・キングと交戦する地区である……。
どうやら、一瞬の隙を突かれて 後手の戦いに 傾いてしまったらしい。
また、何故か……。
情報武装の共有時刻にラグが出ているようで、時刻表示の様子が変だった……。数字の表記が少し崩れている……。
青年は、恵花界に今後の指示を出す。
丸七型の補給を特務棟で 受けた後に、E-07 地区に向かい 伊世伝次と 荒井一志と合流を……。
青年 有馬要人は、単独で N-06 地区へ 赴いて、丹内空護の救援に……。
互いに連戦続きだが、行動目標を定めた。
…………。
……。
そして、ホバー滑走で この地を離れようと思った矢先……。
…………。
……。
有馬要人の視界に……。
…………。
……。
見覚えのある、黒い羽根が 降り注いでいた……。
青年は、これが 何を意味するのか、直ぐにわかった。
…………。
「 有馬 五班長……。アレは……。
黒翼の……。 」
「 お前は もう行け……。
ここまでの連戦は無理だ……。大丈夫 俺が抑える。
直ぐに補給に向かうんだ。
丸七型の エネルギー残量では、もう戦力外だ……。 」
…………。
上空から、黒い羽根を舞い散らせて 現れるエヌ・ゼルプト……。
黒翼の怪人……。ドゥークラ……。
愚者のアルバチャス 有馬要人も、戦馬車のアルバチャス 丹内空護でさえも……。
一度も勝利を実感した事のないエイオス……。
真紅の戦士と同等か、それ以上の強さを隠す 上位の怪人。
ドゥークラは、上空から ラッパを鳴らし 黒色の羽根を 追尾弾のように操る……。
触れれば爆発を巻き起こす 危険な 黒い羽根が 無数に飛び回り、恵花界を狙った……。
…………。
『 Device Error Factor !! Cross Function !! THE STAR !!
( デバイス エラー ファクター !! クロス・ファンクション !! スター !! ) 』
『 Barrage Armed !! Dual Function !! Wand Cup !!
( バラージ・アームド !! デュアル・ファンクション !! ワンド・カップ !! ) 』
…………。
青年が、即座に 複製した光弾や火球で、無数の黒い羽根は 中空で爆散する……。
愚者のアルバチャスは、落ち着き払って 別の切り札を動作させた。
…………。
『 Device Error Factor !! Cross Function !! THE MOON !!
( デバイス エラー ファクター !! クロス・ファンクション !! ムーン !! ) 』
『 Barrage Armed !! Dual Function !! Wand Pentacle !!
( バラージ・アームド !! デュアル・ファンクション !! ワンド・ペンタクル !! ) 』
…………。
引き延ばされた時間軸で、B.A.Wandで 空中に飛び出す……。
青年は、弾丸のような速さで 黒翼の怪人に迫り……。跳び蹴りを叩き込んでは 地面へと 蹴り落とした……。
B.A.Wandのエネルギー放射の最後の残った分を使い、
自由落下速度を加速させる……。そして、黒翼の怪人にダメ押しの踵落としを見舞い……。
護符の恩恵と、DEF 月の恩恵が切れる直前……。
鈍器として B.A.Wandを降り抜いて、ドゥークラを吹き飛ばした。
黒翼の怪人は、少し離れた 位置の瓦礫に叩きつけられる。
DEF 月での活動時間が解除されて、青年の知覚が通常の時間軸に帰還する……。
…………。
恵花界は、自身に手の負えない 僅かな時間で 起きた変化に面を食らうが……。
だからこそ、ある事を決めて……。
それを言葉にすると、ホバー滑走で 撤退していった。
…………。
「 僕は、絶対に戻ってきます……。
だから、必ず 生きてください。
必ずですよ。有馬 五班長 !! 」
…………。
愚者のアルバチャスは、自身の顔を 黒翼の怪人に向けたまま……。
先程まで、一緒に戦っていた 人物に 硬く握った拳を向ける……。
青年なりの、了承や応答を表す意思表示だ。
…………。
黒翼の怪人は、この意味が わからないのか……。意に介していないのか……。
また、先程の愚者の青年の猛襲が効いていないのか……。先程と変わらない調子で話を継続させる。
…………。
「 久しいな……。愚者の戦士よ……。
確か以前……。似たような事があった……。
その時、我に敵意を向けたのは 戦馬車だったか……。
カシュマトアトルに 敗北する汝を 助ける為であった。
そう……。記憶している……。 」
「 そうかよ。
覚えててくれるなら 助かる。
調度 これから、似たような事したいと思ってたんだ……。
俺としては、借りは 返したいんでね。
真紅の戦士 カシュマトアトル……。
それに、ドゥークラ……。
邪魔をするなら……。
お前達にも 返してやるよ。……俺なりの 利息付きでな。 」
「 ほう……。
汝が我に 何を返してくれるというのだ ? 」
…………。
青年は……。
静かに……。最速での……。解決策に……。手を伸ばす……。
悠長な 戦いをしてられる余裕は 無い……。
…………。
『 Barrage Armed !! Function !! Pentacle !!
( バラージ・アームド !! ファンクション !! ペンタクル !! ) 』
「 何を返すか……。だと ?
……俺なりの 暴力さ。 」
『 Device Error Factor !! Cross Function !! THE MOON !!
( デバイス エラー ファクター !! クロス・ファンクション !! ムーン !! ) 』
『 Hover Chaser !! Function !!
( ホバー・チェイサー !! ファンクション!! ) 』
…………。
時間が引き延ばされていき……。
中空を舞う 黒い羽根すらも 一層に動きを緩慢にした。
………………。
…………。
……。
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